「毎年4万種が絶滅してる」と主張する環境関係者に専門家反論
10月30日未明に国際協定が締結されたCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)をめぐっては議論百出している。新聞等の報道では「地球上には3000万種の生物が生息し、毎年4万種が絶滅している」とし、生物の保護を訴えている。生物多様性が損なわれているのは事実ではないのか。
『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』の著者である武田邦彦・中部大学教授はこう指摘する。
「毎年4万種が絶滅しているというが、その一方で新種がどんどん誕生しているのです。しかし、毎年新種がどれだけ生まれているかを関係者は絶対いわない。
何人かの動物学者や植物学者に話を聞いたところ、大型動物の絶滅に関しては、『間違いなく人間が関与している』と断言します。たとえばインドネシアのスマトラ島では、スマトラトラと人間の数は反比例し、人が増えるほどトラは減っている。人間も大型動物の一種で、地球上ではどんどん増えているので、必然的にほかの大型動物は生きていけなくなるのです。
一方、植物に関しては『基本的に人間は関係ない』ということです。さらに、某大学の博物学者に『毎年4万種減っている一方で、4万種ぐらいは生まれているのではないか?』と聞いたら、『実は、新種の誕生はよくわかっていないので、プラスマイナスはいい加減』と答えた。しかし、それを口に出せない雰囲気があるのです。
生物多様性が大事だというが、では、『何万種なら適当なのか』と聞くと、専門家は口を閉ざす。いま地球上には3000万種いるが、多いのか少ないのか。
3億年前の古生代には1000万種いて、ペルム紀(~2億5000万年前)の大絶滅で100万種に減り、その後の恐竜が栄えた中生代(~6500万年前)にまた2000万種に増えた。
しかし、6500万年前に隕石が落ちて地球環境が激変し600万種に減り、その後続々と増えて現在の3000万種に到達した。地球の歴史で考えれば、現代は非常に生物種が多い時代といえます」
※週刊ポスト2010年11月19日
絶滅のスピードはどんどん加速している。2億年ぐらい前の恐竜がいた時代は、1000年の間に一種類の生物が絶滅したと考えられているが、200~300年前にかけては4年で一種、100年前には1年で一種のペースになっていった。
そして1975年には1年間で1000種、今では1年間に4万種以上の生物が絶滅しているとされている。そしてこのスピードはどんどん速まっているんだ。
地球から絶滅しそうな野生動物を「絶滅危惧種」と呼ぶ。IUCN(国際自然保護連合)が出しているレッドデータブックによると、人間と同じほ乳類では約20%、両生類では30%がすでに絶滅危惧種になっている。また、近い将来「絶滅危惧種」になると予想される生物は、ほ乳類で49%、鳥類では、77.7%だ。人間が今のままの生活を続けていると、そう遠くない未来に地球上から、ほとんどの生物が消えてしまうかもしれない。
絶滅とは?その歴史と現在
2009/09/14 or.jp
一つの種(しゅ)が、完全にこの地球上からいなくなることを「絶滅」といいます。多くの野生生物、種の絶滅が物語るもの、それは私たちが生きる、この地球と言う星の環境が壊れ、失われていることに他なりません。
絶滅の歴史
生物の歴史は発生、分化(進化)、そして絶滅の歴史といえます。そして、およそ6億年の間に、誕生した生物の90%以上(99%という考え方もある)が絶滅したといわれています。
過去、地球の歴史の中で、比較的短い歳月の間に多くの種、ときには目や科そのものが絶滅する「大絶滅」という現象があったことがわかっています。
この大絶滅は現在までに5回あったといわれ、もっとも最近起きた大絶滅は、約6,500万年前の恐竜目をはじめとする大型爬虫類の大絶滅です。
