少年法の対象年齢引き下げについて、私の意見を述べさせて頂きたいと思います。
まず、少年事件被害者遺族の立場としてお話させて頂きます。
皆さんも良くご理解されていることだと思いますが、少年法には、少年法が抱えている 非常に大きな問題があります。
それは、少年法は、加害少年の保護、更生のみを考え た法律であるということです。
確かに、少年法は 2000 年の改正以来、何度か改正され ており、例えば被害者、遺族が、判事の許可があれば審判の傍聴が可能になったりし てはいますが、本質的には、加害少年の保護、更生のみを考えた法律であるということ には、大きな変化はありません。
少年法においては、被害者、被害者遺族には、権利 といえるほどのものはないのは以前と同様です。
犯罪被害者、遺族にとって、最愛の家族が、何歳の人間に命を奪われたか、重大な障 害を与えられたかということは、本来は関係ないことのはずです。
30 歳の人間から被害 を受けても、また 18 歳の人間から被害を受けても、14 歳の人間から被害を受けても被 害者、遺族にとっては何の関係もありません。
30 歳であろうが、18 歳であろうが、14 歳 であろうが、何歳の人間に被害を受けたからといって、実際に受けた被害については 全く同等であって、被害そのものについては、何ら差がないからです。
しかしながら、現実の世界では、何歳の人間から被害を受けたかで、その後の経過は 大きく異なってきます。
現行法では、20 歳以上では、通常の成人における裁判が行われます。
しかし 20 歳未 満では少年法の範疇に入ってしまいます。 勿論のことですが、少年法の基本的な精神には私も賛同しており、異を唱えるつもりは ありません。
犯罪を犯した少年の保護、更生を考えることは重要なことだと思います。
しかしながら、傷害、強姦、傷害致死や殺人などの重大な犯罪と、他の軽微なものとを 同列に扱うことは許されることではないと思います。
多くの軽微な少年犯罪については、 少年の保護、更生を第一に考えることは、非常に大事なことだと思います。
しかし、少 年が犯した犯罪が、重大な後遺症を残すような被害者や、遺族というような形の深刻な 被害者を生み出す場合は、考える次元が大きく変わってくると思います。
重大な犯罪においては、少年法の範疇に入るか入らないかの違いは、加害者におい ても大きなものであると同時に、被害者、被害者遺族にとっては、加害者にとっての違 いよりも大きなものでるというように、私自身は思っています。
重大な犯罪を犯した加害少年にとっては、罪に応じた罰が与えられるわけではなく、 成人より軽い罰になりますし、そもそも少年院送致は罰とは言えません。
被害者、被害者遺族にとって、この違いはどのように影響するでしょうか。
被害者、被 害者遺族にとっては、加害者が本来受けるべき罰を受けないことで、非常に悔しく、惨 めな思いにさせられます。さらにその上に、少年審判は通常の成人の裁判とは異なり、 被害者参加制度もありませんし、十分な情報を得ることも出来ません。
犯罪被害者、被害者遺族の思いとしては、罪に応じた罰を受けて欲しいと思っていま すし、事件の情報を十分に知りたいと思っています。
当然、そのような思いを虚しくさせ るような少年法の適応年齢は、引き下げて欲しいと願っています。
犯罪被害者等基本計画には、刑事司法は、社会の秩序を図るという側面とともに、犯 罪被害者のためにもあると定め、このことは少年事件であっても何ら変わりがないと定 めています。
少年犯罪事件被害者遺族としては、少年法の適用年齢を考えるにあたっては、事件 の最大の当事者である被害者の意向にも十分、配慮して欲しいと思います。
次に一国民としての意見を述べさせて頂きたいと思います。
私は、少年犯罪被害者としての立場では無く、一国民として言いたい最も重要なこと は、「権利には責任が伴う」ということです。
「権利と責任」は表裏一体のものであると考 えています。権利は欲しいが、責任はとりたくない、というようなことは許されることでは ないと思います。
選挙権を 18 歳に引き下げるということは、国は、18 歳になれば十分に責任ある行動を とることができると認定したことになります。 選挙権というものは、国・地方含めた政治に参加するという非常に重要な権利です。
日本という国の現在や将来を考えて、その貴重な 1 票を投票するわけです。そして自 分たちが暮らす地域の暮らしと今後を見据えて、その貴重な 1 票を投票するわけで す。
この投票された結果により、日本という国や、そして地方の将来がかわってきます。
言う なれば、投票する人たちの考えが、良くも悪くも将来を決めてしまうわけです。
それほど重要な権利を付与される限り、当然応分の責任は負う義務が生じるものと考 えるのが当然だと思います。 当然、少年法の対象年齢についても然りだと考えます。
選挙権を 18 歳以上に引き下げると言うことは、18 歳、19 歳の人間は、それまでの生育 過程において十分な教育を受けており、選挙権行使するに当たって必要な判断能力 を養成しており、十分に責任ある行動ができると、国として認定したことになります。
権利と責任は表裏一体の関係にあります。
責任ある行動ができると、国によって認定されている 18 歳、19 歳の人間が、少年法と いう堅牢な傘に守られて、自らが犯した犯罪の責任をとらないということは、許されるこ とではありません。
「権利には責任が伴う」ということから考えても、選挙権が 18 歳以上に引き下げられた わけですから、必然的に、少年法の対象年齢も18歳未満に引き下げられるべきである と、私は一国民として考えます。