「競争の作法 いかに働き、投資するか」
齋藤誠著 ちくま新書 740円+税
著者の齋藤さんは、一橋大学大学院教授。
同書では、経済学者という視点から、競争という事象についての分析を加えていきます。
特に面白かったのが、「たった一人の反乱」。
まず、隗より始めよということで、高齢の大学教員の処遇についてリアルな意見と行動を展開されます。
今、どこの企業でもアタマを抱えている改正高齢者雇用安定法の国立大学バージョン。
著者は、コストカット、中堅高齢研究者の生産性向上、若手研究者の生産性向上、新しい生き方、大学を課題解決のモデルに・・・という5つの視点から自説を展開されます。
そして3日間の朝食付きハンストの実行(笑)。
まさに、行動する経済学者・・・大きく賛同した次第です。
齋藤さんのような行動派、知行合一の経済学者が増えれば、ニッポン経済も変わるのになあと思った次第てです。
目次
1.豊かさと幸福の緩やかな関係 リーマンショック後に失われた豊かさとは
2.買いたたかれる日本、たたき売りする日本
3.豊かな生活を手にするための働き方 競争と真正面から向き合うために
4.豊かな生活を手にするための投資方法 持てる者の責任とは
同書が書かれたのが2010年。
その後、社会も変化・・・。
齋藤さんの展開される競争論もフィットしてきた感があります。
例えば、ソーシャル。
今、巷では、ソーシャルデザイン、プロボノ、ソーシャルビジネス、シェア・・・といった資本主義のもとでなかなか根付かなかった事象が具体化しています。
同書の中では、それらを具体的に基礎づける理論や説が多々登場しています。
例えば、次のような記述です。
「持つなら使え、使わないなら持つな」
「非効率な生産現場に塩漬けされた労働や資本を解き放ち、人々の豊かな生活に結びつく活動に充てていくことである。」
「経済状況と間合いをとる」
「勝っていても、ほどほどのところで身を引いて状況からするりと抜けだす。
負けたのなら、負けを認めない弱い自分に打ち克って、新しい生き方を見つけ、新たな挑戦に取り組むきっかけとしていく」
「ポストリッチネス、プリハピネスの時代(豊かさ以上、幸せ未満)」
「合理性を超えたところでの合意形成」
競争について再考するというより、社会について再考するには最適な書だと思います。
暑い夏の日、もう一度足元を見る良い機会になりました。