司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

債権者代位権に基づく「贈与税に係る更正の請求」は認められない

2019-03-19 19:43:31 | 税務関係
TabisLand
https://www.tabisland.ne.jp/news/tax/2019/0319.html

「請求人らには、請求人らに金銭債務を有する債務者を相手に詐害行為取消権に基づき債務者の父親が土地を債務者に贈与した契約の取消しと、価格賠償を求める訴えを提起したところ、裁判所が請求人らの訴えを全て認める旨の判決をし、確定したという事情があった」(上掲記事)

というわけで,

「債権者(審査請求人)らが債務者に有する金銭債権を保全するため原処分庁に対してその債務者が行った贈与税の申告について更正の請求をした・・・これに対して原処分庁が、更正の請求をすることができるのは納税申告書を提出した者に限られると判断、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしてきたため、債権者らが通知処分の全部取消しを求めて審査請求した」(上掲記事)

 しかし,「更正の請求を提出することができる者は、納税申告書を提出した者に限られ、第三者が債権者代位権又は取消権の行使として、更正の請求を提出することはできない」(後掲・平成30年6月22日裁決)として,本件審査請求は,棄却されている。

cf. 国税不服審判所「公表裁決事例集」平成30年6月22日裁決
http://www.kfs.go.jp/service/MP/01/0202060000.html#a111

 債権者代位権に関する珍しい事例である。
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吸収合併等の債権者保護手続における期間満了日と10連休

2019-03-19 18:08:18 | 会社法(改正商法等)
「国民の祝日」について
https://www8.cao.go.jp/chosei/shukujitsu/gaiyou.html

 今年のいわゆる10連休において,「休日」の根拠は,次のとおりである。

4月27日(土) ※行政機関の休日に関する法律第1条第1項第3号
4月28日(日) ※日曜日
4月29日(月) ※国民の祝日に関する法律第2条,第3条第1項
4月30日(火) ※国民の祝日に関する法律第3条第3項
5月 1日(水) ※天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律本則,附則第2条第1項
5月 2日(木) ※国民の祝日に関する法律第3条第3項
5月 3日(金) ※国民の祝日に関する法律第2条,第3条第1項
5月 4日(土) ※国民の祝日に関する法律第2条,第3条第1項
5月 5日(日) ※日曜日(国民の祝日に関する法律第2条,第3条第1項)
5月 6日(月) ※国民の祝日に関する法律第3条第2項


 というわけで,例えば,官報公告が平成31年3月27日(水)にされた場合,債権者保護手続の期間満了日は,同年4月27日(土)となり,同月28日(日)以降の適宜の日を効力発生日とすることができる。

 しかし,例えば,官報公告が平成31年3月28日(木)~同年4月5日(金)にされた場合,債権者保護手続の期間満了日は,同年5月7日(火)となり,同月8日(水)以降の日を効力発生日としなければならない。

cf. 平成30年2月15日付け「組織再編等の債権者保護手続において,1月2日又は3日には異議申述期間は満了しない?」

 というわけで,御注意を。
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「地方公共団体職員のための競争政策・独占禁止法ハンドブック」

2019-03-19 06:48:36 | いろいろ
「地方公共団体職員のための競争政策・独占禁止法ハンドブック」(案)に対する意見募集の結果及び成案の公表について by 公正取引委員会
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/mar/190318.html

「地域経済の活性化等を目的として地方公共団体が各種の施策・事業を実施する際には,当該施策・事業が,事業者の自由で自主的な判断による経済活動を妨げたり,事業者間の公正かつ自由な競争を阻害したりするおそれはないかなどという観点から検討することが有益である。
 また,既存の施策・事業が,その後の社会構造や経済情勢の変化により,事業者の自由で自主的な判断による経済活動を妨げたり,事業者間の公正かつ自由な競争を阻害したりするものとなっていないかなどについて,不断に見直しを行うことが望ましい。」

として,パブコメに付されていたものであるが,成案が公表されている。
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「破産者マップ」は,プライバシーの侵害か

2019-03-19 06:24:18 | いろいろ
破産者マップ
http://www.hasanmap.tokyo/
※ 現在は,閲覧不能。

「破産者マップ」は,グーグルマップ上に,赤いフラグを立て,そのフラグにポインターを合わせると,当該地を住所とする破産者に関する情報(氏名,住所,官報掲載日,裁判所及び事件番号等)を認識することができるようにしたものであった。

 公開されてすぐに気付いたのであるが,さすがに取り上げるのが憚られたところ,その後「とんでもない!」と大炎上となり,現在は閲覧不能状態となっている。

 なぜ,このようなものが作成されたのか,製作者の意図が不明である。単なる愉快犯?。上記のサイトでは,「警察から情報が得られれば,交通事故が起こりやすい地点のマップを作成したい」等のコメントが表されていたが。


 集団訴訟の動きもあるようだ。

cf. Jcastニュース
https://www.j-cast.com/2019/03/18352957.html?p=all

 いかに官報で公表されている情報(有料サービスを利用すれば,昭和22年5月3日以降の情報を閲覧することができる。)であるとはいえ,プライバシー権の侵害ではないのかが問題となっているわけである。


