ポイント
・インターネットによる自殺方法の閲覧やメンタルヘルス相談等が、若年・中年層のネット利用者の自殺念慮に対して与える影響について検討しました。
・死にたい気持ちを匿名の他者に対して打ち明けることや自殺方法を閲覧することは自殺念慮の悪化につながっていました。
・匿名の他者にメンタルヘルスの相談をすることは、自殺念慮を悪化させはしませんでしたが、抑うつ・不安感の悪化につながっていました。
・この知見は、今後、インターネットを活用した自殺対策の立案に役立つものと期待されます。
岡山大学病院精神科神経科の稲垣正俊講師を中心とする、和光大学の末木新、国立精神・神経医療研究センターの竹島正、米本直裕らの研究グループは、自殺に関するインターネットの利用が自殺念慮に影響するか否かについて研究を行いました。
本研究では、インターネット利用者に対する大規模な追跡調査を実施し、自殺に関するインターネット利用を経験した者とそうではない者とを比較して、自殺念慮や抑うつ・不安感の変化に違いが見られるかどうかを検討しました。
約6週間の追跡調査で得られたデータを分析した結果、死にたい気持ちを匿名の他者に対して打ち明けることと自殺方法を閲覧することは、自殺念慮の悪化につながっていました。
また、匿名の他者にメンタルヘルスの相談をすることは、自殺念慮を悪化させていませんでしたが、抑うつ・不安感の悪化につながっていました。
本研究により、自殺に関するインターネットの利用が、自殺の危険性を高めることが示されました。
これらの結果は、今後のインターネットを活用した自殺対策の立案に役立つものと期待されます。
【研究の背景】
日本の自殺死亡者数は、1998年の急増以降、高い水準で推移をしています。自殺は、社会全体で取り組むべき重要な問題として、2006年に自殺対策基本が制定され、2007年には自殺総合対策大綱が閣議決定され、その後の2012年に改定されています。
インターネットの活用は、自殺予防対策を考える上で、重要な事項となっています。
自殺総合対策大綱には、自殺を予防するための当面の重点施策の一つとして、インターネットを積極的に活用して正しい知識の普及を推進することや、インターネット上の自殺関連情報対策の推進の必要性が取り上げられました。
しかし、自殺に関するインターネット利用が自殺の危険性の増加または減少に影響するか、また、どのようなインターネット利用が影響するのかという点については、これまでの研究で十分には明らかにされていませんでした。
硫化水素自殺や練炭自殺に代表されるようにインターネットが自殺を促進するという指摘がある一方で、ネット利用者間の相談活動が自殺を抑止するという指摘も見られました。
そこで、本研究では、自殺に関するインターネット利用の影響を明らかとすることを目的とした調査を実施しました。
【研究の方法と結果】
20・30・40代の各世代に対してオンラインでの質問紙調査を実施しました。各世代内での性別・居住地域の構成割合は2005年度の国勢調査に準じています。配信数744,806名に対し108,206名の回答が得られました。
その中から、自殺に関するインターネット利用の経験者約4000人と、比較対照群4000人の方に協力をいただき、その後6週間の自殺念慮や抑うつ・不安感の変化を追跡調査しました。
その結果、死にたい気持ちを匿名の他者に対して打ち明けることと自殺方法を閲覧することは自殺念慮の悪化につながっていました。また、匿名の他者にメンタルヘルスの相談をすることは、自殺念慮は悪化させていませんでしたが、抑うつ・不安感の悪化につながっていました。
【今後の期待】
今回、自殺に関するインターネット利用が自殺の危険性に対して与える影響が明らかになりました。
現在、日本では若年世代に対する自殺予防対策が求められていますが、その際にインターネットの活用は重要な視点となります。
インターネットをどのように活用するのか(あるいは、どのような利用を制限/低減させていくべきか)という視点から具体的な対策を考える際に、資料として活用されることが期待されます。
【 原論文情報 】
本研究の成果は、米国東部標準時間2014 年4 月16 日、水曜日、午後 5 時(日本時間4月17日、木曜日、午前7時)発行の国際的オンライン科学誌「PLOS ONE」に、下記のタイトルにて掲載されました。
研究論文名:
The impact of suicidality-related internet use: a prospective large cohort study with young and middle-aged internet users(自殺関連のインターネット利用の影響―若年・中年層インターネット利用者に対する大規模前向きコホート研究)
著者:末木新, 米本直裕, 竹島正, 稲垣正俊
(所属:順に、和光大学、国立精神・神経医療研究センター、国立精神・神経医療研究センター、岡山大学病院)
http://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0094841
本研究は、安心ネットづくり促進協議会のインターネット使用が青少年に及ぼす悪影響に関する実証調査で行われました。
