ビル&メリンダ・ゲイツ財団 (Bill & Melinda Gates Foundation; B&MGF) は、マイクロソフト会長のビル・ゲイツと妻メリンダによって2000年創設された世界最大の慈善基金団体である。
2006年にはウォーレン・バフェットの300億ドルにのぼる寄附により規模が倍増した。
世界における病気・貧困への挑戦を主な目的としているが、特にアメリカ国内においては教育やIT技術に接する機会を提供する活動を行っている。
ワシントン州シアトルに本部を置き、ビル・ゲイツ、メリンダ・ゲイツ、ウィリアム・H・ゲイツ・シニア(ビルの父)の3人の共同議長により運営されている。
財団の理事は、主要な寄付者であるゲイツ夫妻とバフェットの3人である。
また、マイクロソフトの元幹部ジェフ・レイクスがCEOを務める。
日本の報道機関はゲイツ財団または、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団と表記する。
活動概要
2000年に創設以来、「全ての生命の価値は等しい」との信念のもと、ゲイツ財団は全ての人々が健康で豊かな生活を送るための支援を実施してきている。具体的には国際開発プログラム、グローバルヘルスプログラム、米国プログラムの3つのプログラムを展開するほか、僅かではあるが慈善支援も実施している。
国際開発プログラム
国際開発プログラムは、途上国の人々が飢餓と貧困を克服する機会を与えることを目的としている。
農業開発、貧困層への金融サービス、水・衛生整備支援といった、より多くの人々に対して持続可能で成果が上がる支援を中心として、パートナー機関と共に支援を実施している。また、世界の深刻な貧困根絶を促進するため政策アドボカシ―支援も実施している。
グローバルヘルスプログラム
グローバルヘルスプログラムでは、途上国における主要な疾病に対して科学技術の進歩を活用した革新的な支援を実施することを目指している。発見・普及・政策アドボカシ―を重視し、特にワクチンや医薬品、診断方法の確立と普及を通じた感染症と家族保健の改善を目指している。
直近の活動としては、2011年8月に日本政府との官民パートナーシップのもと、約50億円のパキスタンにおけるポリオ根絶支援を発表した。
これは、パキスタン政府によってポリオ根絶事業が一定の成果を出すことができれば、ゲイツ財団がパキスタン政府に代わって日本政府に債務を返済するという「ローン・コンバージョン」と呼ばれる革新的手法を用いたポリオ根絶のための取組で、誰もが願う『ポリオがない世界』を達成するための一助となる。
2010年、ライオンズとライオンズクラブ国際財団(LCIF)は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団よりエチオピア、マダガスカル、マリ、ナイジェリアの特定4地域でのはしか撲滅を支援するための初期交付金が支給されました。
この試験的取り組みに参加したライオンズは、次の3つの主要分野の活動に的を絞りました。
(1)地元、地域及び国レベルでの支援活動、(2)ソーシャル・マーケティングと社会的動員への直接関与、(3)経済的支援。ライオンズとはしかイニシアチブ・パートナーによる活動は大成功を収め、上記4か国で予防接種を受けた子供たちの数は4,100万人になりました。
ゲイツ財団は、この試験的取り組みの成功と世界中の地域社会でライオンズが果たす役割に鑑み、2011年10月、ライオンズにチャレンジ援助金500万ドルを授与しました。
はしか撲滅運動に総額1,500万ドルを提供するというもので、ライオンズとLCIFには1,000万ドルの資金援助が求められていました。
ライオンズは2012年10月にこのチャレンジを達成し、2012年に1億5,000万人以上の子供たちにはしかの予防接種を行う支援を行いました。
2000年、ビルとメリンダは正しいモデルで取り組めば世界は必ず良くなるという信条のもと、極度の貧困を終わらせることを目標とした財団を設立しました。
ビジネスで成功したビルとメリンダの考え方から財団の活動の柱となっているのは「イノベーション」「科学的根拠」「コラボレーション」「楽観主義」の4つです。
柏倉美保子氏
ビル&メリンダ・ゲイツ財団初の日本常駐代表・柏倉美保子氏。
財団で働き始めた当初最も驚いた事が、財団という形態でありながら民間企業以上に、戦略的に分析、検証、立証を繰り返す姿勢でした。
私立基金としては世界最大の財団で、世界の保健衛生と開発支援を中心に毎年40億ドル(およそ4400億円)超を拠出しています。
これは非常に大きな金額ですが、国際協力への資金全体から見れば一部にすぎません。
たとえば国家規模では、アメリカ合衆国が拠出する支援金は300億ドル(およそ3兆3000億円)、イギリスは180億ドル(およそ1兆8000億円)です。
ゲイツ財団のお金の使い方としては、他の組織ができない、又はやりたがらないリスクを取り、最先端の研究や貧困層のためのイノベーションに資金提供することはできます。
一方、貧困問題の解決において最も重要となる、効果の高い対策を持続可能な形へとスケールアップさせることは、政府や民間企業にしかできません。
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジとは
だからこそ、当財団にとって日本をはじめとする主要パートナーとの連携は、戦略上、大変重要です。日本と財団は、「あらゆる命は平等で誰一人取り残されるべきではない」という価値観を共有しています。
貧困から抜け出して経済を発展させるためには、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)、つまり国民全員の健康を目指した予防、治療、機能回復に関する医療サービスを支払い可能な費用で受けられるという経済活動の基盤が欠かせません。
日本が戦後、UHCを展開し被援助国から援助国へと変貌を遂げ、その経験に基づいて東アジア各国の成長を支えてきた重要な役割は、戦後語られたサクセスストーリーの中でも際立つ成功例です。
日本からさらに多くを学び、連携を深めながら、ODAから持続可能な形で卒業する国を増やしていくことを目指していきたいと考えています。
ゲイツ財団はすでに日本とは長く良好なパートナーシップを築いてきました。
ひとつの例が、世界中の人々の健康に貢献するために、世界にも類をみない、官民一体となったグローバルヘルス技術振興基金(GHIT)の立ち上げです。GHITは日本の製薬会社にワクチンなど、貧困層にある人々の手に届きにくいソリューションを開発してもらうことを支援する仕組みです。
開発援助資金が最も有効活用されている手法を日本政府が重視するのは、世界にとってもすばらしいことです。 2019年にはG20の議長国、2020年には東京オリンピックと、日本は今後数年間、世界のスポットライトを浴び続けることになります。
当財団としては、2019年のTICAD VII(アフリカ開発会議)や2020年の栄養サミットでも連携し、この機会に日本のリーダーシップを揺るぎのないものにすること、また国民の健康こそが国や経済の発展につながる、という日本の経験を世界の範として示す貴重な機会と捉えています。
先が見えづらい世界情勢の中、地球社会全体が信頼できるリーダーを求めているように感じます。
今ほど信頼を大切にしてきた日本の外交や国際協力、安定したリーダーシップが世界に必要とされている時はありません。
これまでに無いことを達成できるのではないかという期待を胸に、日本政府、企業、市民社会が培ってきた知識、技術、モデルを必要としている世界各地域に届け、当財団と日本を繋ぐ仕事をできることを心から嬉しく思っております。
佐藤 茂さん [ジャーナリスト]