能率技師のメモ帳 経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

マネジメント理論、経営理論を世のため人のために役立てるために

エヴァンゲリオン化する社会 日本経済新聞出版社からエヴァ本が出ました エヴァが予言していた労働社会

2015年11月07日 | 本と雑誌

「新世紀エヴァンゲリオン」が、テレビ東京でオンエアされて20年。

20歳の誕生日、アニバーサリー。

このアニメは、いまだに若者、女子からオヤジまでの支持を得ています。

セブンイレブン、JR西日本、三井住友VISAカードからカゴメまでタイアップ・・・異色のアニメです。

エヴァンゲリオン化する社会

常見陽平著  日経プレミアシリーズ  850円+税

著者は、千葉商科大学の専任講師。

リクルート社、玩具メーカーなどを経て大学院に入学、現在の大学の国際教養学部の教員をされています。

41歳・・・ガンダム世代でしょうか。

同書の中でも、エヴァとの対比の中でガンダムの記述が出てきます。

この新書、「新世紀エヴァンゲリオン」と日本の労働社会、働き方を重ね合わせて書かれています。

ブラック企業、非正規雇用、女性活躍社会、グローバル人材・・・エヴァの登場人物である碇シンジ、綾波レイ、アスカ・ラングレー、葛城ミサト、赤木リツコなどに、現代日本の労働問題、課題がオーバーラップしているとします。

なかなか面白い切り口だと思います。

 

◆目次

第1章 「新世紀エヴァンゲリオン」とは何か

第2章 「逃げちゃ駄目だ」と「僕はここにいていいんだ」の論理

第3章 「私の代わりはいるもの」の論理 エヴァが描いた人材像

第4章 女性の活躍とエヴァ

第5章 「使徒」が襲ってくるかのような世界

同書の帯では、

「逃げちゃ駄目だ」で軋む職場

報われない仕事

正体不明の「敵」

エヴァが予言していた労働社会・・・

と、エヴァ的レイアウトで表示、目を引きます。

 

著者の「エヴァンゲリオン化」の定義は、次のようになります。

1 若者に極度の期待と負荷がかけられ、世界の責任をかけて個人で背負っているように感じさせる社会

2 人が目標達成のための駒のように扱われる社会

3 「使徒」のような得体の知れない恐怖が常に忍び寄ってくる不安定な社会

 

確かに、そんなような気もします。

が、エヴァは、単に、エンターテイメントであり、サブカルであり、クールジャパンの一つであり、時間消費、暇つぶしのための娯楽でしかないと読みながら考えていると、「あとがき」の中で著者はエピソードを記します。

著者が尊敬する日本アニメ界のレジェンドとの対談で言われたそうです。

「所詮、ポップカルチャーなんだ。クールジャパンだの、サブカルだの言うのはやめろ」

著者はショックを受けます。

また、「新世紀エヴァンゲリオン」の企画書の引用から、同アニメは単に「巨大ロボットアニメ」であり、ターゲットは「小学生、中学生を中心に家族一般」、そして、ねらいは「自分の意思で生きること(を伝える)」ことを紹介しています。

 

難解、心理学的、哲学的と言われた最終回も、実は、サブカル評論家の言うような、深い意味はない・・・ということになると思います。

ただ、時代のストリームの中で、アニメクリエイター、アニメ原作者は大きなインパクトを受けるわけで、役割、仕事、女性、国際化・・・など、織り込まれるメッセージは濃密に作品のコア、コンセプトになっていくようにも思います。

 

今回の一番の驚きは、「エヴァンゲリオン」というタイトルを持つ本が、日本経済新聞出版社の新書で出版されたということ。

そういえば、先月の日経ビジネスでは、ガンダムを日本のものつくりとシンクロさせる特集がありました。

本書といっしょに、日経ビジネスの特集を読まれると良いと思います。

エヴァ、ハタチの誕生日、おめでとう!


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マクドナルド失敗の本質 賞味期限切れのビジルスモデル マックに回復の兆候が見られません

2015年11月07日 | 本と雑誌

それではクイズです。

マクドナルドへの客足が遠のいています。業績も低落傾向です。

その原因は、次のうち、どれでしょうか?

