11/1(月) 11:20配信
毎日新聞
新型コロナウイルスの感染者数は全国的に落ち着いているものの、次の感染拡大に対応できる準備が課題となっている=千葉市内の病院で2021年3月、佐々木順一撮影
民意は自民党の甘利明幹事長や立憲民主党の小沢一郎氏ら連続当選を重ねていた大物議員に厳しい審判を下す一方で、与党の政権継続を認める結論となった。衆院選を終えた岸田文雄政権に望むことを、新型コロナウイルス感染で家族を失った人や不安定な立場で働く人らにそれぞれ尋ねた。
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◇実効性のある対策を
新型コロナに感染した父親(84)を亡くした東京都大田区の男性会社員(59)は、「重症者数、死者数の極小化」や「自宅療養者の減少」を公約に掲げた岸田政権に対し、「政治家は選挙の時だけ立派なことを言うが、実際にコロナで苦しむ現場を救えるような実効性のある対策をしてほしい」と注文を付けた。
この男性は父母ら6人で暮らしていた。母親(82)が8月4日に発熱し、2日後に陽性と判明。父親にもPCR検査を受けさせようとしたものの、近隣の病院から「予約がいっぱい」と断られ、自分や父親が感染しているかどうかも分からぬまま一つ屋根の下で看病を続けたという。
結局、保健所から依頼を受けた医師が初めて往診に訪れた9日、父親も陽性と分かった。既に入院が必要とされる状態まで悪化していたが受け入れ可能な病院はなく、2日後に一時意識を失い救急車を呼んだ時も搬送先が見つからなかった。その後ようやく入院できた病院で息を引き取った。
男性は「希望者がすぐに検査を受けられる体制を整え、必要な患者が全員入院できるよう病床や医療従事者を確保してほしい。感染リスクを抱えながら自宅で患者を看病する家族への支援も足りていない」と切実な思いを語った。【金森崇之】
◇自公政権で暮らしが楽になっていない
「何かが変わるかもしれないと思って1票を投じたけど……」。与党が過半数の議席を維持したことについて、西東京市の女性劇団員(32)はもどかしさを募らせた。
10年所属している劇団は全国の学校での公演を活動のメインにしている。女性は稽古(けいこ)に励みながら、夜間はラーメン屋のアルバイトで生活費をまかなってきた。だが、コロナ禍で公演が次々と中止になったうえ、バイト先の休業や時短営業で思うように働けない「二重苦」に陥り、収入の大半がなくなった。
1回きりの持続化給付金では貯金を食いつぶす日々から抜け出せない。女性は「もらえただけまだ恵まれている方だ。もっと困っている人はたくさんいる」と言い、岸田政権にこう注文をつける。「長年の自公政権で暮らしが楽になった実感はない。守るべき相手が違うと思う。国民の小さな声を聞く姿勢を見せてほしい」【土江洋範】
◇単発でなく、恒久的な支援を
シングルファーザーの仙台市青葉区の会社員、村上吉宣さん(42)は「岸田首相は『富の分配』と言うなら単発の支援ではなく恒久的な仕組みを考えてほしい」と訴える。
村上さんはうつ病のために今年は会社を休むことが多く、小児がんの後遺症が残る長男(20)が通院しながら派遣社員として働いて家計を助けてきた。苦しい経済事情のため3月に高校を卒業した長女(19)も専門学校への進学を先延ばししてアルバイトをすることで一家の生活をやりくりしている。
全国父子家庭支援ネットワーク代表でもある村上さんはひとり親の苦境に目を向けてもらい児童扶養手当を増額するように制度の改正を望んでいる。「今はコロナの感染者数は減っているが、労働状況などへのコロナの影響は今後も数年は続くと思う。ただでさえ生活が苦しいひとり親はさらに厳しい状況にある」と強調した。【関谷俊介】