その本質には、日本人の宗教的な知識の無知があったと言えるだろう。
宗教は元来、人間の幸福を希求するものだ。
だが、詐欺集団は人間の不安を煽り、人間の無知、精神的な弱さにつけ入れのである。
ここが詐欺集団の巧妙さである。
日本人は恥の概念が強いので、人に自身の過ちや不の概念を他人に相談しない土壌がある。
これは、振り込め詐欺など被害者の立場にも通底している。
その本質には、日本人の宗教的な知識の無知があったと言えるだろう。
宗教は元来、人間の幸福を希求するものだ。
だが、詐欺集団は人間の不安を煽り、人間の無知、精神的な弱さにつけ入れのである。
ここが詐欺集団の巧妙さである。
日本人は恥の概念が強いので、人に自身の過ちや不の概念を他人に相談しない土壌がある。
これは、振り込め詐欺など被害者の立場にも通底している。
統一教会は紛れもなく、詐欺集団!
単純明快-それなのに、多くのマスコミの論調は、政治と宗教団体の問題に矮小化、すり替えているのだ。
多くの国民は、ことの本質に思考停止なっては<ダメ>のだー沼田利根
7/22(金) 16:02配信 JBpress
2018年8月、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の合同結婚式に登場した韓鶴子総裁(写真:Lee Jae-Won/アフロ)
(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
安倍晋三元首相が殺されてから、2週間が経つ。
手製の銃で襲撃して、その場で逮捕された山上徹也容疑者(41)が「母親が、ある団体にのめり込み、多額の寄付をして家庭が崩壊した。団体のトップを狙おうとしたが難しく、安倍氏とつながりがあると思ったから襲った」という趣旨の供述をしていると報じられると、事件から3日後の11日にかつての「統一教会(世界基督教統一心霊協会)」が名称を変えた「世界平和統一家庭連合」が会見を開いて、母親が信者であることを公表する。
ここから世論は安倍氏と統一教会との関係、さらに政治と宗教の関係が取り沙汰されるようになったと思えば、いまや関心は統一教会に向かっている。
■ 容疑者と母親との関係抜きに語れない「安倍元首相銃撃」に向かった動機
統一教会といえば、いわゆる霊感商法や合同結婚式が社会問題化し、資金集めや布教活動、あるいは宗教儀式で違法とする司法判断が積み重なっている。
山上容疑者の母親も親族に無断で家や土地を売るなどして1億円近くを寄付したと報道されているが、こうした高額の献金がトラブルとなって返金訴訟に発展する事例はあとを絶たない。いわば「反社会的」性格が強く、「カルト」と呼ぶ声もある。
しかし、会見で統一教会は、山上容疑者が会員であったことはない、としている。教団との直接の関係はない。あくまで母親を介してのものだ。そうすると山上容疑者という個人に焦点を当てれば、事件の動機が形成されるまでの母親との直接的な関係を無視することはできない。
実は、オウム真理教などのいわゆる「カルト」に親がはまった子どもたちが直面するのは、親からの「虐待」である。本来あるべき家庭が「機能不全」に陥り、虐げられる子どもたちの存在。今回の蛮行は決して許されるものではないが、あえてその観点からこの事件を論考してみたい。言い換えれば、“カルト2世”の問題である。
■ 幼少期からネグレクト状態に置かれていた山上容疑者
日本の厚生労働省では児童虐待を、(1)身体的虐待、(2)性的虐待、(3)ネグレクト、(4)心理的虐待の4つに分類している。心理的虐待には、子どもの自尊心を傷つける言動や、暴言、無視などが含まれる。
山上容疑者の場合、幼少期に父親が自殺している。親の自殺が子どもに与える心理的影響は大きい。子どもの目には、自分は親から見棄てられた、と映るからだ。しかも、これをきっかけに母親は統一教会にのめり込んでいく。自分よりも教団を優先して依存していく母親の姿。山上容疑者の伯父がメディアに語った内容も報じられているが、母親が教団に傾注して家族が経済的に困窮していく様にしても、子どもを顧みない強烈な虐待の存在がうかがい知れる。
また、山上容疑者の母親が統一教会に傾倒した事情には、山上容疑者の兄の存在があったようだ。兄は小児がんを患い、小学生の時に頭蓋骨を開く大手術を受け、抗がん剤治療も続けたが、そこで片目を失明している。その長男の救いも母親は教団に求めた。長男を連れて韓国に渡り、教団の聖地で教義や祈祷を受けさせる「四十日間修練」を受けさせたとも報じられている。そこでは弟の山上容疑者にネグレクトが生じたことになる。
兄弟姉妹の間での差別的な扱いも心理的虐待にあたる。特異な事情があったとはいえ、統一教会を恨むという山上容疑者にはどう映ったのか。その兄ものちに自殺している。
■ カルト2世に見られがちなADHDに重なる症状
山上容疑者に限らず、“カルト2世”が苦しむのは、親からの教義の押しつけだったり、自分で自由に生き方を選べなかったりする心理的虐待だったりするが、酷いものになるとそこに教義を教え込ませるための暴力といった身体的虐待まで加わる。もっとも、親の教えを素直に受け入れ、そのまま信者となった“2世信者”にはそんな苦しみは必要はない。それがいいのかどうかはまた別の問題だ。
