映画「ちいさな独裁者」

2019年02月04日 15時41分58秒 | 社会・文化・政治・経済

1945年4月。兵士の軍規違反が頻発するドイツで、部隊から逃げてきたヘロルト(マックス・フーバッヒャー)は、廃棄された車両の中で将校の軍服を見つける。それを身に着け大尉に成り済ました…

権力とは何か。
人は何をもって、他の人に対して力を振るうのか。
この映画は恐ろしいほど単純な答えを与えています。
それは、権力とは制服だ、というもの。
権力が絶対的であればあるほど、制服を身につけたら何だってやりほうだい。
生き延びるために食べ物を手に入れることばかり考えていたような年端もいかない少年が、制服を身につけるとどんな暴力でも平然と指示することのできる将校に変わってゆくんです。
ここでは、制服が権力の象徴として登場しています。
東京大学教授 藤原帰一さん

ちいさな独裁者
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ちいさな独裁者
Der Hauptmann
監督 ロベルト・シュヴェンケ
脚本 ロベルト・シュヴェンケ
製作総指揮 フィリップ・リー
マーカス・バーメットラー
出演者 マックス・フーバッヒャー
音楽 マルティン・トートシャロウ
撮影 フロリアン・バルハウス

上映時間 119分
製作国 ドイツの旗 ドイツ

『ちいさな独裁者』(ちいさなどくさいしゃ、原題:Der Hauptmann)は、2017年制作のドイツ映画。
原題の"Hauptmann"とはドイツ語で「大尉」の意。
第二次世界大戦末期、偶然の成り行きと言葉巧みなウソによって将校の威光を手に入れた脱走兵の若者が怪物的な独裁者に変貌していく様を描く。
1945年にヴィリー・ヘロルトが引き起こした実際の事件をベースにしている。ロベルト・シュヴェンケ監督。
ナチス・ドイツの敗色が濃厚となっていた第二次世界大戦末期の1945年4月、部隊を脱走した青年兵ヘロルトは、打ち捨てられた車両の中で空軍大尉の軍服を発見したことから、それを身にまとって将校になりすますことを思いつく。
ヘロルトは道中出会った兵士たちを将校の軍服の威光と言葉巧みなウソによって服従させることに成功、"親衛隊"のリーダーとなる。
ヘロルトは次第に傲慢な振る舞いをエスカレートさせ、大量殺戮へと暴走を始める。

丈の長い軍服、借り物の権力。
ドイツ敗戦まで1か月。偶然に軍服を拾った若き脱走兵は、ナチス将校の威光をも手に入れた。

ハリウッド映画『RED/レッド』などのヒット作で知られるロベルト・シュヴェンケ監督が母国ドイツで撮り上げた本作は、ドイツ敗戦直前の混乱期に起こった信じがたい実話の映画化。偶然にもナチス将校の軍服を手に入れた名もなき一兵卒が、瞬く間にヒトラーをも想起させる怪物的な"独裁者"に変貌を遂げていく姿を描き出す。
軍服が象徴する権力の魔力に魅了される者、そのパワーに盲従する者、ただ傍観する者。そんな人間の醜さ、愚かさ、弱さを容赦なくえぐり出す映像世界に息をのまずにいられない。しかもこの映画は、日本からはるか遠いヨーロッパの悪夢のような史実を今に伝えるにとどまらない。
今日においても似たような歪んだ権力構造の闇はあちこちに渦巻いている。
ひょっとすると"ちいさな独裁者"は、私たちの社会の身近なところに存在しているのかもしれない。緊迫感みなぎるサスペンスと衝撃に打ちのめされた観客は、その生々しい現代への警鐘にも戦慄を覚えることになるだろう。


 小説 『雪国』

2019年02月04日 14時31分53秒 | 社会・文化・政治・経済

『雪国』は、川端康成の長編小説で、名作として国内外で名高い。
雪国を訪れた男が、温泉町でひたむきに生きる女たちの諸相、ゆらめき、定めない命の各瞬間の純粋を見つめる物語。
愛し生きる女の情熱の美しく哀しい徒労が、男の虚無に研ぎ澄まされた鏡のような心理の抒情に映されながら、美的に抽出されて描かれている。
1935年(昭和10年)から各雑誌に断続的に断章が書きつがれ、初版単行本刊行時の1937年(昭和12年)7月に文芸懇話会賞を受賞した。
その後も約13年の歳月が傾けられて最終的な完成に至った。
作品背景・モデル

松栄。駒子のモデルとなった女性
『雪国』の主な舞台は、上越国境の清水トンネルを抜けた湯沢温泉であるが、この作品も『伊豆の踊子』同様に、川端の旅の出会いから生まれたもので、雪中の火事も実際に起ったことだと川端は語っている。

川端は作品内で故意に地名を隠しているが、1934年(昭和9年)6月13日より1937年(昭和12年)まで新潟県湯沢町の高半旅館(現:雪国の宿 高半)に逗留していたことを随筆『「雪国」の旅』で述べている[9]。
その時出会ったのが駒子のモデルとなる芸者・松栄(本名は丸山キクで、のちに小高キク)である。

小高キクは、1916年(大正5年)に新潟県三条市の貧しい農家の7人姉弟の長女として生まれ、1926年(大正15年)、数え年11歳で三条を離れて、長岡の芸者置屋に奉公に出された女性である。

なお川端は、主人公の島村については、〈島村は私ではありません。

男としての存在ですらないやうで、ただ駒子をうつす鏡のやうなもの、でせうか〉と述べている。
1934年(昭和9年)の晩秋の頃、高半旅館に宿泊していた川端を見かけた宿の次男・高橋有恒(当時17歳)によると、川端はよく帳場の囲炉裏端に座り、父(宿の主人)・高橋半左衛門や母・ヨキと話しこみ、芸者たちのことや、その制度、温泉、豪雪、風物、習慣、植物などのことを訊ねていたという。
有恒の兄・正夫は、後に旅館を継いで高橋半左衛門を襲名するが、正夫は当時、京都帝国大学から転学し東京帝国大学文学部の学生であったため、川端と親しんでいたという。
川端が滞在した高半旅館は建替えられているが、雪国を執筆したという「かすみの間」は保存されている。
また、湯沢町歴史民俗資料館にモデルの芸者が住んでいた部屋を再現した「駒子の部屋」があり、湯沢温泉には、小説の冒頭文が刻まれた文学碑が建てられている。
なお、村松友視の『「雪国」あそび』には、モデルの松栄について言及されている。
『雪国』というタイトルが決定したのは、最初の単行本刊行時で、有名な冒頭文の書き出しに「雪国」という言葉が表われるのもこの時点である。
初出誌版の「夕景色の鏡」での冒頭文は当初、〈国境のトンネルを抜けると、窓の外の夜の底が白くなつた〉となっており、その前段にも文章があったが単行本刊行時に削除改稿された。
また、続編の「雪中火事」には、鈴木牧之著『北越雪譜』からの引用や参考にした文章もある。
また、作中の時系列(3度目に島村が温泉町を訪れた年)が、作者の錯誤により統一されていない部分があることが、何人かの研究者に指摘されているが、その不統一も追憶の順不同の手法によって、多くのあいまいさが許されているしくみになっているという見方と、あえて川端が実際の期間(約1年間)よりも、長い年月が経ったように作品世界を提示しているという見方もある。

