2012年1 月22日 (日曜日)
我々は、知っていることより、知らないことの方が多い。
緘黙症(かんもくしょう)については、作家の一色真理(まこと)さんが記していたので知った。
思えば、彼女は「話さない」のではなく、何らかの心理的理由から「話せない」病気の緘黙症であったのかもしれない。
美登里さんは、話せなくとも字が書けたので成績は優秀であった。
だが、ある時突然、しゃべったので、みんなが唖然とした。
「トルストイは、大衆、大衆と繰り返し記しているけど、自分も大衆でしょ」
「美登里さんが、口を開いた」と敏子さんが目を見開いたが、徹は美登里さんがトルストイを批判したことにむしろ驚いた。
徹は、「この人は思い描いていた人ではないのでは?」と美登里さんの伏し目がちの横顔を注視した。
心優しく、何時も静かに微笑んでいる美登里さんの別の面を知らされた思いがした。
彼女は周囲への違和感から、自ら言葉を発することを止めていたのかもしれない。
彼女は母親を小学生6年生の時に亡くしていた。
そして、中学2年生の時には父親を亡くしていた。
徹は高校の入学式の日、ひときわ目立つ美顔の美登里さんに心惹かれた。
「世の中には、こんなに綺麗な人がいるのか!」
美登里さんの祖父は画家で、祖母はフランス人であった。
美登里さんは美しい祖母似であったのだろう。
昭和30年代、まだ珍しかったバトンガールの先頭に立って銀座を行進する美登里さんは、天使の化身のようにも映じた。
ルノアールの「カーンダンベルス嬢の肖像」を見ると徹は、フランスに行ってしまった美登里さんはのことを想った。
翌年、東京オリンピックが開かれ、東京・代々木の体操競技の会場で美登里さんを見かけたと友達が言っていたが、その日徹は風邪で寝込んでいた。
我々は、知っていることより、知らないことの方が多い。
緘黙症(かんもくしょう)については、作家の一色真理(まこと)さんが記していたので知った。
思えば、彼女は「話さない」のではなく、何らかの心理的理由から「話せない」病気の緘黙症であったのかもしれない。
美登里さんは、話せなくとも字が書けたので成績は優秀であった。
だが、ある時突然、しゃべったので、みんなが唖然とした。
「トルストイは、大衆、大衆と繰り返し記しているけど、自分も大衆でしょ」
「美登里さんが、口を開いた」と敏子さんが目を見開いたが、徹は美登里さんがトルストイを批判したことにむしろ驚いた。
徹は、「この人は思い描いていた人ではないのでは?」と美登里さんの伏し目がちの横顔を注視した。
心優しく、何時も静かに微笑んでいる美登里さんの別の面を知らされた思いがした。
彼女は周囲への違和感から、自ら言葉を発することを止めていたのかもしれない。
彼女は母親を小学生6年生の時に亡くしていた。
そして、中学2年生の時には父親を亡くしていた。
徹は高校の入学式の日、ひときわ目立つ美顔の美登里さんに心惹かれた。
「世の中には、こんなに綺麗な人がいるのか!」
美登里さんの祖父は画家で、祖母はフランス人であった。
美登里さんは美しい祖母似であったのだろう。
昭和30年代、まだ珍しかったバトンガールの先頭に立って銀座を行進する美登里さんは、天使の化身のようにも映じた。
ルノアールの「カーンダンベルス嬢の肖像」を見ると徹は、フランスに行ってしまった美登里さんはのことを想った。
翌年、東京オリンピックが開かれ、東京・代々木の体操競技の会場で美登里さんを見かけたと友達が言っていたが、その日徹は風邪で寝込んでいた。