虐待を受けて育った子どもには、様々な影響が出てくることが知られる。専門家の多くが指摘するのが、発達障害の「ADHD(注意欠如・多動性障害)」に重なる症状が見られることだ。それも様々なアプローチで検証されていることを、過去の取材で知った。
たとえば、生後から5歳くらいまでの子どもは、親(養育者)との間に「愛着(attachment=アタッチメント)」が形成される時期にある。愛着とは簡単にいえば「なつき」のことだ。自力で身体やこころを守れない乳幼児は、誰か大人になつくことで、安全感を得る。その上で子どもは成育とともに活動の範囲を広げ、この世界を知っていく。それが社会的な行動の土台となっていく。
ところが、親がそばにいない、あるいはそばにいても安心感を与えてくれないと、愛着が形成できない「愛着障害」となる。それが大人になっても人との距離がうまくとれないという障害となるばかりでなく、そこか生じる症状や行動様式がADHDと重なるのだ。
また、虐待を受けた子どものほとんどが「複雑性PTSD(心的外傷後ストレス障害)」を患うことも、最近では広く知られる。複雑性PTSDは、戦争体験や事故などの一時的な体験によって引き起こされる従来のPTSDとは違い、むしろ虐待やいじめ、ハラスメントなど長期に繰り返された体験によって生じる。昨秋、小室圭さんとの結婚を前にした秋篠宮家の長女の眞子さんが、複雑性PTSDと診断されたのも記憶に新しい。ここから引き起こされる症状が、ADHDと重なると指摘されている。
ADHDの特徴は、以下のようなものだ。
(1)注意集中困難/ひとつに注意を持続できない。注意がすぐに転動される。
(2)多動性/落ち着きがない。動き回る。
(3)衝動性/衝動や欲求のまますぐに動いてしまう。衝動や欲求の制御すなわち自己コントロールが難しい。
私の知る“2世”の中にも、現在はオウム真理教を離れたとはいえ、急に衝動的になって感情がコントロールできない人がいる。わかっていながら自分でもどうしようもないから、なおさら悩み、苦しんでいる。
■ 深いトラウマを負ったアダルトチルドレン
報道によると、山上容疑者は事件を起こす前に派遣社員として働いていた職場で、トラブルを起こすようになったとされる。作業手順を守らなくなり、上司や同僚が叱責すると「どうしてそんなこと言うんや!」と反抗的な態度をとったという。対人関係もうまくいっていなかったようだ。
自らを虐げたはずの母親に殺意が向かなかったのは、「共依存」の関係にあったからだろう。共依存とは元来、アルコール依存症の夫とその妻との関係を指した。たとえば、依存症の夫のそばを離れずに面倒を看る献身的な妻。「自分なしでは生きられないような無力な人物」の世話をすることに充実感を覚える一方で、「憎みながら離れられない」という関係ができあがる。
実は、1970年代から米国でアルコール依存症の親を持つ子どもが大人になると、対人関係の問題や生きづらさに苦悩する事例が多いことがわかってきた。このことから、家庭内のトラウマ(心的外傷)、虐待や両親の不仲など「機能不全」となった家族の中で育った子どもも、アルコール依存症の親を持って育った子どもと同じ特徴が生じることがわかってきた。そうした子どもたちを「アダルト・チルドレン(AC)」と呼んだ。女性タレントが合同結婚式に参加することで、いまと同じようにテレビのワイドショーが統一教会で盛り上がっていた1990年代に、話題にもなっていたはずだ。
ACにも様々な特徴があるが、機能不全となった家庭を支えるために、親の愚痴を聞いたり、幼い弟妹たちの親代わりになって面倒をみたりと、「よい子」として振る舞う傾向がある。「よい子でない私は捨てられる」という脅迫観念からそのような行動パターンを身につけたはいいが、自分の感情を素直に表現できなくなっていく。それがやがて家から離れてひとりで生きるようになると、人間関係に行き詰まるのもひとつの特徴。自分がなんのために生きているのか分からなくなったり、緊張が続いて生活に疲れたりする。
山上容疑者が海上自衛隊の任期自衛官だった20代前半で自殺未遂を起こし、兄妹に保険金を残そうとしたとも報じられている。宗教への「依存症」の母親を持つとすれば、ACのアプローチのほうがわかり易いかも知れない。いずれにしても、子が親に虐げられることに変わりはない。
山上容疑者のものとされるツイッターの書き込みにはこんなものがあった。
「俺は作り物だった。父に愛されるため、母に愛されるため、祖父に愛されるため」(2019年12月7日)
「根本的に家族として崩壊したまま、現実は上滑りしていった」(2020年1月26日)
そして、統一教会への恨み辛みを、フォロワーもないのに書き綴る。
■ カルトにのめりこむ親と虐待を受けるその子、政治は何もしてやれないのか
「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」とはよく言ったものだ。そこに飛び込んできたのが、昨年の9月に統一教会の創始者である文鮮明の妻にして、現在の主宰者である韓鶴子が立ち上げたNGO「天宙平和連合(UPF)」に送った安倍氏のビデオメッセージだった。そこで元首相は「韓鶴子総裁をはじめ、皆さまに敬意を表します」と憎むべき相手を表敬している。憲政史上、在任期間が最も長く、日本の国土と国民の生命、財産を守るべく反対を押し切ってまで安保法制を成立させた元首相が、自分の母親と財産を奪った張本人を敬う姿。敵意を抱いたとしても不思議ではない。
