居酒屋・食堂のさかえ屋へ行く。
2日の日に行ったら、4日からと馴染みの客が教えてくれた。
その人は、店の前に車を停めていたのだ。
店の外には<運転者お断り>の張り紙が。
もう、4年前の事である。
輪太郎はその日、カラオケ大会が午後6時からあるので、10レースで帰るつもりでいたら、競輪場の正門で友人の三田和男と出会った。
「ここで待っていろ、酒を飲もう。今11レースと12レースの前売りを買って来るからな」三田が言う。
待たずに帰ればよかったと後にして思う。
ヤクザ風の男たちが店で待機していて「先生こっちへ」と席を示す。
競輪仲間は「先生」と三田を持ち上げていた。
店の人も「三田先生」と呼び掛けていた。
三田は皆の飲み代を払っていた。
さかえ屋の隣に以前存在して勝元市会議員の店には、輪太郎は亡くなった宮坂虎雄に誘われ一度だけ入ったことがあった。
その日、さかえ屋から出入り禁止となった男たちは、相変わらず酒を飲んで運転するグループだった。
友人の三田にカラオケ大会の話をしたら興味を示して「行く」と言うのだ。
前の年にカラオケの飛び入り参加があったので、「飛び入り参加もありです」と言ってしまう。
すると「俺たちも行くか」と男たちがその気となる。
彼らは当然、歩きと思っていたら飲酒運転だったのだ。
三田と共に、得体の知れない男たちの車に乗ったことを輪太郎は悔いる。
飲酒運転で逮捕されることを警戒してか、彼らは人目のない田圃道をどんどん行く。
そして20分ほど走って運転手の自宅らしい家屋か仕事場の広い敷地内に到着する。
その場所で運転手は外車に乗り換える。
だが、その年は予約参加者が多くて、飛び入り参加はできなかった。
輪太郎に着いてきた3人は、「ここまで来て、話が違うんじゃないか」「話にならぬ」と怒り出したのだ。
「どうしてくれるんだ」と絡んできた。
そこに輪太郎と親しい町内会の役員の一人が居て「誠に申し訳ございませんでした」と平謝りする。
怒って帰って行った男たちは、それ以来、競輪場で顔を合わせると「ふざけたやろうだぜ」と輪太郎をののしる。
また、友人の三田も「話にならぬ」と怒りが収まらないので、疎遠となる。
酒を飲んで運転していた男は4年経った今でも輪太郎を睨みつけるのだ。
執念深い男であり「話にならぬ」と反目する。
その後に飲酒運転で捕まったのだろう、今では常習飲酒運転・男はさすがに車に乗らずバスを利用しているのだ。
その男は競輪場のガードマンたちと親し気に話して、常に目立つ存在なのだ。