 

1.マックのハンバーガーやポテトには、もう飽きたから。

2.食の安全や安心が、マックには期待できないから。

3.不採算店舗を大量に閉鎖し、近くにマックがなくなったから。

4.コンビニで事足りるので、マックまで行かなくなったから。

5.子連れ、家族連れで、食べる雰囲気がなくなったから。

6.スタバやタリーズの方が美味しいし、落ち着けるから。

 

チキン事件以来、お客さんがどんどん遠のいていったマック・・・。

かなり厳しい状況に追い込まれています。

 

クイズの問い・・・全部が正解のような気がします。

 

原田社長からカサノバ社長へのバトン・・・それでも復活に向けての兆しは見えません。

個人的には、マックのファサード・・・看板やガラススクリーンの汚れや老朽化が、ずっと気になっていました。

飲食店の基本の「キ」・・・クリンリネス(清潔・清掃)の不徹底・・・マック不振(不信)のシンボリックな事実です。

特に、ターミナル駅や繁華街にあるマックの看板やドアの清掃は行き届いていないように思います。

 

一世を風靡したマクドナルド・・・今、顧客離れと撤退戦が続いています。

マクドナルド失敗の本質 賞味期限切れのビジネスモデル

小川孔輔著  東洋経済新報社  1500円+税

 

著者は、法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科教授。

「失敗の本質」・・・一橋大学の野中先生や防衛大学校の教授陣が中心になってまとめた戦略論の名著のタイトルから、書名を引いてきています。

同書は、マクドナルド創業者藤田田さんと、中興の祖であり没落の引き金を引いた原田泳幸さんとの対比の中から始まります。

1971年に三越銀座店にマック1号店を出店・・・マックは、様々な試練を乗り越えながら、外食業界のトップ、優等生に上り詰めました。

「ユダヤの商法」というベストセラーを出した藤田さん・・・拝金主義者の烙印が押されていましたが、実は、温情主義的な人事労務制度を展開、社員、クルーから慕われていたといったエピソードも登場・・・ちょっとびっくりです。

 

◆目次

第1章 迷走するマクドナルド

第2章 マクドナルドはどう誕生し、世界最大の外食チェーンに成長したのか

第3章 マクドナルドのビジネスモデル

第4章 原田マクドナルドの経営改革

第5章 原田マクドナルドの戦略転換

第6章 悪夢の3年 客はどこへ消えたのか?

第7章 マクドナルドに未来はあるのか?

 

著者は、マクドナルドの凋落の原因について分析します。

賞味期限切れのビジネスモデルと喝破します。

さらに、

行き過ぎた米国の株主資本主義の定見のなさ

短期的に収益をあげようとしたマネジメントの失策

が原因だとします。


具体的には、

1 価格の引き上げによる「値ごろ感」の喪失

2 他の大手飲食チェーンに対する「競争上の劣位」

3 コンビニエンスストアの脅威

が、マックが地に落ちた主因であるとします。


まさに、そのとおりだと思います。

特に、コンビニの隆盛・・・もう飽和状態と言われながらも、現在もまだまだコンビニエンスストアは増殖中・・・日本全国で5万店舗に及ぶ勢いです。

マックの出したプレミアムコーヒーも一時期、人気を博しましたが、今では、セブンカフェの方が、気軽に飲めて、美味しいですよね。

 

マクドナルドには、もう飽きた・・・というのが本当のところだとは思うのですが、日本の直面する課題である少子高齢化も大きな原因であると思っています。

マックでは、なかなかおじいちゃんやおばあちゃんを見かけることはないですよね。

そう、年配の方にとって、マックは居場所を提供していないのです。

70歳や80歳になっても、食べたいハンバーガー、その周辺の食べ物、そして彼彼女の居場所を提供できなければ、マックの未来は一層暗いものになると考えています。

カサノバ社長が、この状態から、いかにしてV字回復を目指すのか・・・しっかり見届けたいと思います。


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