とすれば、この事件で着目すべきは政治的思想でもカルト団体の存在でもなく、そこに依存して抜け出せなくなった母親とその子どもの小さな世界にこそ、これだけ衝撃的な事件を引き起こした元凶がある。むしろ、たまたま依存したのがカルトというだけで、統一教会や政治家の関わりを見ても、事件の本質は見えてこない。
もっともこうした親子を救えなかったことにこそ、政治の限界があるのかもしれないのだが。
青沼 陽一郎
7/22(金) 16:15配信 NEWSポストセブン
かつて、旧統一教会の信者だったという仲正教授が明かす
安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件で、逮捕された山上徹也容疑者の母親が入信していた旧統一教会(世界基督教統一神霊協会、現・宗教法人「世界平和統一家庭連合」)に再び注目が集まっている。母親は1億円にも上る献金を行ない、一家は困窮したとされるが、なぜそれほど多額の献金をする必要があったのか。
【写真】安倍氏の献花台。他、洋子さんや寛信氏や岸信夫氏らが写る家族写真、スタインウェイのピアノを弾くスーツの安倍氏も
元信者の金沢大学法学類教授・仲正昌樹氏によれば、「統一教会の教義を理解する必要がある」という。東京大学に入学した1981年に駒場正門前で勧誘されたのをきっかけに入信し、1992年までの11年半、信者として活動していた。
「前提として、統一教会は聖書を独自に解釈する宗教なんですが、アダムとエバがサタンに堕落させられるという『失楽園』の話が根幹になっている。基本的にこの世はサタンによって支配されていて、堕落した人間はモノ以下になっていると解釈する。人間はモノをサタンの世界から奪い返し神に捧げることによって、モノを仲介として神の世界に近づくという『万物復帰』の考えがあり、現代では貨幣が全てのモノを代表するということから、信者はお金を納めることで神に近づこうとするということですね。統一教会はこういう形で信者からの献金を正当化している。
また、『万物復帰』と称して物を売ることも、教義上ではサタンに奪われた万物を神に復帰するという形で、信者のあいだでは正当化されています。 物を売って、貨幣を復帰すればするほど、この世界に対するサタンの支配力が弱くなる。そして、集めた貨幣を神と父母のもとに届ければ届けるほど、強い信仰の証しとなるということです」(仲正氏)
仲正氏は、旧・統一教会にとって日本が特別な国と位置づけられていることも理解する必要があると言う。
「統一教会が布教を進めていた国単位で見ると、日本に対して献金要求は大きかったです。私の知る限り、他の国でも万物復帰(献金)はやっていたけど、そこまでの要求はなくて、各国での活動を自前で支えられる程度のものがあれば十分でした。
なぜ日本だけ献金の要求が多いのか。その理由は『原理講論』(教祖の高弟が書いた統一原理の解説書)にも書かれています。なぜ日本に要求が多いかというと、日本が教義上、韓国をはじめ他国と比べて『罪深い国』だったからです。
第二次世界大戦後の世界情勢は、サタン側と神側に分けられ、サタン側は北朝鮮、中国、ソ連、神側は韓国、日本、アメリカというふうに位置づけされた。なぜ神側にいる日本に重荷を課せられるかというと、神側のなかでも韓国はアダム国家、日本はエバ国家という位置づけになる。エバは幼いころのアダムを育てる義務があるということで、つまり国と国の関係にすれば日本が韓国を助ける立場にあるということなんです。
加えて、日本には過去の韓国の植民地支配という負債があった。『こんなに罪深い日本が、それでも神によって神側のエバ国家として選ばれた』ということの意味を、日本は背負わなければいけない。その負債を返すには、重い責任を背負わなければならず、他国と比べて多額の献金を要求されると。このことによってエバ国家としての責任を果たせるという説明をしています」(同前)
なぜ多くの日本人信者が、それに応じたのだろうか。
「私がいた当時は、韓国の統一教会幹部のなかにも流暢に日本語を話せる人が多かったんです。そのことも『本来罪深い日本人が、神側のアダム国家に認められている』ことの印となって、日本人の会員に『負債の返還をしよう』という気持ちを起こさせたのではないかと思う。『おまえたちに期待している』というメッセージも、日本語で伝えられるとやる気が出るんです」(同前)
7/22(金) 13:07配信
旧統一教会の声明に反論する山口広弁護士(2022年7月19日、弁護士ドットコムニュース撮影)
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が7月17日、ホームページで公開した声明文には、全国霊感商法対策弁護士連絡会(以下、連絡会)への批判が含まれていた。
35年間、この活動を中心で担当し、現在代表世話人の山口広弁護士が19日、取材に応じ、教会側の主張に改めて反論するとともに、「脱会」の難しさを語った。