なぜ、地球上に君臨していた大型爬虫類が短い期間(といっても、数万年か数十万年という期間であり、正確な時間はわかりません)に絶滅したのか。この大絶滅の原因については、多くの説が出されてきましたが、現在のところは、巨大隕石の衝突か大規模な噴火により生じた、気候の変動に原因を求める説が有力となっているようです。
哺乳類時代の絶滅
恐竜をはじめ魚竜、翼竜など大型爬虫類が自然界の最も有力な存在であった時代が幕を閉じてから2,000万年後。
地球上には大小さまざまな哺乳類が広く存在するようになり、哺乳類の時代となりました。
この2000万年という数字は、大きなものに見えるかもしれませんが、長い地球の歴史からみれば、わずかな期間でしかありません。
哺乳類の時代はその後、4,000万年を経て現在に及んでいます。
しかし、この間にも集中的に絶滅がみられた時代がありました。
よく取り上げられるのは更新世に起きた絶滅で、その主要な原因は氷河期の到来といわれています。
この時の絶滅は、化石の年代測定がしやすい(中生代や古生代のものより完全な化石が多い)こともあり、次のようなことまでわかっています。
ウーリーマンモスの絶滅
中国 :18,000年前
★このほか、北アメリカでの絶滅は10,500年~11,000年前に多発しており、マンモス、サーベルタイガー(剣歯虎)、ウマ、ラクダなどが絶滅している。
イギリス :14,000年前
スウェーデン :13,000年前
氷河期の絶滅は、中・大型の陸生哺乳類に集中している一方、海洋に生息する動物には顕著な絶滅が全くみられませんでした。この点が恐竜などに見られた大絶滅と異なるところで、絶滅が「選択的」に起きたともいえます。つまり、この時代の絶滅の一部には人類の存在がかかわっている可能性が考えられるのです。
近代における絶滅
生命はその歴史の中で、5回に及ぶ大きな絶滅を経てきました。その中で、地球上に発生した生物の90%~99%が絶滅したといわれています。その種数は、50億種から500億種にものぼると推定されています。それでも、化石時代(一万年以上前)までは、絶滅する種数は、平均すると1年あたり100万種につき1種の割合でした。
しかし現在は、より早いスピードで、生物の絶滅が起きていると考えられています。 一例をあげると、生物種の50%~90%が生存するといわれる熱帯雨林(地上の面積の約7%)では、森林の消失に伴い、一日あたり74種もの生物が絶滅しているとされています。(E・O・ウィルソン『生命の多様性』1992年)
ここでいう絶滅種には、発見され、種として記載されることなく、未知のまま絶滅してゆく種が数多く含まれています。現代はまさに、人間が知ることなく、自らの手で多くの種を滅ぼしてしまう、「大量絶滅」といえるでしょう。
オオウミガラス (1844年絶滅)
「大量絶滅」の時代
現在、私たちは生物の歴史上、かつてない「大量絶滅」の時代に生きているといわれます。近代から現代にかけて起きた野生生物の絶滅の原因は、ほぼ100%人類の行為に起因するものであり、地質時代の絶滅とは全く様相が異なります。
西暦1600年以降、いわゆる近代の時代には、とりわけ急激な種の絶滅が進みました。種として記載された動物で、しかも絶滅が確認された種だけでも、その数は600種以上。飼育下でのみ生き残っている種は30種を数えます。
近現代の大量絶滅の引き金となったのは、大航海時代の到来、より具体的にいえばヨーロッパ人の世界への進出でした。無人島だった島への入植がきっかけで引き起こされた絶滅の事例は、1680年に起きたドードーの絶滅を筆頭に、枚挙にいとまがありません。
大航海時代以後、種の絶滅のスピードは、時代を追って加速してきましたが、その背景には、産業革命の成果が欧米中心に上がったこと、人口が増え続けたこと、テクノロジーの進歩などがあることは見逃せません。
これらの要因が急速に進歩し、爆発的に大きくなり、自然に対し、野生動物に対してプレッシャーをかけ、大きなダメージを与えたのは20世紀のことでした。特に、この傾向は20世紀後半に拍車がかかりましたが、それは、人口の増加に負うところが大きいと考えられます。20世紀初頭、17億人だった世界人口は、現在は70億を突破しています。