あらすじ
12月初め、島村は雪国に向かう汽車の中で、病人の男に付き添う恋人らしき若い娘(葉子)に興味を惹かれる。

島村が降りた駅で、その2人も降りた。

旅館に着いた島村は、芸者の駒子を呼んでもらい、朝まで過ごす。
島村が駒子に出会ったのは去年の新緑の5月、山歩きをした後、初めての温泉場を訪れた時のことであった。

芸者の手が足りないため、島村の部屋にお酌に来たのが、三味線と踊り見習いの19歳の駒子であった。

次の日、島村が女を世話するよう頼むと駒子は断ったが、夜になると酔った駒子が部屋にやってきて、2人は一夜を共にしたのだった(以上、回想)。

駒子はその後まもなく芸者になっていた。
昼、冬の温泉町を散歩中、島村は駒子に誘われ、彼女の住んでいる踊の師匠の家の屋根裏部屋に行った。

昨晩車内で見かけた病人は、師匠の息子・行男で、付添っていた葉子は駒子と知り合いらしかった。

行男は腸結核で長くない命のため帰郷したという。

島村は按摩から、駒子は行男の許婚で、治療費のため芸者に出たのだと、聞かされるが、駒子は否定した。
島村は温泉宿に滞在中、毎晩駒子と過ごし、独習したという三味線の音に感動を覚えた。

島村が帰る日、行男が危篤だと葉子が報せに来るが、駒子は死ぬところを見たくないと言い、そのまま島村を駅まで見送った。
翌々年の秋、島村は再び温泉宿を訪れた。
去年の2月に来る約束を破ったと駒子は島村をなじる。

あの後、行男は亡くなり、師匠も亡くなったと聞き、島村は嫌がる駒子と墓参りに行った。墓地には葉子がいた。
駒子はお座敷の合い間、毎日島村の部屋に通ってきた。
忙しいある晩、駒子は葉子に伝言を持って来させた。

島村は葉子と言葉を交わし、魅力を覚えた。

東京に行くつもりの葉子は、島村が帰るときに連れて行ってくれと頼み、「駒ちゃんをよくしてあげて下さい」と言った。

葉子は死んだ行男をまだ愛しているようだった。
「駒ちゃんは私が気ちがいになると言うんです」と葉子は泣きながら言った。
葉子が帰った後、島村はお座敷の終った駒子を置屋(駄菓子屋の2階に間借り)まで送ったが、駒子は再び島村と旅館に戻り、酒を飲む。
島村が「いい女だ」と言うと、その言葉を誤解し怒った駒子は、激しく泣いた。
島村は東京の妻子を忘れたように、その冬も温泉場に逗留を続けた。
天の河のよく見える夜、映画の上映会場になっていた繭倉(兼芝居小屋)が火事になり、島村と駒子は駆けつけた。
人垣が見守る中、一人の女が繭倉の2階から落ちた。

・・・葉子を落した二階桟敷から骨組の木が二三本傾いて来て、葉子の顔の上で燃え出した。

葉子はあの刺すように美しい目をつぶつてゐた。

あごを突き出して、首の線が伸びてゐた。

火明りが青白い顔の上を揺れ通つた。


 幾年か前、島村がこの温泉場へ駒子に会ひに来る汽車のなかで、葉子の顔のただなかに野山のともし火がともつた時のさまをはつと思ひ出して、島村はまた胸が顫へた。・・・
落ちた女が葉子だと判った瞬間にはもう、地上でかすかに痙攣し動かなくなった。
駒子は駆け寄り葉子を抱きしめた。
駒子は自分の犠牲か刑罰かを抱いているように、島村には見えた。
駒子は「この子、気がちがうわ。気がちがうわ」と叫んだ。


登場人物
島村
東京の下町出身。親の遺産で無為徒食の生活を送り、フランス文学(ヴァレリイやアラン)や舞踊論の翻訳などをしている「文筆家の端くれ」。子供の頃から歌舞伎になじみ、以前は日本舞踊研究に携わっていたが、ふいに西洋舞踊研究に鞍替えした。旅・登山が趣味。東京に妻子あり。小肥りで色白。
駒子
19 - 21歳。蛭の輪のようになめらかに伸び縮みする美しい唇。
清潔な印象の女。東京に売られ、お酌をしていて旦那に落籍されたが、まもなく旦那が亡くなり、17歳で故郷の港町に戻った。
島村と初めて会った直後の19歳の6月に芸者に出た。
病気の許婚のために芸者になったらしい。
17歳から続いている旦那が港町にいるが別れたいと思っている。
葉子
哀しいほど美しい声の娘。
駒子の住む温泉町出身の娘で、駒子の許婚という噂の行男を帰郷の列車で甲斐甲斐しく看病する。行男と恋人同士らしい。
東京で看護婦を目指していたことがある。
肉親は、国鉄に勤めはじめた弟が一人。地元に伝わる手鞠歌などを美しい声で歌う。
行男
26歳。病人。駒子が習っている踊の師匠の息子。
駒子と幼馴染。港町で生まれ、東京の夜学に通っていたが、腸結核を患い帰郷する。
駒子の許婚という噂だが、駒子は否定。
親の師匠は50歳前に中風になり、港町から故郷の温泉町へ戻った。
佐一郎
葉子の弟。鉄道信号所で働いている少年。
貨物列車から姉を見つけて、帽子を振って呼ぶ。
温泉町の人々、他
宿屋の番頭、主人、おかみ、女中。芸者たち。宿の幼女。按摩の女。鉄道信号所の駅長。列車の乗客。ロシア女の物売り。置屋の駄菓子屋の家族。運転手。「縮の産地」の町のうどん屋の女。

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本作の冒頭文、〈国境の長いトンネルを抜けると雪国であつた〉という文の中の、この「国境」の読み方には、「くにざかい」か「こっきょう」か、という議論があるが、長谷川泉は、「くにざかい」が正しいとし、「このことでは、川端康成とも話をしたことがあった」と述べている(川端の発言は不明)。

 

「国境」を「くにざかい」と読むことを主張する人々は、この「国境」とは、かつての令制国である上野国群馬県)と越後国新潟県)の境という意味であり、日本国内における旧令制国の境界の読み方は一般に「くにざかい」である、と主張する。

 

一方、「こっきょう」と読むことを主張する人々は、上越国境は「じょうえつこっきょう」と読むことが一般的であるとし、川端自身も、「こっきょう」と読むことを認める発言をしていたと主張する。

川端と武田勝彦との対談では、川端が「上越国境とか信越国境とかいいますけどね。国境(こっきょう)と読んでいるでしょうね、みんな」と発言、武田が「いや、でもあれは国境(くにざかい)のほうが……読む方も多いと思います」と応じ、川端は「そうですかしら」とのみ返している。



雪国』のあらすじ

2019年02月04日 14時15分24秒 | 社会・文化・政治・経済

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12月の初め。
親の遺産で自由気ままに暮らしている文筆家の主人公 島村は、汽車で雪国へと向かっていた。

汽車の中で、病人の男を見かけ、彼に付き添う恋人のような若い娘に心を惹かれる。ふたりは、島村と同じ駅で降りていく。

島村は妻子持ちでありながら、一年前に初めてこの温泉町に訪れたとき、芸者の駒子と出会い、親密な関係になる。

島村は、駒子が芸者になったのは、駒子の踊りの師匠の息子であり許嫁の「行男」の治療費を稼ぐためだと聞いたが、駒子はそれを否定していた。

 

湯沢町の歴史民俗資料館「雪国館」では『雪国』の解説の展示や『雪国』をテーマにした日本画、ヒロイン駒子の部屋を再現したスペースなど『雪国』に関する様々なものが展示されているそうです。

 

また、川端康成の着用していた着物や、使っていた文房具などが展示されているんだそうですよ。

 

小説を読んで、舞台となった場所に行ってみる、というのも楽しみ方のひとつですよね!