「『被害』じゃないというのは彼らの常套句」 ーー教会側は声明で、「連絡会所属弁護士が中心となってまとめた日弁連の『実態調査集計結果』等は、弁護士や消費生活センターに相談のあった当法人にまつわる案件全てを『被害』と断定しており、その集計内容は不正確であり、水増しされています」と指摘しています。
まず、実態調査集計結果は連絡会で集計したもので、日弁連ではありません。先祖供養のためになどと不安をあおられ、給料の何倍ものお金を仕方なく出してしまった。
涙を流して訴えてくる。そのような相談を「被害」として集計しました。少なくとも、困っている人が、今考えても納得できないという被害です。
一度は納得したのに気が変わって返還を求めるのは「被害」じゃないというのは、彼らが必ず使う常套句です。 私たちは本人や家族から「数百万、数千万出してしまった。何とかなりませんか」と相談を受ける。時間がたっていたり、証拠がそろわなかったり、事情によって訴訟にできないものも含まれます
。 ●「コンプライアンスとは言えない」 ーー教会側は7月11日の会見で、2009年のコンプライアンス宣言以降、トラブルがないと発言したことについて、今回の声明で「それまでのようなトラブルがゼロになったという意味で言ったものではありません」と釈明しつつも、「当法人を相手取った民事訴訟の数は着実に減少してきています」と主張しています。
確かに、時間の経過による証拠の散逸や信者の高齢化等で、訴訟にするのは一時より複雑で難しくなっています。提訴の件数は年10件を超えないこともあります。しかし、彼らの言うことは、コンプライアンスとは程遠い。 コンプライアンスの前提は、これまでの活動を見直して是正することだが、教会側は全く過去のことに開き直って誤解されたなどと繰り返している。 警察からの摘発が相次ぎ30人以上の信者が逮捕、勾留された。2009年には印鑑を売りつけた「新世」という会社による違法な勧誘で、2人の幹部信者に懲役刑判決も出た。その事件摘発の時に発表したのが、いわゆるコンプライアンス宣言です。 「誤解を招くような行為があったので、責任が認められてしまった。今後そういうことがないように気をつけてやりましょう」というもので、コンプライアンスでも何でもない。
●「やめる=地獄に落ちること、脱会は本当に難しい」 ーー教会側は、信者が牧師や改宗業者らによる拉致監禁・脱会強要の人権侵害に遭ってきたと主張し、「12年5ヶ月間監禁された当法人信者が加害者側を提訴した事件で同信者は、東京地裁、高裁、最高裁と全面勝訴し、数千万円もの損害賠償を命ずる判決は連絡会弁護士らの主張を退けました」と説明しています。
確かに2014年に地裁判決が出て、その後最高裁で確定しています。 マインドコントロールされた信者を、家族が家庭に取り戻すのは本当に難しい。よかれと思ってやる家族と、冷静に話し合って、本人も納得して、というプロセスは大変だけど、強制はだめ。入会して活動している本人の気持ちをよく聞いて、対応することが必要です。
信者にとっては、死んだ後の霊界のことが最大の関心事なんです。教えに従って活動し、献金もしてきた。途中でやめるってことは、つまり地獄に落ちるということ。
恐怖がある。理屈ではわかっても、やめた後に病気やけがをすると、やめたせいだと考えてしまう。 脱会できたとしても、その後、対人関係を取り戻すまで苦労します。ある看護師さんは人が話しているだけで「私のことをうわさしている」と考えてしまうと言っていました。
2世の問題も含めて、大きな課題です。
【取材協力弁護士】 山口広(やまぐち・ひろし)弁護士 1986年秋に霊感商法の被害者から相談を受けて以来、宗教トラブル、カルト問題、消費者被害対策に取り組んできた。
全国霊感商法対策弁護士連絡会事務局長、日弁連消費者問題対策委員長の他、日航機墜落事故(御巣鷹山)と中華航空機墜落事故(名古屋)の被害弁護団代理人などを担当。著書に「検証・統一協会=家庭連合」(緑風出版刊)など。近年は高齢者問題や遺産相続問題にも関心を寄せている。
事務所名 :東京共同法律事務所 事務所URL:http://www.tokyokyodo-law.com/
弁護士ドットコムニュース編集部
7/21(木) 7:03配信 現代ビジネス
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事件発生当初は教団名さえ報じられることがなかった「統一教会」(世界平和統一家庭連合)。「合同結婚式」や「霊感商法」で世間から長く問題視されてきた。その被害は今も続いていると元信者や専門家は指摘する。
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【写真】「擁護はできないが、恨みは理解できる」元統一教会信者が会見で明かしたこと
「サタンへの恐怖心」から献金してしまう
Photo by gettyimages
「私自身も、統一教会の『信仰二世』です。母親(70代)が'90年代に入信しました。私も子供の頃から教団施設に連れて行かれ、統一教会の教えが絶対だと思って生きてきた。年代も近く、母親が信者という共通点もあって、山上(徹也)容疑者のことが他人事のように思えないんです。