45億年にわたる地球の歴史を、24時間の時計に当てはめてみると、人類は最後の1分を切ってから出現した、「新参者」です。しかし、その人類が原因をつくって、最後の一瞬の間に大量絶滅を招いているわけです。多くの種の、急激な絶滅......その影響が地球の自然に、そして私たちの暮らしにどのようなかたちで現れるかは、想像もつきません。
20世紀の絶滅
レッドリストに掲載された、1600年以降に絶滅した種の数は、700種あまりにのぼります。
このうち20世紀に絶滅した種が正確に何種なのかは分かりません。しかし、絶滅年は確定しにくいものの、確実と思われるもの以外を除外してみると、過去400年に絶滅した哺乳類のうち45~50%は、20世紀になってから絶滅したとみられています。
また、鳥類については100種あまりの絶滅種のうち35~40%が20世紀になってから絶滅したようです。この数字を見ても、絶滅のスピードが加速していることがわかりますが、今後はさらに地球温暖化の影響なども、絶滅に拍車をかける要因になると考えられるし、絶滅のスピードを抑制することは極めて難しいと考えられます。
フクロオオカミ (1930年絶滅)
(C)WWF-Canon / Helmut DILLER
野生絶滅という「絶滅」
レッドリストには、野生絶滅(EW:Extinct in the Wild)というカテゴリーがあり、30種あまりがあげられています。
これは具体的には野生では絶滅し、飼育下だけに生き残っている種のことです。また野生に戻された場合でも、放された場所が原産地でない場合は野生絶滅とされるケースがあります。
日本の「レッドリスト」では、トキと、トキだけに寄生するダニが野生絶滅となっていますが、IUCNの「レッドリスト」では トキはEN(絶滅危惧種)となっており、野生絶滅にはなっていません。これは、中国(陝西省洋県)に野生のトキが300羽あまりが生き残っているためです。
このほか、 IUCNの「レッドリスト」で知られた野生絶滅種としては、シロオリックス、ソコロバト、クロアシイタチなどが知られています。
モウコノウマ
中央アジアに分布していた、家畜ウマの先祖とされる野生のウマです。狩猟や、家畜ウマとの競合によって、一旦は野生の個体が絶滅しましたが、その後、ヨーロッパの飼育施設からモンゴル原産国のモンゴルに返され、野生に戻す計画が進められています。現在は、「野生絶滅亜種」のリストに名を連ねています。
カカポ
ニュージーランドの夜行性の大型オウムで、フクロウオウムとも言われます。飛翔力はほとんどありません。ニュージーランドの本島ではすでに絶滅し、その後、数十羽が、ネコやイタチなどの移入動物に襲われるおそれのない3つの島に分散・移入され、放されています。しかし、これは原産地ではない(もとは生息していなかった)島なので、野生絶滅種とされました。現在のレッドリストでは、近絶滅種(CR)とされています。
クロアシイタチ
クロアシイタチはアメリカ合衆国西部の草原に広く分布していましたが、毒餌を用いて行われたプレーリードッグ駆除の影響を受けて激減しました。連邦政府は保護に力を注ぎましたが、野生では守りきれず、飼育下の個体だけが残ることになり、野生絶滅種となりました。その後、人工繁殖と野生への再導入が進められた結果、野生復帰が確認され、現在は絶滅危惧種(EN)にランクされています。
野生動物の保護に取り組むとき、私たちは飼育下のみに生き残っている種、すなわち野生絶滅種が、絶滅危機種ではなく、むしろ絶滅した種として扱われていることを、よく考える必要があります。野生生物は野生の状態にいなければ完全な野生動物ではないのです。
地球から、森がなくなってしまう前に。
森のない世界では、野生動物も人も、暮らしていくことはできません。私たちと一緒に、できることを、今日からはじめてみませんか?