 

それでは、川端康成はどうして湯沢温泉をモデルに『雪国』を執筆したのでしょうか?

 

 

 

『雪国』はどうやって書かれたのか?

 

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川端康成は、実際に湯沢町の旅館を訪れており、その経験をもとに『雪国』が執筆されました。

 

駒子にもモデルがいます。『雪国』は川端康成の体験が色濃く出ている作品なのかもしれません。

 

川端康成は、モデルとなった旅館「雪国の宿 高半」に昭和9年から昭和12年にかけて滞在し、『雪国』を執筆しました。現在、建物は建て替えられてしまいましたが、執筆活動を行った「かすみの間」は、今も展示室に移され、保存されています。

 

また、現在は長編小説として一冊にまとめられている『雪国』ですが、最初は複数の雑誌に、各章が連作として掲載されていました。そこに、書下ろしを加えて、単行本として発行。その後、続編がまた各雑誌に掲載されました。

 

それらをすべてまとめたものが、今私たちが読んでいる、長編『雪国』なんです。

 

 つまり『雪国』とは、新潟県南魚沼郡の湯沢温泉をモデルに書かれたお話。

 

妻子持ちでふらふらと自由に暮らす島村が、温泉町で出会った芸者の駒子の純粋さに惹かれていく物語です。

 

とても静かなお話で、島村が湯沢温泉を訪れる⇒駒子と再会する⇒駒子のことを純粋でいい子だなぁと思う、というのが大きな流れになっています。

病気だった行男が死ぬ

行男が死んだのは、島村が東京へ帰る日のこと。駒子が駅まで送ってくれることになり、ふたりで駅に向かっている最中に、葉子が行男の危篤を知らせに来ます。

この時の駒子はある行動に出ます。

駒子の感情の描写がとても素晴らしいです。

 村で火事が起きる

火事になったのは、映画の上映会場になっていた小屋でした。火事を聞きつけた島村と駒子は、火事の現場に駆けつけます。

この時の、島村と駒子の会話がもどかしいのです。

惹かれ合っているのは確かなのですが、ともに生きる未来を描けないふたり。その想いが、ひしひしと伝わってくるシーンです。

また、この日は天の河がきれいに見える夜。
天の河と冬の村の描写はとても美しく、映画を観ているような気持ちになります。

火事が起こっているというのに、島村と駒子だけ、どこか浮世離れしているような雰囲気すら感じる幻想的な場面です。

 死期が迫っている行男には、甲斐甲斐しく看病をしてくれる葉子という新しい恋人がいた。

その行男こそ、島村が汽車の中で出会った病人であり、付き添っていた若い娘が葉子だった。

島村は温泉宿に何度か長期滞在し、駒子と惹かれあうが、島村には東京に妻子もいるし、駒子と生活を共にしようとは思っていなかった。

そんな中、温泉宿がある村で火事が起きる……。

ライターは アオノさん(引用文)

 


由紀 越後の民宿へ向かう

2019年02月04日 13時25分33秒 | 創作欄

徹が初めて越後湯沢へ行ったのは20歳の時で、この年、彼の同期生たちの成人式が大学の講堂で行われた。
徹は母の友人の朋子さんがオーダースーツを仕立ててくれたのに、成人式には欠席。
深い理由はない。
朋子さんは当時37歳、離婚して一人娘を育てながら自宅でオーダー服を作っていた。
「ウエストが細いのね」と朋子さんは巻尺を確認して驚いた顔をする。
徹は自身のウエストを確認したことがなかった。
意識していたのは、頭が小さかったことだ。
頭に合う帽子なかったのである。
「頭が小さいから、頭が弱いのだ」と子どもの頃は卑下していた。
高校生になってから、頭の大きさは人並みとなる。
朋子さんは、足の寸法を測りながら、徹の陰部に触れた。
「これ、筋が良さそうね」とニヤリと笑い、2度、3度陰部を撫で下ろすような仕草をした。
「悪戯は、よしてよ」と徹はその手を払う。
「お母さんには言わないで、悪戯を」とニヤニヤしながら、膝を徹の足に押しつける。
「こんな悪戯、言うわけないよ」徹は呆れ返る。
徹は娘時代の淑やかな朋子さんを知っていたので、変貌ぶりに驚く。
徹はそのスーツを3度ほど着だけで、アルバイトの金で既製のスーツ買って大学へ通学した。
民宿の娘さんは徹と同じ年だった。
「成人式へは行ったの?」徹は聞いてみた。
「行ったわ、写真みせてあげようか」頬笑みかける。
二十歳なのに二つ結びのおさげを結っていた。
掘り炬燵に炭に入れに来て、娘さんは話し込んでいく。
「妹はスキーがうまくて、今は国体に行っているのよ」
「それはすごいね」徹は体育の教師を目指していので、興味を示した。
「お母さんに、怒られたの。お客さんの部屋に座り込んで話をしてはいけないよって」
「そうなの。俺はかまないけどね」
徹はこまで出会った女性と親密に話し込んだ経験がなく、娘さんの人なっこい様子に新鮮さを感じた。
徹は「これは恋心か」と思ってみた。
あれから、10年の歳月が流れていた。
由紀の人なっこさは、別のものであった。
徹はあの民宿に顔を出してみたくなる。
暖冬の年で、雪は道の両側に50㎝ほど積もっていた。
これならスニーカーでゲレンデの近くまで行けそうに想われた。
由紀は落ち着きがなく、周囲をキョロキョロ見回しているばかりだった。
「転びそうだわ」由紀は徹の腕に細い腕を絡ませた。
「こんな雪の景色初めて、寒いのね」
病的に痩せている由紀は徹に身を寄せる。
街灯に照らされた雪は幻想的に輝いて見えた。

 

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第34回 全日本選抜競輪 インタビュー

2019年02月04日 11時00分16秒 | 未来予測研究会の掲示板

菅田 壱道【宮城/91期/S1】

スピード強化に自信あり

菅田 壱道

 事故点の累積により1月はあっせんがなかった。2カ月ぶり、今年最初のレースがG1開催となるが、「レース勘とか、空くのは気にならない」と菅田は話す。
 昨年6月高松宮記念杯決勝の敗戦でトップスピードの不足を痛感した。そこから新田祐、渡邉一らナショナルメンバーのアドバイスを参考に取り組んだことが昨年後半の走りにつながった。レースでの余裕はできた。しかし、「仕掛けるには全然」と課題は残る。そこで「プラスに考えて、そこをさらに強化した」のが12月、1月の2カ月間だ。
 ぶっつけ本番にはなるが、特選スタートの精神的アドバンテージは大きい。「今年は勝負の年だと思ってるし、悔いの残らないように。一発目が大事だし、衝撃を見せて。ひと回りデカくなったと思わせたい」。強い気持ちを持って初戦に挑む。