たしかに山上容疑者は許されないことをしました。しかし、彼の母親は自己破産するほどのおカネを統一教会に搾り取られた『被害者』であり、そんな母親がいる家庭で育てられた山上容疑者もまた『被害者』です。山上容疑者が統一教会によって追い詰められていった背景も調べてほしいと思います」
こう話すのは、世界基督教統一神霊協会('15年に「世界平和統一家庭連合」に改称。本稿では統一教会と記す)元信者のAさん(40代女性)だ。統一教会は、'54年に文鮮明('12年に死去)によって韓国で創設され、「合同結婚式」や「霊感商法」などでたびたび社会問題になってきた。
山上容疑者は、
〈母の入信から億を超える金銭の浪費、家庭崩壊、破産…この経過と共に私の10代は過ぎ去りました。その間の経験は私の一生を歪ませ続けたと言って過言ではありません〉
と綴った手紙を送っていたと報じられた。
事件を受けてフランスの経済紙レゼコーは、「統一教会は欧米ではカルト宗教と認識されている」と報じた。
Aさんは、自身が経験した統一教会の実態を生々しく証言する。
「私の家族の場合、毎月36万円が『献金ノルマ』でした。献金額が営業の成績表のように貼り出されていて、クリアできなかったら翌月に繰り越され、借金のように膨れ上がっていくんです。払えないと親戚や友人に借金をしたり、カードローンを組んだりして払う人もいます。
なぜ教団から離れられないのか
教団は信者の収入や所有不動産など財産を詳細に把握していて、そのすべてを献金させようとする。だから信者は常に金策に追われているような状況でした。
信者は統一教会の外にあるものを、統一教会の中に取り込むことが救いになると信じ込んでいます。それで信者は神様への献身の気持ちと、サタン(悪魔)への恐怖心から献金をしてしまう。『身も心もすべて捧げないと地獄に堕ちる』と信じ込まされているのです」
山上容疑者の母親は、1億円以上も統一教会に献金し(教団は「5000万円を返金」と主張)、'02年に自己破産している。教団側によれば、'09年にいったん統一教会の活動から離れたという。
「統一教会では、献金をしないと在籍を続けることができません。なので、'02年以降も母親が献金を続けていたと見られます。自己破産したにもかかわらず献金を続ける母親の姿を見て、山上容疑者は相当苦しい思いをしたでしょう。
おそらく、'09年に献金を続けられなくなり、教団を離れたのだと思います。それで教団から解放されるかというと、そうではありません。信者は『献金をしないと地獄に堕ちる』とマインドコントロールされているため、教団から離れた後も、『地獄に堕ちる』と思いながら生きている。信仰のせいで家族はバラバラになり、おカネも教団にすべて持っていかれ、おカネがなくなれば教団の人は離れていく。そして『自分は地獄に堕ちる』と思いながら生きていくのです」(Aさん)
山上容疑者の母親もそんな状況に耐えられなかったのか、3年ほど前から再び統一教会と連絡を取るようになり、月に一度の礼拝に参加するようになっていたという。
韓国に行って先祖を供養
統一教会はかつて、先祖の供養になるからと高額の印鑑や壺を売りつける「霊感商法」で社会問題となった。'07年から'10年にかけて全国で相次いで摘発され、当時の会長が「道義的責任」を取って辞任している。
このときが統一教会の被害を根絶させるチャンスだったと、リンク総合法律事務所の紀藤正樹弁護士は言う。紀藤氏は長年、統一教会の被害者救済に取り組んできた。
「各地の教団施設に警察の強制捜査が入り、霊感商法の実行犯が有罪判決を受けました。しかし、警察は統一教会の組織そのものにはメスを入れませんでした。
霊感商法の実態は広く知られるようになりましたが、そこに統一教会がどこまで組織的に関与しているかまでは解明されなかった。カルト教団に自浄作用は期待できません。世間の関心が薄れたら、また元に戻ってしまうのです」
法外な集金は続いている
統一教会の田中富広会長は会見で「'09年以降、信者と献金でトラブルは起こっていない」と述べた。しかし、それは手口がより巧妙になったことを意味すると指摘するのは、統一教会の元教会責任者、Bさんである。
「たしかに強引な霊感商法はできなくなりましたが、法外な献金はまだ行われています。でなければ統一教会は成り立ちません。コロナ前は、韓国の清平にある修錬苑に信者を何度も連れて行き、先祖の供養をするための感謝献金を捧げさせていました」
冒頭のAさんも母親に韓国で行われた「先祖解怨式」に連れて行かれたという。
「統一教会には、病気は先祖の怨みが原因という考え方があります。先祖が地獄で怨念を抱えて苦しんでいるため、あなたが家庭の『氏族メシヤ』(救世主)になって、その怨みを解き、家族を幸せにするよう説かれる。そのための儀式が『先祖解怨式』です。両親の先祖210代まで遡って解怨しないといけません。韓国・清平に行き、一度に7代ずつ解怨する。これは1回あたり70万円と母親から聞きました」
【後編】合同結婚式で韓国に嫁いだ統一教会・日本人妻の「知られざる苦悩」に続く。
「週刊現代」2022年7月23・30日号より
週刊現代(講談社)
7/22(金) 8:46配信 女子SPA!