 関連する事例としては,

cf. 平成25年3月3日付け「登記情報の暴露はプライバシーの侵害」

 上記は,東京地裁平成25年2月27日判決である。

「人は,他人に知られたくない私的な事柄をみだりに開示されない法的利益をプライバシー権として有するから,一般人にいまだ知られておらず,私生活上の事実又は私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事実であって,一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合に,他者に開示されることを欲しないであろう事実を開示したときは,その事実を開示されない法的利益とこれを開示する理由とを比較衡量し,前者が後者に優越する場合にプライバシー権侵害として不法行為が成立するものと解される(最高裁平成6年2月8日第三小法廷判決・民集48巻2号149頁等参照)。」(前掲・東京地裁判決)


最高裁平成6年2月8日第3小法廷判決
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52442

【判示事項】
 ある者の前科等にかかわる事実が著作物で実名を使用して公表された場合における損害賠償請求の可否

【裁判要旨】
 ある者の前科等にかかわる事実が著作物で実名を使用して公表された場合に、その者のその後の生活状況、当該刑事事件それ自体の歴史的又は社会的な意義その者の事件における当事者としての重要性、その者の社会的活動及びその影響力について、その著作物の目的、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性を併せて判断し、右の前科等にかかわる事実を公表されない法的利益がこれを公表する理由に優越するときは、右の者は、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができる。

「前科等にかかわる事実については、これを公表されない利益が法的保護に値する場合があると同時に、その公表が許されるべき場合もあるのであって、ある者の前科等にかかわる事実を実名を使用して著作物で公表したことが不法行為を構成するか否かは、その者のその後の生活状況のみならず、事件それ自体の歴史的又は社会的な意義、その当事者の重要性、その者の社会的活動及びその影響力について、その著作物の目的、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性をも併せて判断すべきもので、その結果、前科等にかかわる事実を公表されない法的利益が優越するとされる場合には、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができるものといわなければならない。」

「以上を総合して考慮すれば、本件著作が刊行された当時、被上告人は、その前科にかかわる事実を公表されないことにつき法的保護に値する利益を有していたところ、本件著作において、上告人が被上告人の実名を使用して右の事実を公表したことを正当とするまでの理由はないといわなければならない。そして、上告人が本件著作で被上告人の実名を使用すれば、その前科にかかわる事実を公表する結果になることは必至であって、実名使用の是非を上告人が判断し得なかったものとは解されないから、上告人は、被上告人に対する不法行為責任を免れないものというべきである。」


 というわけで,本件「破産者マップ」の製作者の行為は,民事上,プライバシー権の侵害として不法行為責任を問われ得るであろう。
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デジタル手続法案

2019-03-19 05:43:50 | 会社法(改正商法等)
情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るための行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律等の一部を改正する法律案
https://www.cas.go.jp/jp/houan/198.html

 デジタル手続法案が国会に上程され,内閣官房HPで公表されている。

【理由】
 情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るため、情報通信技術を活用した行政の推進に関する基本原則及び行政手続等を情報通信技術を利用する方法により行うために必要となる事項等を定めるとともに、住民票及び戸籍の附票の記載等に係る本人確認情報の保存及び提供の範囲の拡大、電子証明書及び個人番号カードの利用者への国外転出者の追加、個人番号利用事務への罹災証明書の交付に関する事務等の追加等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


「住民票及び戸籍の附票の記載等に係る本人確認情報の保存」については,下記のとおりである。


第二 住民基本台帳法の一部改正
一 除票及び戸籍の附票の保存
 市町村長は、住民票若しくは戸籍の附票を消除したとき、又は住民票若しくは戸籍の附票を改製したときは、その消除した住民票若しくは戸籍の附票又は改製前の住民票若しくは戸籍の附票を保存するとともに、それらに記載されている事項の適切な管理のために必要な措置を講じなければならないものとすること。(第十五条の二、第二十一条及び第三十六条の二関係)

二 戸籍の附票の記載事項
 戸籍の附票の記載事項として、出生の年月日、男女の別及び住民票コードを追加するものとすること。

三~五 【略】
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最高裁の基本的な考え方,「親族らを後見人に選任することが望ましい」

2019-03-19 05:29:11 | 家事事件(成年後見等)
朝日新聞記事
https://digital.asahi.com/articles/ASM3L54SDM3LUCLV00X.html

「最高裁は基本的な考え方として、後見人にふさわしい親族など身近な支援者がいる場合は、本人の利益保護の観点から親族らを後見人に選任することが望ましいと提示。また、後見人の交代も、不祥事など極めて限定的な現状を改め、状況の変化に応じて柔軟に交代・追加選任を行うとする。昨年6月~今年1月、日本弁護士連合会や日本司法書士会連合会など専門職団体と議論を重ね、考えを共有したという。」(上掲記事)

 成年後見制度の利用促進の観点から,ということであるようだ。

 なお,平成30年度の概況は,下記で公表されているが,確かに,親族後見人の割合は,漸減傾向である。ただし,後見の手続は,身寄りのない一人暮らしの方について,とられることが多いことから,数字だけでは何ともであるが。

cf. 成年後見関係事件の概況
http://www.courts.go.jp/about/siryo/kouken/index.html

成年後見利用促進 ※H30.4.1より厚生労働省が担当
https://www.cao.go.jp/seinenkouken/

成年後見制度利用促進委員会 ※H30.4.1をもって廃止されました
https://www.cao.go.jp/seinenkouken/iinkai/index.html
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