平原 康多【埼玉/87期/SS】

G1開幕戦に不安なし

平原 康多

 平原の18年は、グランプリでの無念の落車で幕を閉じた。3年連続で出場していた立川記念は欠場したが、幸い大事には至らず。年明けをリラックスして迎えた様子だ。
 「(怪我は)そんなにひどくなかった。前回(立川記念)は自転車(の修理)が間に合わなかった。久しぶりにちゃんと正月を迎えられました。ゆっくりできたことに尽きます」
 復帰初戦の大宮記念は決勝でVこそ逃したが、怪我の影響を微塵も感じさせなかった。「自力でも動いて、怪我明けにしては動けていたと思う」と、本人も手応えを感じていた。
 今回は最大の宿敵、脇本雄太はいなくとも、常に頂点を意識して脚力を磨いてきた。
 「やっぱりG1を目指して、そこ(脇本)のレベルに追い付きたい」
 輪界最強のオールラウンダーが、8

 昨年前半は不振に喘いだが、8月小田原記念の地元Vを皮切りに、本来の動きを取り戻した。今年はスタートダッシュを決めるために、G1開幕戦に狙いを定めている。
 「去年は後半はよかっただけに、今年は前半からいい感覚を保ちたい。その感覚をG1に持っていくつもりで取り組んでいます」
 脇本雄太の活躍でスピード化が進む競輪界。だが、あくまでも自分の競走を貫いていく。「ああいう選手が1人いるだけで、レースが全然変わってきちゃう。でも、自分はスタイルを変えずに。そういう選手がいても、自分のレースができれば。相手にイメージ付けができるように、1車でも前にって姿勢は常日頃から見せていきたい」
 誰が相手であろうとも、持ち味の攻め抜くスタイルでタイトル奪取を狙う。

浅井 康太【三重/90期/SS】

G1連覇へ準備万端

浅井 康太

 昨年は11月の小倉競輪祭で7年ぶりのG1制覇を果たした。年末の静岡グランプリは最終バックからまくって2着。昨年の終盤戦からの走りは際立って優れている。
 「去年はトレーニングに対して、しっかり向き合った1年だったので、それを能力面で発揮して、グランプリで2着だったので悔いはないですね。まだ頑張れってことで神様が2着にしてくれたんだと思うし、まだまだ成長できると思います」
 今年初戦の立川記念はオール連対で準V。まずまずのスタートを切った。「立川では(竹内)雄作と連係もできたし、最大限の力は出し切りました。今後にもつながったと思います。このあとはG1もあるので、そこにつなげていきたい」。輪界屈指のオールラウンダーとして、今年も進化し続ける。G1連覇へ視界は良好だ。

三谷 竜生【奈良/101期/SS】

keep-yourself-alive 

三谷 竜生

 「競輪としては良い1年だったし、初S班としても結果を残せた」。昨年はタイトル2つにGP制覇とまさに充実。今年はさらにステージを上げたが、三谷の気持ちが揺らぐことはない。今年の初陣となった1月和歌山記念は優勝こそ逃すも、きっちり決勝に進出。勝ち上がり戦では変わらぬ攻撃的な組み立てで別線を次々と撃破してみせた。
 「和歌山も気負わずに走れたし、追われる立場と言われるけど自分は変わらないと思う。グランプリ王者としての身構えはないけど、去年以上になれるように。(常に)1番車は立場的に1人しかいないから、これからずっと(自分が)そうなっていければ」

次走はGP覇者として迎える初のG1戦。それでも、泰然自若の精神で昨年以上の結果を追い求める。19年、新たな三谷のストーリーが全日本で幕を開ける。

清水 裕友【山口/105期/SS】

タイトル奪取に照準

清水 裕友

 昨年の終盤戦から獅子奮迅の活躍を見せている。年末の静岡グランプリでも最終バック5番手からまくって4着。初出場の大舞台で大いに見せ場をつくった。
 「グランプリは、全然緊張せずに楽しめました。あんなにお客さんいる前で走るのは、やっぱり気持ちがよかったです。今年はG1を獲ってまたグランプリに出たい」
 S級S班として迎えた19年は初戦の立川記念でいきなり優勝。最高のスタートを切った。
 「デキすぎですね。全日本に向けては、いつも通りの練習でしっかり仕上げます。特選からスタートできるので、チャンスはあると思うし、責任感を持って走ります」
 勢いはまだまだ止まらない。今年最初のG1を制して、頂点に立つ。

太田 竜馬【徳島/109期/S1】

練習の成果が着実に

太田 竜馬

 年末のヤンググランプリを制した太田は「肩の荷がおりた感じはある」と話す。ひとつ結果を残せたことでプレッシャーから解放されたのか、今年は武雄、別府とF1戦を連覇。その走りには自信が満ちあふれている。
 「まだ冬場は苦手だけど、F1でもなかなか優勝はできないですからね。力は出せてるかな。練習の成果が出てきてるし、まだもっと出るかなと思う」
 昨年は共同通信社杯に競輪祭とビッグレースで2度の決勝戦を経験した。ヤンググランプリを制した今、太田に寄せられる期待はさらに大きくなるはずだ。
 「ヤンググランプリを勝ったから、その次とはあまり思わない。でも応援してくれる人の期待には応えたいですね。体はいいと思うので、万全の状態で挑みたい」

大塚 健一郎【大分/82期/S1】

期待は結果で応える

大塚 健一郎月川崎記念を優出など調子が上がり始めた矢先、8月小田原記念での落車。復帰後のヒットは未だに出ていないが、「また上げていくだけ。それの繰り返しです」と弱音を吐かずに浮上を目指している。「小田原の落車は痛かったけど、言い訳ですし。気持ちが切れるなら、納得して切りたい。怪我は付き物ですし、数字が実力です」

 苦しい日々ながら、逆境に負けず目標へまい進した。地元で初めて行われるG1への参戦に向けて、「去年は権利獲得のプレッシャーもあったし、まず出たいと思っていた」と悪戦苦闘しながら権利を獲得。唯一の地元勢として出場を決めた。期待のかかる大一番だけに重圧はかかるが、幾多の試練を乗り越えてきた大塚なら力に変えるだろう。次は「与えられた番組で」と本番で一つでも上に勝ち進むだけ。





第34回 全日本選抜競輪 SSメンバー2人不在

2019年02月04日 10時46分39秒 | 未来予測研究会の掲示板

今年も全日本選抜競輪からG1戦線がスタートする。

2019年02月08日~2019年02月11日 

34回目を迎える今大会の舞台は別府競輪場。

別府では初となるG1開催だ。

脇本雄太、新田祐大らナショナルチームのメンバーは不在だが、三谷竜生、平原康多に浅井康太ら輪界を代表するトップスターが今年最初のタイトルをかけて激しく火花を散らす。

いよいよG1戦が開幕

平原 康多
浅井 康太
清水 裕友

 今年の勢力図を占う意味でも注目されるG1開幕戦だ。

昨年のG1戦線を席巻した脇本雄太、昨年度覇者の新田祐大に深谷知広は不在。

それでも輪界を代表するトップレーサーが初のG1開催となる別府競輪場で覇を競う。

 中心は高い総合力を誇る平原康多だ。

昨年は3年ぶりにG1優勝なしに終わったが、9月共同通信社杯を制すなど成績は高いレベルで安定。大宮記念の走りを見るかぎり、グランプリで落車の影響もなさそうだ。

吉澤純平、鈴木竜士に吉田拓矢とラインの機動型の成長も頼もしく、武田豊樹、木暮安由ら前後に強力な援軍をそろえてタイトル戦のスタートダッシュを決める。
 浅井康太のG1連覇も十分ある。競輪祭決勝では逃げる脇本を3番手から鋭くとらえた差し脚は健在。昨年終盤からの脅威ともいえる安定感で今年もGレースで存在感を発揮する。