7月8日、参議院選の街頭演説の最中に銃撃に遭い、命を落とした安倍元首相。銃撃した山上徹也容疑者は母親が「旧統一教会(世界平和統一家庭連合)」に入っており、総額1億円にも上る献金をして2002年に破産。同容疑者は自民党と旧統一教会に関わりがあったとして安倍元首相を殺害しようと思ったと供述しています。
今回の事件のフックにもなっている“宗教の問題”。旧統一教会は世間一般的には新興宗教やカルト宗教と呼ばれています。伝統宗教と新興宗教の違いとは何なのか、カルト宗教に入信した人の脱会の相談に10年以上乗り、自身も浄土真宗親鸞会を脱会した経験をもつ、真宗大谷派玄照寺住職の瓜生崇さんにお話をうかがいました。
現在の呼び方は「新宗教」
まず、伝統宗教と新興宗教の違いとは何なのかを尋ねると、瓜生さんによると、今は『新興宗教』という言葉は極力使わないとのこと。
「今は『新興宗教』ではなく『新宗教』と呼びます。単に新しくできた宗教のことで、伝統宗教も単に古くから続いている宗教のことです。200年近くの歴史のある天理教などは『近代宗教』と呼ぶこともあります。伝統宗教と新宗教の違いは、大まかに言えばそれだけです」(コメントは瓜生崇さん、以下同じ)
全ての新宗教が悪質なわけではない
てっきり新宗教は信者から悪質な手法でお金を巻き上げている宗教だと思い込んでいましたが、それはよくある偏見だといいます。
「新宗教は歴史が浅いので教団の経済基盤が未成熟なところが多く、その分金銭的な負担が比較的重い傾向はたしかにあります。ただ、全部の新宗教がそうであるわけではないし、伝統宗教でもお金を取るところは当然あります」
カルト宗教の定義とは
では、カルト宗教と新宗教の関係はどうなっているのかというと、瓜生さんはカルト宗教の定義を次のように教えてくれました。
「私は自著の中でカルト宗教の定義について以下のように書いています。『カルトとは、ある特定の教義や思想、あるいは人物そのものを熱狂的に崇拝する集団であり、その組織的目的を達成するために、詐欺的な手法を用いて勧誘したり、メンバーやメンバー候補者に対して、過度な同調圧力を加えて人格を変容させたり、精神的肉体的に隷属させたり、経済的に無理な収奪を行うなどをするものをいう』(瓜生崇『なぜ人はカルトに惹かれるのか 脱会支援の現場から』法蔵館、2020)。
カルトの問題は新宗教の問題だとよく勘違いされるのですが、伝統宗教でもカルト的な問題はあるんです。例えばローマ・カトリックで昔から問題になっていて今も解決していないこととして、一部の聖職者が若い男女の信徒に対して性的な虐待を行なっています。また、日本の伝統仏教でも、『○百万円払わないと墓じまいさせない』などということもあるわけです。要求される方はおかしいと思っても、宗教的な権威を盾にやられると怖くてお金を払ってしまう。これって霊感商法に極めて近い行為で、カルトがやっていることとそう変わらないんです。カルトを語るときは、特定の教団がカルトかどうかばかりが問題にされますが、本当の問題はそこでカルト的なことが行われているか否かなのです。
もちろん、オウム真理教や旧統一教会のように、教団そのものがカルトと言えるケースもあるのですが、どちらかと言うと、全体的に問題なさそうな宗教の、一部の限られたところでカルト的な収奪が行われていることも多いのです。この問題は宗教に限らず、カリスマ的な社長のいるブラック企業とか、自己啓発セミナー、マルチ商法やネットワークビジネスがカルト化していくケースもあります」
カルトにハマりやすい人の特徴「人生に真面目」
このようなカルトにのめり込んでしまう人の特徴は、精神的に弱っていたり優柔不断な人が多いのかと思いきや、真逆だと瓜生さんは語ります。
「人生に真面目で、一生懸命何かを考える力があり、『人間はなぜ生きているのだろう』と普通の人がスルーするようなことを掘り下げてしまう人がハマりやすいとは言えます。
また、ハマりやすい年代は2種類の山があって、まずは20歳前後の若者。受験勉強を頑張って無事大学に受かったらその先の目的がなくなってしまう。そんなときに新たな目的としてカルトに入信する。
もうひとつは男性の場合60代くらいで、定年退職したりした人、女性だと50代で子育てが一段落した人。今までは仕事や子育てに一生懸命だった人が何もなくなってしまったとき空虚さを感じて、この先の人生このまま生きて死んでいくのかなと考えたとき、チラシであったりインターネットで見かけたりしてカルトにハマりやすいです」
現代の勧誘はネット上がほとんど
一昔前までは大学のサークルの勧誘に混ざって宗教勧誘をする信者が多かった印象ですが、今は圧倒的にSNSでの勧誘が多いそうです。2000年頃から大学での宗教勧誘が厳しくなり、ちょうどその頃にSNSの流行の原点とも言えるmixiが流行り始めて、今はTwitterやFacebook、珍しいところだとTik Tokなどでも勧誘があると言います。