・インターネットによる自殺方法の閲覧やメンタルヘルス相談等が、若年・中年層のネット利用者の自殺念慮に対して与える影響について検討しました。
・死にたい気持ちを匿名の他者に対して打ち明けることや自殺方法を閲覧することは自殺念慮の悪化につながっていました。
・匿名の他者にメンタルヘルスの相談をすることは、自殺念慮を悪化させはしませんでしたが、抑うつ・不安感の悪化につながっていました。
・この知見は、今後、インターネットを活用した自殺対策の立案に役立つものと期待されます。
岡山大学病院精神科神経科の稲垣正俊講師を中心とする、和光大学の末木新、国立精神・神経医療研究センターの竹島正、米本直裕らの研究グループは、自殺に関するインターネットの利用が自殺念慮に影響するか否かについて研究を行いました。
本研究では、インターネット利用者に対する大規模な追跡調査を実施し、自殺に関するインターネット利用を経験した者とそうではない者とを比較して、自殺念慮や抑うつ・不安感の変化に違いが見られるかどうかを検討しました。
約6週間の追跡調査で得られたデータを分析した結果、死にたい気持ちを匿名の他者に対して打ち明けることと自殺方法を閲覧することは、自殺念慮の悪化につながっていました。
また、匿名の他者にメンタルヘルスの相談をすることは、自殺念慮を悪化させていませんでしたが、抑うつ・不安感の悪化につながっていました。
本研究により、自殺に関するインターネットの利用が、自殺の危険性を高めることが示されました。
これらの結果は、今後のインターネットを活用した自殺対策の立案に役立つものと期待されます。
【研究の背景】
日本の自殺死亡者数は、1998年の急増以降、高い水準で推移をしています。自殺は、社会全体で取り組むべき重要な問題として、2006年に自殺対策基本が制定され、2007年には自殺総合対策大綱が閣議決定され、その後の2012年に改定されています。
インターネットの活用は、自殺予防対策を考える上で、重要な事項となっています。
自殺総合対策大綱には、自殺を予防するための当面の重点施策の一つとして、インターネットを積極的に活用して正しい知識の普及を推進することや、インターネット上の自殺関連情報対策の推進の必要性が取り上げられました。
しかし、自殺に関するインターネット利用が自殺の危険性の増加または減少に影響するか、また、どのようなインターネット利用が影響するのかという点については、これまでの研究で十分には明らかにされていませんでした。
硫化水素自殺や練炭自殺に代表されるようにインターネットが自殺を促進するという指摘がある一方で、ネット利用者間の相談活動が自殺を抑止するという指摘も見られました。
そこで、本研究では、自殺に関するインターネット利用の影響を明らかとすることを目的とした調査を実施しました。
【研究の方法と結果】
20・30・40代の各世代に対してオンラインでの質問紙調査を実施しました。各世代内での性別・居住地域の構成割合は2005年度の国勢調査に準じています。配信数744,806名に対し108,206名の回答が得られました。
その中から、自殺に関するインターネット利用の経験者約4000人と、比較対照群4000人の方に協力をいただき、その後6週間の自殺念慮や抑うつ・不安感の変化を追跡調査しました。
その結果、死にたい気持ちを匿名の他者に対して打ち明けることと自殺方法を閲覧することは自殺念慮の悪化につながっていました。また、匿名の他者にメンタルヘルスの相談をすることは、自殺念慮は悪化させていませんでしたが、抑うつ・不安感の悪化につながっていました。
【今後の期待】
今回、自殺に関するインターネット利用が自殺の危険性に対して与える影響が明らかになりました。
現在、日本では若年世代に対する自殺予防対策が求められていますが、その際にインターネットの活用は重要な視点となります。
インターネットをどのように活用するのか(あるいは、どのような利用を制限/低減させていくべきか)という視点から具体的な対策を考える際に、資料として活用されることが期待されます。
【 原論文情報 】
本研究の成果は、米国東部標準時間2014 年4 月16 日、水曜日、午後 5 時(日本時間4月17日、木曜日、午前7時)発行の国際的オンライン科学誌「PLOS ONE」に、下記のタイトルにて掲載されました。
研究論文名:
The impact of suicidality-related internet use: a prospective large cohort study with young and middle-aged internet users(自殺関連のインターネット利用の影響―若年・中年層インターネット利用者に対する大規模前向きコホート研究)
著者:末木新, 米本直裕, 竹島正, 稲垣正俊
(所属:順に、和光大学、国立精神・神経医療研究センター、国立精神・神経医療研究センター、岡山大学病院)
http://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0094841
本研究は、安心ネットづくり促進協議会のインターネット使用が青少年に及ぼす悪影響に関する実証調査で行われました。