中部勢は竹内雄作、柴崎淳に吉田敏洋と自力型も充実。金子貴志の存在も忘れてはならない。
 今年こそ―。そんな気配があるのは中四国勢だ。

清水裕友がS班となり、太田竜馬がヤンググランプリを制覇。

若手機動型の台頭が著しく、ラインを固める追い込み陣も豊富だ。ここで流れをつかめば今年は中四国の年になってもなんら不思議はない。
 賞金王の三谷竜生に村上兄弟とS班3名をそろえる近畿勢は脇本不在の穴をどこまでうめられるか。

稲垣裕之、古性優作と大舞台の経験豊富な選手はそろっているだけに、固い結束力で他地区に流れは渡さない。
 迎え撃つ九州勢は山崎賢人がどこまで立て直せるか。

中川誠一郎、井上昌己とスピードのある選手が多く、山田英明も悲願の初タイトルを虎視眈々と狙っている。

 

 

 



小4死亡 傷害容疑で母も逮

2019年02月04日 09時59分20秒 | 社会・文化・政治・経済

小4死亡 傷害容疑で母も逮捕2/4(月) 9:27 掲載

栗原心愛さんが書いたアンケートのコピー。
自由記述欄で悩みを訴えていた。

余白には担任が本人から聞き取った「あたま→なぐられる 10回(こぶし)」「お母さんがいない時 せなかをける」などの内容が書き込まれている(朝日新聞デジタル)

千葉の小4女児死亡、傷害疑いで母も逮捕
 千葉県野田市立小4年の女児が自宅浴室で死亡した事件で、県警は4日、傷害容疑で逮捕した父(41)と共謀し女児に暴行したなどとして、同容疑で母(31)を逮捕した。
捜査関係者への取材で分かった。(共同通信)

小4死亡 母も逮捕へ…傷害容疑 夫の暴行止めず
読売新聞
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 千葉県野田市の小学4年栗原心愛みあさん(10)が死亡し、父親の栗原勇一郎容疑者(41)が傷害容疑で逮捕された事件で、県警が心愛さんの母親(31)についても傷害容疑で逮捕状を取ったことが3日、捜査関係者への取材で分かった。
4日にも逮捕する。県警は、母親が父親の暴行を止めなかったとして共犯関係が成立すると判断した。
事件を巡っては、栗原容疑者が1月24日午前10時頃から午後11時20分頃までの間、自宅で長女の心愛さんに服の上からシャワーで冷水を浴びせたり首付近を両手でわしづかみにしたりするなどして負傷させたとして、25日に逮捕された。
捜査関係者によると、母親は栗原容疑者とともに、心愛さんにけがを負わせた疑いが持たれている。
心愛さんは両親と妹(1)の4人暮らしで24日は全員が自宅にいた。
母親が直接、暴行を加えた形跡はないが、県警は栗原容疑者の暴行を知りながら止めなかった責任は重大とみている。
県警は心愛さんの体に残った複数のあざの状態などから、母親が事件前には栗原容疑者の暴行を止めない状況になっていたとみて調べる。

 

 




日銀、日本株の4%弱(24兆円)を保有

2019年02月04日 07時09分30秒 | 社会・文化・政治・経済
2018/4/2 日本経済新聞
 日銀が持つ上場投資信託(ETF)の残高が3月末の時価で約24兆円に上ることが分かった。年6兆円のペースで買い増しているほか、株高で含み益が膨らんだ。日銀は当面今のペースで買い続ける構え。
株価を支えることで消費者心理を高める資産効果の利点がある一方、将来の「出口」をどう描くのか課題もある。

日銀の日々の購入実績や株価をもとに推計した。購入時の簿価は約19兆円で、株高で5兆円ほどの含み益を抱える。

異次元緩和直前の5年前と比べると12倍に膨れた。日本株全体の4%弱を持つ巨大な株主になった。

日銀はETF購入を2%の物価上昇のための手段の一つとする。異次元緩和を始めた当初は年1兆円だったが、段階的に増やしてきた。2%の物価目標を実現するため、日銀のETF大量購入が長期化する可能性は高い。

株安の日が多かった3月は月間の購入額が8000億円強と最大を記録している。

株価が上がれば、株を持つ個人投資家らが潤い、個人消費にプラスになる。上場企業が資金調達しやすくなり、景況感にも追い風になる。

ただ、欧米の中央銀行が金融緩和の目的で株を買ったことはない。物価への波及が見えづらいほか、恩恵が富裕層や上場企業に偏りやすい。本来、民間の投資家の取引で決まる株価の形成をゆがめている。

残高は日銀の自己資本(約8兆円)の3倍にも上り、株安になれば資本がいたむおそれもある。

日銀内でも昨年後半ごろからこうした副作用への意識が高まってきている。

3月8~9日の金融政策決定会合でもETF購入について「政策効果と考え得る副作用についてあらゆる角度から検討を続けるべきだ」との意見が出ている。

 
 

約24兆円の日銀保有株

2019年02月04日 07時06分29秒 | 社会・文化・政治・経済

外国人投資家が売り、日銀が買う、という構図。
そこに、株価形成をゆがめる弊害があるのでは?
日銀は、株買い入れの判断基準を明らかにしていない。
株価が午前中に下落すると午後にすかさず日銀は購入するパターンが多いとされる。
業績など企業の実力を超えて株価がかさ上げされたり、市場に流通する株が減って株価が乱高下しやすくなっりする可能性がある。
時価ベースで発行済み株式の10%以上を日銀が実質的に保有する企業数は30社以上に上る。
このため、日銀が保有株を売ったら、株価は急落するなど市場が混乱を引き起こす危険性もある。。
売りに売れない状況。
約24兆円の日銀保有株は、爆弾のようなもの。


ひらめきと記憶の正体

2019年02月04日 06時36分56秒 | 医科・歯科・介護

 NHKスペシャル「人体」”脳”すごいぞ!

私たち人類が、他の動物に比べて特に進化させてきた脳。高度な社会を築き上げてきた力の源である脳の神秘を、最先端の脳科学の力を借りながら、明らかにしていきます。

2018年2月4日放送のNHKスペシャル「人体」第5集・脳では、お笑い芸人で芥川賞作家でもある又吉直樹さんの脳を最先端の脳科学で徹底解剖!W司会の山中伸弥さん・タモリさんに加え、女優・菅野美穂さんも迎えた豪華メンバーで、これまで見たことのない「全く新しい脳の姿」に迫りました。
世界初!脳の中を行きかう電気信号を丸裸に!