それに加え、今はマッチングアプリを使う人も多いので、マッチングした相手を勧誘することも。さらにとある宗教系YouTuberは登録者数が19万人もおり、その動画を見て信者になる人もいるそう。宗教系YouTuberは結論を言わず『絶対の幸福になりたい人は私のオンラインセミナーへお越しください』と誘うのだといいます。なんとも現代的なツールを使った誘い方です。
なぜ人はカルトにハマってしまうのか
カルトにハマってしまう理由の一つとして、その宗教に入ると同じ主張の規範の人たちの集団の中にいることになるので非常に居心地が良いのだそう。
「例えば同じ業界の仕事の人と飲み会をすると共通の話題があって、居心地が良いのと基本的には同じで、カルトでは自分を認めて同じ価値観に生きる人の濃密な集団に溶け込むことができる。そうなると辞める気にならなくなってしまうんです。『居場所がなくて孤独だから宗教にハマってしまうんでしょ?』と思う人もいるかもしれませんが、これは非常に短絡的な考えで、社交的で他の分野でも友達がたくさんいる人も入っています。芸能人などはその典型かもしれません」
カルトに入っても抜け出せる人もいる
カルトは一度ハマってしまうと抜け出せないイメージがありますが、そうではないそうです。
「カルトは大量の人が入って大量の人がやめていくモデルなんです。例えばオウム真理教の後継団体としてアレフがありますが、公安調査庁の資料を見ると、アレフなんかはだいたい毎年100人~200人が入信しています。そうなると10年も経つと1500人は増えている計算になりますが、全体の信者数は変わっていないんです。入っていく分だけやめていく人がいるんです。ガンガン入信してガンガンやめていくのがカルトの姿です」
マインドコントロールはありふれた言動
瓜生さん自身、新宗教である浄土真宗親鸞会を脱会しています。脱会のきっかけは何だったのでしょうか。
「話すと長くなるのですが、当時僕は布教のために全国を回っていたんです。でも、途中からインターネットが発展してきて、ネット上の掲示板で教団の批判をする書き込みが増えてきたんです。それで上層部の人から『君は理系でコンピュータにも詳しいから戻ってきてこの批判の書き込みをどうにかしろ』と言われ、布教から戻ってきました。それで、批判の書き込みを削除したりしていたんですが、書き込みを見ていると、その人たちの気持ちがわかるし、ひょっとしてネットの向こう側にいる人たちが正しくて自分が間違っているんじゃないんだろうかという気になってきたんです。それがきっかけで私は親鸞会を脱会しました。
それと、脱会者を防ぐためにマインドコントロールについても調べていたことがありました。マインドコントロールと言うと、オウム真理教のように麻原彰晃の脳波に繋がるとされるヘッドギアをつけたりMDMAを飲ませて幻覚を見せたりするのをイメージするかもしれませんが、実際はそれとは全く違うんです。マインドコントロールの手法はどこにでもあるありふれたもので、相手に親切にするとか。例えば会社に新入社員が入ってきたら辞めないようにみんなで丁寧に教えたりするじゃないですか。この会社は良い会社だと思わせる。そんなふうにして一つの思想や考え方の規範をその人に慣れさせること、社会の中で普通に行われているようなありふれた出来事を、束にして一つの方向に切れ目なく続けていく。緩やかに、自然に、人間を変えてしまう。これがマインドコントロールの正体なんです。だからされている方は気づかないんです」
宗教2世には戻れる場所がない
今回の銃撃事件の山上容疑者は旧統一教会の2世ではないかとされています。最後にこの2世の問題について瓜生さんに2世にはどんな苦しみがあるのかを聞きました。
「やはり親が信者だと戻れる場所がないということです。宗教をやっていると、生活の全てが宗教になるんです。自分の生き方の指針でもあり、哲学でもあり、目的でもあり、あらゆるものが宗教です。お父さん・お母さんの役割をしてくれるのも宗教だし、きょうだいや友達の代わりをしてくれるのも宗教。戻れる場所があれば戻れるけれど、それがカルト宗教の親がいると戻れない。そういうところに宗教2世の苦しみがあると思います」
【瓜生崇(うりゅうたかし)】
1974年東京都生まれ。電気通信大学中退。大学在学中に浄土真宗親鸞会に入会、同講師部にて12年間の活動後、脱会。システムエンジニアを経て、2011年から真宗大谷派玄照寺(滋賀県東近江市)住職。カルトの脱会支援活動に尽力するほか、大学や高校、寺院などでカルト問題啓発のための講演をしている。大阪大学キャンパスライフ健康支援センター招へい教員。真宗大谷派青少幼年センタースタッフ。著書に『なぜ人はカルトに惹かれるのか 脱会支援の現場から』(法蔵館)などがある。
<取材・文/姫野桂>
【姫野桂】
フリーライター。1987年生まれ。著書に『発達障害グレーゾーン』、『私たちは生きづらさを抱えている』、『「生きづらさ」解消ライフハック』がある。Twitter:@himeno_kei
女子SPA!
