<池田小事件>宅間元死刑囚の精神鑑定担当医が、鑑定本を出版するという(2013.5.18報道)。

「宅間守 精神鑑定書 精神医療と刑事司法のはざまで」(亜紀書房)5.24発行予定

大阪教育大付属池田小学校乱入殺傷事件

事件の概要

2001年6月8日午前10時。男が包丁を持って大阪教育大付属池田小学校に乱入。わずか10分ほどの間に、児童8人を殺害、児童13人、教諭2人に重軽傷を負わせた。

事件発生直後、現場の校庭からの報道で映された、おびえる児童たち、何台もの救急車、次々集まってくる保護者たち。そのショッキングな映像は、今も記憶に残っている。

逮捕された男は、宅間守、当時37歳だった。

宅間守の人生

宅間守は、池田市の隣の市で生まれ、大坂教育大学附属池田中学校の受験を希望するが、断念。その後、家庭内暴力が始まっている。高校は中退。その後、

自衛隊→運送業→不動産会社勤務→強姦事件→奈良少年刑務所入所→出所→結婚→離婚→2度目の結婚→市営バス運転手として勤務→職場トラブル→離婚→3度目の結婚→離婚→この元妻へのストーカー行為→4度目の結婚→技能員として小学校勤務→小学校教員に薬物入りの茶を飲ませ逮捕される

→簡易精神検定で「精神分裂病(統合失調症)の疑い」→措置入院(強制入院)→不起訴処分→離婚→建設資材販売会社勤務→解雇→大量殺人を計画→池田小学校事件。

裁判と精神鑑定

弁護側は心神喪失で責任能力無しを主張したが、精神鑑定の結果は、情性欠如、妄想性人格障害などはあるが、統合失調症ではなく責任能力ありと判断され、死刑判決を受ける。

2004年9月14日死刑執行。宅間自身が死刑を望んだためのスピード執行だった。

彼も強い劣等感に悩みながら、孤独と絶望間に押しつぶされた人間だったのだろうか。

妄想性人格障害と宅間

妄想性人格障害者は、他者からの好意を信じられない。根拠もないのに、他人は自分を利用しようとしていると妄想的に思いこむ。相手の言動の中に、自分への侮辱や脅しの意味があると、妄想的に感じてしまう。相手からの悪意を感じると、恨みの気持ちを持ち続ける。自分の評判に敏感で、すぐに怒る。何の根拠もないのに、配偶者恋人の貞節に対して疑いを持つ。

妄想性人格障害者の多くは、冷たい親を持つという。宅間の父親は、事件当時、取材を受け、「勘当したから人間だから、どうにでもしてくれ」と語っている。

凶悪事件の親が取材を受けると、「申し訳ない」と土下座するように謝るか、あるいは、子どもの犯行を信じられず「何かの間違いに違いない」などと語るか、どちらかの場合が多い。宅間の親は違った。

ただ、若い頃からこれだけのことをしてくれば、「勘当だ」と言いたくなるのは、無理はないかもしれない(宅間の兄も宅間のことで心労がたまり自殺したと言われている)。しかし、多くの親は「勘当だ」といいながらも、子どもを愛し心配しているものだろうが。

精神鑑定書の出版

精神鑑定書の出版自体は、法的には問題ないそうである。しかし出版することによって、ただ事件が蒸し返されるのではなく、事件の意味をより深く知っていきたい。それが、被害者遺族の癒しにつながり、犯罪防止につながるように。親子関係の問題や、心の病人格障害で悩む多くの人々にとって、少しでも解決になるように。

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