私たちの脳には1000億の神経細胞があると言われ、それぞれの細胞が電気信号をやりとりすることで情報を伝え合っています。番組では、脳の中を行きかう電気信号の様子を、世界で初めて、超精細CGで再現することに成功しました。(詳しくは、「ついに見えた!脳に広がる神経細胞のネットワーク」を参照)

でも、脳はただ単純に電気信号をやり取りするだけではありません。神経細胞と神経細胞との間には、ほんのわずかに小さなすき間があり、その間は電気ではなく「メッセージ物質」が飛び交って情報を伝えているのです。


CG 神経細胞と神経細胞とが情報をやり取りする「シナプス」。わずかなすき間が空いている
脳の中を飛び交うメッセージ物質の中でもっとも多くの数を占めるのが、「電気を発生させて」というメッセージを次の細胞に伝える「グルタミン酸」。このメッセージ物質があるおかげで、電気信号は細胞から細胞へ次々とリレーされていきます。そしてこの電気の伝わり方にさまざまなバリエーションを生み出すため、数十から100種類ものメッセージ物質が脳の中を飛び交っていることも分かってきました。

たとえば、「一斉に電気を発生させるぞ」というメッセージを伝える「ドーパミン」。素敵な人をみてテンションが上がったりしたときに出されるこの物質ですが、これが脳内にばらまかれると、電気信号の伝わり方が活発になり、神経細胞は一気に活性化していきます。

メッセージ物質のさじ加減ひとつで、電気信号の伝わり方に無数とも言えるバリエーションが生まれてくる。常に揺らいでいるその不安定さこそが、時に想像すらしない「ひらめき」を生み出す原動力になると考えられています。
芥川賞作家・又吉直樹さんの脳に「ひらめき」の秘密を探る!

そんな「ひらめき」の秘密を探るため今回ご協力いただいたのは、お笑い芸人で芥川賞作家でもある、又吉直樹さん。日々新たな発想を生み出し、人々を楽しませ続ける又吉さんの脳を観察すれば、「ひらめき」の謎を探るヒントが得られるのではないか?と考えたのです。

そこで、京都大学脳機能総合研究センターにご協力いただき、世界最高性能のMRIという装置を使って、又吉さんが「ひらめいた」と思った時の脳の状態を調べてみました。その時の又吉さんの脳は、広い領域が一斉に活動している状態になっていました。実は誰でもそれと同じような脳の状態に近づける、意外な方法があるというのです。それは、「ぼーっと」すること。

「ぼーっと」している時、私たちの脳は決して活動をやめているわけではなく、脳の広い領域が活性化している「デフォルト・モード・ネットワーク」と呼ばれる不思議な状態にあることが分かってきています。このネットワークが、無意識のうちに私たちの脳の中に散らばる「記憶の断片」をつなぎ合わせ、時に思わぬ「ひらめき」を生み出していくのではないか、と今大注目されているのです。


CG 又吉さんの脳から検出された「デフォルト・モード・ネットワーク」
私たちの記憶力のカギを握る、謎の器官「歯状回」

さらに番組では、「ひらめき」を生む上で重要となる「記憶」の秘密にも迫りました。私たちの記憶は、脳の奥深くにある「海馬」という器官で生み出され、やがてそれが脳の表面に広がる「大脳皮質」に移され、生涯にわたって蓄えられていくと考えられています。

記憶を生み出す肝心要の「海馬」で、近年、脳科学の常識を覆す大発見がありました。脳の中でごくごく例外的に、神経細胞が新しく生まれ続けていることが分かったのです。それは「海馬」の入り口にある「歯状回」と呼ばれる場所で起きていました。ここで神経細胞が新たに生まれ続けていることで、私たちは新しい記憶を次々と作り出していけるのではないかと考えられるようになってきています。(詳しくは、「記憶力アップのカギ!?海馬で起きている“大事件”・神経細胞の生まれ変わり」を参照)


CG 海馬の中にある歯状回の神経細胞。
さらに最新の研究では、この歯状回で新たに生まれる神経細胞の成長を、体のある臓器から届けられるメッセージ物質が後押ししているのではないかと考えられています。そのひとつが、私たちが物を食べたりした時に「すい臓」から出される「インスリン」。サウスカロライナ大学のローレンス・リーガン教授によれば、インスリンが届いている時と届いていない時とで神経細胞の成長を比べたところ、届いていない時には細胞の成長が格段に落ちると言います。

体の中を行きかうメッセージ物質の影響を大きく受けながら、私たちの脳は働いている。そんな脳の姿が、いま明らかになりつつあります。
「究極のネットワーク臓器」脳の解明が、認知症治療につながる

体の臓器と密接につながりながら、同時に、それ自身で独立した「ネットワーク臓器」となっている。脳をそう捉えることで、私たちを悩ませる深刻な病を克服する道筋が見え始めています。その病とは、認知症です。

認知症は、一説によればアミロイドβと呼ばれる有害なたんぱく質が脳の中にたまることで、神経細胞のネットワークが侵され、発症すると考えられています。このアミロイドβを分解する薬を脳に送り込むことで病気の進行を止めようという試みが始まっているのですが、その時にカギとなるのが、すい臓から脳に届いていた「インスリン」です。

アミロイドβの分解薬はとても大きいため、点滴で血液の中に送り込んでも、普通の方法では脳の血管の壁をすり抜けて薬を神経細胞へと届けることはできません。しかし、同じく巨大な物質である「インスリン」は脳の血管の壁をすり抜けることができます。そのメカニズムを解明し、アミロイドβ分解役を脳へ送り込むのに応用しようというプロジェクトが始まっています。

CG 薬がカプセルに包まれて血管の壁を通過していく
さらにインスリンが脳の血管をすり抜けるメカニズムを応用して作られた、「ハーラー病」という脳の病気の薬の治験が、ブラジルのポルトアレグレという街で3年前から行われ、大きな成果をあげ始めています。(詳しくは、「認知症治療の切り札に!?“血液脳関門”突破の最新プロジェクト」を参照)

体の臓器と密接につながりながらも、その内部に高度なネットワークを築き上げてきた、「究極のネットワーク臓器」としての脳の姿が、番組を通して浮かび上がってきています。

ついに見えた!脳に広がる神経細胞のネットワーク
twitterfacebookgoogle 更新日2018年2月4日
皆さんは、「脳」というとどのような姿を思い浮かべますか?頭蓋骨の中におさまっている、ぐにゅぐにゅとして白い、まるで白子のような脳を思い浮かべる方も多いと思います。これまで脳科学者たちは、この白子のような脳が、領域ごとにどのような働きを担っているのかを詳細に明らかにしてきました。その様子を色分けして示したのが、こちらのCGです。
CG 領域ごとに色分けした脳の姿
例えば、脳の一番後ろ、白い丸で囲まれた「視覚野」は、物を見た時にその情報を処理する領域。脳の側頭部にある黄色い領域は、耳から入ってきた音を聞き分ける「聴覚野」、その上の緑色の領域は、「言語」を司る領域といった具合です。
こうした脳の領域ごとの働きの違いを見ていくことも大変興味深いのですが、最先端の脳科学では、それとはまた一味違う姿として脳がとらえられつつあります。それを映像化したのが、こちらのCG。いま大注目の「脳の神経細胞のネットワーク」です。

 

 


ゲームをやると記憶力が向上

2019年02月04日 06時29分23秒 | 医科・歯科・介護

私たちの脳には1000億ほどの神経細胞があると言われていますが、実はこの神経細胞に関して、1世紀近くにわたって脳科学の世界を支配してきたひとつの独断的な説「ドグマ」がありました。そのドグマとは・・・。

「おとなの脳では、新たな神経細胞は決して生まれない」

このドグマの発端となったのは、近代脳科学の礎を築き上げた「巨人」、ラモン・カハール(1852-1934・1906年にノーベル医学・生理学賞を受賞)。
人間の脳をくまなく調べたカハールは、細胞が常に生まれ続けている他の臓器と違い、脳では生まれたばかりの未発達な神経細胞がまったく見当たらないことからこのように考え、それが絶対的な「ドグマ」として受け継がれてきたとされます。
海馬の歯状回という場所で新たな記憶がつくられる

ところがちょうど20年前、このドグマを真っ向から否定する研究が現れました。
脳の中にはごく例外的に神経細胞が生まれ続けている場所がある、というのです。
その研究成果を論文に発表し世界に衝撃を与えたのは、アメリカ・サンディエゴにある「ソーク研究所」のフレッド・ゲージさん。
彼が生まれたばかりの細胞を見つけたのは、脳の「海馬」と呼ばれる器官の中にある「歯状回」という、それまでほとんど注目されたことのない場所でした。

CG 右は海馬の断面。青く光っているのが歯状回の細胞、紫色がその他の海馬の細胞
私たちの脳の左右にひとつずつある「海馬」は、「記憶」を作り出している場所として知られています。
大人の脳で細胞が新たに生まれている事実が見つかった「歯状回」は、海馬の入り口に位置していて、海馬へとやって来た電気信号を最初に受け取って海馬の中へと送る役割を果たしている場所です。
歯状回を介して海馬内に神経細胞のルートが生まれ、それが新しい記憶そのものとなっていくと考えられています。
なぜこの歯状回では例外的に神経細胞が生まれ続けているのか、ゲージさんの発見を機に「歯状回」についての研究がさらに進み、結果、私たちの記憶の謎が次第に明らかにされてきています。

現在の脳科学では、歯状回で新しく生まれる細胞の役割は「細かな違いを見分け、これを記憶すること」にある、というのが有力な仮説となっています。
UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)准教授のメイゼン・キアベックさんは、人間と同じく歯状回で新しい細胞が生まれ続けているマウスの脳を観察することで、そのメカニズムを探り続けています。

記憶のメカニズムを研究しているメイゼン・キアベック准教授
「マウスの歯状回で新しく生まれる神経細胞は、周りの環境のささいな変化、例えばそれまでいた場所とはほんのちょっと違う場所に来た時に敏感に反応することが分かっています。
さらに特殊な方法を使って新しく生まれた神経細胞の働きを阻害すると、そのマウスを新しい場所に移動させても、それまでの環境との違いを区別できなくなるのです。
人間でも同じことが言えると私は考えています。
駐車場に車を停めた時、いったいどこに停めたのか、私たちは正確に覚えていられます。

いつも利用している駐車場で、いつもとは微妙に違う場所に車を停めた時でも、私たちがそのささいな違いを認識し、記憶することができるのは、歯状回の細胞のお陰であると考えられるのです。」
五感とともにつくられる記憶

細かな違いを見分けて、それを記憶する。
歯状回が働くのは、目から入ってくる「視覚情報」に対してだけではないと語るのは、UCI(カリフォルニア大学アーバイン校)教授のマイケル・ヤッサさんです。
人間の脳の歯状回がどのような時に反応するのかMRIを使って調べてきたヤッサさんは、「視覚」に加えて「聴覚」・「嗅覚」・「触覚」・「味覚」など、五感を通して私たちの脳に入ってくる情報に歯状回は反応すると考えています。

どのようなときに海馬の歯状回が反応するのかを研究しているマイケル・ヤッサ教授
「私はこのコーヒーメーカーを使って1日に何度もエスプレッソを作ります。
今日は皆さんがおみやげに持ってきてくれたこの豆を試してみることにしましょう。
コーヒーを飲むという行為は、歯状回で生まれる新しい細胞なしには楽しめません。
なぜなら、見た目だけでなく、におい、味など様々な要素が混ざり合っているからです。

歯状回で新たに生まれる細胞がそのわずかな違いを敏感に探知してくれるお陰で、私たちはエスプレッソを1杯飲むたびに、以前に飲んだ1杯との違いを細かく記憶できるのです。」
記憶力アップのために、刺激ある生活を送るには?

歯状回で神経細胞が新しく生まれ続けているからこそ、私たちは日々のさまざまな経験をこと細かに記憶していける。
マウスを使った実験からは、歯状回で神経細胞の生まれ変わりを盛んにするには、運動をすることに加え、たくさんの刺激がある環境にいることが重要だということも明らかになってきています。
ヤッサさんと共に歯状回の働きを調べているUCI(カリフォルニア大学アーバイン校)教授のクレイグ・スタークさんは、「たくさんの刺激のある環境」を作り出すために、ちょっと意外なものが活用できるのではと考えています。

記憶する力を向上させるためにテレビゲームが役に立つと語るクレイグ・スターク教授
「刺激がある環境に身を置くために私たちは何ができるでしょうか。
『みんな世界中を旅するべきだよ!』とあなたは言うかもしれません。
それも良いでしょうけど、実際には数カ月ごとに世界旅行に出かける経済力をみんなが持っているわけではありません。
でも現代には、それを実現してくれる便利なものがあります。それは「テレビゲーム」です。

こうしたゲームには驚くほど豊かな世界が用意されています。
細やかなところまで作られており、魅力的です。
才能あるアーティストやエンジニアが集まって、何百万ドルも投じて作り上げられたゲームの中にはすばらしい経験が準備されています。
私たちは普段ゲームをやらない被験者たちを対象に、ゲームをやる場合とやらない場合とで、細かい違いを見分けて記憶する力がどのように変化するかを調べました。
その結果、未知の世界を探検したりするゲームをやった被験者では、記憶力が向上する、という結果が出てきたのです」

【関連記事】
★『認知症の初期症状とは?早期発見のためのチェック』
★『記憶力低下などの症状がみられる軽度認知障害とは』
この記事は以下のNHK番組から作成しています

さらに最新の研究では、この歯状回で新たに生まれる神経細胞の成長を、体のある臓器から届けられるメッセージ物質が後押ししているのではないかと考えられています。
そのひとつが、私たちが物を食べたりした時に「すい臓」から出される「インスリン」。

サウスカロライナ大学のローレンス・リーガン教授によれば、インスリンが届いている時と届いていない時とで神経細胞の成長を比べたところ、届いていない時には細胞の成長が格段に落ちると言います。

体の中を行きかうメッセージ物質の影響を大きく受けながら、私たちの脳は働いている。

そんな脳の姿が、いま明らかになりつつあります。
「究極のネットワーク臓器」脳の解明が、認知症治療につながる

体の臓器と密接につながりながら、同時に、それ自身で独立した「ネットワーク臓器」となっている。脳をそう捉えることで、私たちを悩ませる深刻な病を克服する道筋が見え始めています。その病とは、認知症です。

認知症は、一説によればアミロイドβと呼ばれる有害なたんぱく質が脳の中にたまることで、神経細胞のネットワークが侵され、発症すると考えられています。
このアミロイドβを分解する薬を脳に送り込むことで病気の進行を止めようという試みが始まっているのですが、その時にカギとなるのが、すい臓から脳に届いていた「インスリン」です。

アミロイドβの分解薬はとても大きいため、点滴で血液の中に送り込んでも、普通の方法では脳の血管の壁をすり抜けて薬を神経細胞へと届けることはできません。しかし、同じく巨大な物質である「インスリン」は脳の血管の壁をすり抜けることができます。そのメカニズムを解明し、アミロイドβ分解役を脳へ送り込むのに応用しようというプロジェクトが始まっています。

更新日 2018年2月4日


脳 「ひらめき」の秘密を探る!

2019年02月04日 06時20分38秒 | 医科・歯科・介護

芥川賞作家・又吉直樹さんの脳に「ひらめき」の秘密を探る!

そんな「ひらめき」の秘密を探るため今回ご協力いただいたのは、お笑い芸人で芥川賞作家でもある、又吉直樹さん。
日々新たな発想を生み出し、人々を楽しませ続ける又吉さんの脳を観察すれば、「ひらめき」の謎を探るヒントが得られるのではないか?と考えたのです。

そこで、京都大学脳機能総合研究センターにご協力いただき、世界最高性能のMRIという装置を使って、又吉さんが「ひらめいた」と思った時の脳の状態を調べてみました。
その時の又吉さんの脳は、広い領域が一斉に活動している状態になっていました。
実は誰でもそれと同じような脳の状態に近づける、意外な方法があるというのです。
それは、「ぼーっと」すること。

「ぼーっと」している時、私たちの脳は決して活動をやめているわけではなく、脳の広い領域が活性化している「デフォルト・モード・ネットワーク」と呼ばれる不思議な状態にあることが分かってきています。
このネットワークが、無意識のうちに私たちの脳の中に散らばる「記憶の断片」をつなぎ合わせ、時に思わぬ「ひらめき」を生み出していくのではないか、と今大注目されているのです。

私たちの記憶力のカギを握る、謎の器官「歯状回」

さらに番組では、「ひらめき」を生む上で重要となる「記憶」の秘密にも迫りました。
私たちの記憶は、脳の奥深くにある「海馬」という器官で生み出され、やがてそれが脳の表面に広がる「大脳皮質」に移され、生涯にわたって蓄えられていくと考えられています。

記憶を生み出す肝心要の「海馬」で、近年、脳科学の常識を覆す大発見がありました。
脳の中でごくごく例外的に、神経細胞が新しく生まれ続けていることが分かったのです。

それは「海馬」の入り口にある「歯状回」と呼ばれる場所で起きていました。

ここで神経細胞が新たに生まれ続けていることで、私たちは新しい記憶を次々と作り出していけるのではないかと考えられるようになってきています。
記憶力アップのカギ!?海馬で起きている"大事件"・神経細胞の生まれ変わり
twitterfacebookgoogle 更新日2018年2月4日


脳の中を行きかう電気信号

2019年02月04日 06時17分01秒 | 医科・歯科・介護

世界初!脳の中を行きかう電気信号を丸裸に!

私たちの脳には1000億の神経細胞があると言われ、それぞれの細胞が電気信号をやりとりすることで情報を伝え合っています。
NHKの番組では、脳の中を行きかう電気信号の様子を、世界で初めて、超精細CGで再現することに成功しました。(詳しくは、「ついに見えた!脳に広がる神経細胞のネットワーク」を参照)

でも、脳はただ単純に電気信号をやり取りするだけではありません。
神経細胞と神経細胞との間には、ほんのわずかに小さなすき間があり、その間は電気ではなく「メッセージ物質」が飛び交って情報を伝えているのです。

CG 神経細胞と神経細胞とが情報をやり取りする「シナプス」。

わずかなすき間が空いている脳の中を飛び交うメッセージ物質の中でもっとも多くの数を占めるのが、「電気を発生させて」というメッセージを次の細胞に伝える「グルタミン酸」。
このメッセージ物質があるおかげで、電気信号は細胞から細胞へ次々とリレーされていきます。
そしてこの電気の伝わり方にさまざまなバリエーションを生み出すため、数十から100種類ものメッセージ物質が脳の中を飛び交っていることも分かってきました。

たとえば、「一斉に電気を発生させるぞ」というメッセージを伝える「ドーパミン」。
素敵な人をみてテンションが上がったりしたときに出されるこの物質ですが、これが脳内にばらまかれると、電気信号の伝わり方が活発になり、神経細胞は一気に活性化していきます。

メッセージ物質のさじ加減ひとつで、電気信号の伝わり方に無数とも言えるバリエーションが生まれてくる。

常に揺らいでいるその不安定さこそが、時に想像すらしない「ひらめき」を生み出す原動力になると考えられています。


「脳の神経細胞ネットワーク」

2019年02月04日 06時11分31秒 | 医科・歯科・介護

脳の中を走る神経線維の束をデータから再現した
(岡田知久・京都大学/NHK)
脳の働きを「ネットワーク」でとらえ直す

京都大学・脳機能総合研究センターの岡田知久特定准教授の協力を得て、世界最高性能のMRIという装置で脳を計測し、そのデータを詳しく解析したところ、白子のような脳の中を走る神経線維の姿が浮かび上がってきました。

私たちの脳の中にはおよそ1000億の神経細胞があると言われていますが、ここで見えているのは、その中でも特に領域と領域の間をつなぐ細長い神経細胞の姿です。

一本一本の線維は、数十万本の神経細胞が束になったものと考えられていて、隣り合う領域同士を結び付けたりしています。

そして、時に数十センチも離れた領域同士を結び付けたりします。

その中を電気信号が縦横無尽に駆け巡っているのです。

脳は、けっしてひとつひとつの領域がばらばらに働いているわけではなく、こうした領域間をつなぐ神経細胞のネットワークを介して様々な営みを生み出している。

脳の働きを「ネットワーク」という観点から捉えようという取り組みが、まさに今始まっています。
わずか0.2秒間!生きている脳で何がおきているのか?

ただ、生きている人間の脳の中で、神経細胞がどのようにつながり、どのように働いているのかを明らかにするのは、簡単なことではありません。そうした難題に挑んでいるひとりが、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の山下宙人さん。

「脳活動ダイナミクス推定法」と呼ばれる手法で、人間の脳が領域間でどのように情報をやり取りするのか、世界で初めて映像化することに成功しました。

領域間の情報のやり取りと言っても、そのとき何をしているかによって脳がどのように反応するかまったく違います。

山下さんが最初のテーマとして取り上げたのは、「私たちが人の顔を見た時」の脳の反応。

イギリスのケンブリッジ大学の研究チームが10人の被験者に人間の顔を見せ、その時の脳の反応を1000分の1ミリ秒単位で計測したデータをもとに、電気信号がネットワーク上をどのように流れているのか分析しました。

NHKの番組では山下さんの協力のもと、この映像を超高精細にCG化。

目から入ってきた信号が脳の一番後ろにある「視覚野」に伝わり、そこからわずか0.2秒ほどのあいだに脳の一番前にある「前頭前野」にまで広がっていく様子が鮮やかに浮かび上がってきました。


「脳活動ダイナミクス推定法」という手法で解析された"人の顔を見たとき"の反応。
(山下宙人・国際電気通信基礎技術研究所/岡田知久・京都大学/NHK)
脳の中を駆け巡る電気信号が、0.2秒の間にどのような情報をやり取りしているのか、詳しいことは謎に包まれたままです。しかしこうした新たな解析手法によって私たちの脳の神秘が、少しずつ明らかになりつつあります。


9つの脳の不思議な物語

2019年02月04日 05時30分16秒 | 社会・文化・政治・経済