2022/07/21 ANNnewsCH
旧統一教会と政治との距離に注目が集まるなか、共産党が21日に追及チームを設置。国会で実態を明らかにするとしています。こうしたなか、複数の知事から旧統一教会との関係を認める発言が相次ぎました。政治の場で何が起きているのでしょうか。
共産党・小池晃書記局長:「共産党の国会議員団として旧統一教会問題の追及チームを立ち上げて、今後の国会での論戦も含めてチームでこの問題を取り組んでいきたいということで、きょうはこの会議を開いた」
安倍元総理銃撃事件をきっかけに、旧統一教会と政治家との関係が様々、浮き彫りになってきています。
共産党・小池晃書記局長:「この問題で、やはり我々として重視しなければいけないのは政界に対する工作が大規模に行われてきたという問題です。そういうなかで次々と自民党をはじめとする国会議員の旧統一教会との癒着の実態が明らかになってきています」
旧統一教会に関する著書もある北海道大学大学院の櫻井教授によりますと、教団による政治家への支援は投票だけではないと言います。
北海道大学大学院(宗教社会学)・櫻井義秀教授:「選挙の時に無償で応援してくれるスタッフを出すとか、私設秘書を派遣するであるとか、私が聞いているのは無給で働いてくれる私設秘書。つまり、その人の給与は統一教会あるいは関連団体で持っていると」
ではなぜ、旧統一教会は政治家に近付こうとするのでしょうか。
北海道大学大学院(宗教社会学)・櫻井義秀教授:「霊感商法を含め、あるいは信者に過度な献金を要請して信者の方が経済的に苦境に陥っていることがずっと批判されてきました。統一教会としての活動を国会とか地方議会でも問題視された時に『それは大した問題ではない』『信教の自由による』とか批判を封じるということがあったんじゃないかなと考えている」
旧統一教会の政治への関わりは中央政界だけにとどまりせん。
富山県・新田八朗知事:「ちなみにですが私自身も一昨年の知事選で応援を受けたことは事実です」
旧統一教会の支援を受けていたと明らかにしたのは富山県の新田知事です。
富山県・新田八朗知事:「世界平和統一家庭連合、あるいは世界平和連合、あるいは平和大使協議会。いくつかの関係の方々とお会いした。集会にお招き頂いてお話をさせて頂いたということ。そういった場を作って頂けることは当時の私の立場にとってはありがたいこと」
新田知事は、選挙が終わってからは特に関わりはないと説明しています。
福井県の杉本達治知事は3年前、愛知県で開かれた旧統一会の関連イベントに祝電を送っていたことを認めました。
福井県・杉本達治知事:「3年前に確かにそのようなことの話があって、祝電を打たせて頂いたかなということはうっすらですが覚えております。ただ趣旨は、その時は世界平和とか他の自治体の首長も含めて賛同されて、その趣旨に賛同しているというような話もあったので」
そのイベントの半年前に杉本知事は知事選で初当選しています。
福井県・杉本達治知事:「基本的に私が宗教団体に対して直接そこの宗教性というか、団体の応援をすることはありません」
立憲民主党は旧統一教会の献金や勧誘手法について取り上げていく方針です。
立憲民主党・西村智奈美幹事長:「旧統一教会による被害等を調査、検証し、対策を立案するべく旧統一教会被害対策本部を立ち上げる」「(Q.旧統一教会と政界との関係の解明や追及は?)旧統一教会による被害、これを主眼として調査、検証といったことをやっていきたいと考えている」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
7/22(金) 10:37配信 ABEMA TIMES
元統一教会信者で金沢大学の仲正昌樹教授
東京大学入学とほぼ同時に旧統一教会に入信。約11年半後に脱会した金沢大学の仲正昌樹教授が、安倍元総理の銃撃事件や旧統一教会について語った。
【映像】元信者が明かす旧統一教会と“縁が深い”政治家
「長いこと統一教会にいた人間からすると、なんで安倍さんなのかと思いました。安倍さんと統一教会は岸信介さんの時代からの付き合いはあったと思いますが、教会側の認識としてはそれほど距離の近い人ではなかったので正直、私も驚きました」
そう話すのは、元統一教会信者で金沢大学の仲正昌樹教授。1981年に東京大学に入学して、駒場寮で「原理研究会」に勧誘されたのをきっかけに「世界平和統一家庭連合(=旧統一教会)」に入信。約11年半の活動を経て自らの意思で脱会した。
東大入学時に旧統一教会とは知らずに原理研究会からの勧誘で入信した仲正教授。当時は駒場寮に入寮していて、その周辺を散歩していた時に“宗教と科学に関する”アンケートを依頼されたのが入信のきっかけだという。当時について、仲正教授はこう振り返る。
「アンケートの後に『宗教と科学の統一に関する研究会をやっていて、そこで新しい宗教と科学を統一する理論があるんですが聞いてみたくないですか』と言われて、興味があったので付いて行きました。その方から一対一で、統一教会の触りの部分の講義を受けて、その後にもいろいろ話を聞いてくれたのもあって割と打ち解けて、2回3回と通うようになりました」
約11年半もの間、活動していた仲正教授。旧統一教会と特に“縁が深い政治家”はいたのだろうか。
「間違いなく清和会(清和政策研究会)です。統一教会が中心になって作った国際勝共連合があるのですが、日本で設立するにあたって岸信介さんと(日本財団創立者の)笹川良一さんがかなり協力されたと。あの当時、岸さんは韓国との政権関係もお互いに反共ということで良好で、付き合う上では支障はなかったと思います。ただ、清和会の方々は内部の人からすると、新党とか天皇を大事にする思想の人たちとみられ、自分たちのように韓国人をメシアだと言っている宗教団体とは根底のところでは合わないといった認識を持っていました。教会の中に長くいる人はそういう印象を持っているのではないかと思います」
今回の事件を受けて、ネット上では宗教法人に対する課税や規制に関する議論も始まっている。この規制について、仲正教授は次のように見解を述べた。
「メディアでよく言われているのは献金額に対する規制ですが、献金額でいうと統一教会に対してはいいと思います。例えば、お金持ちの方が由緒伝統ある神社や寺に高額な寄付をしたい時にも引っかかってしまう可能性があります。もし、直接な寄付がダメだとしたら統一教会ではまさにやっていますけど、例えば投資のような形でお金を出させるとか、もぐってしまうような形になる可能性が高いと思います。額ではなくて、山上容疑者の件から考えると、扶養家族がいる人が財産を全額寄付できない、取り返しができるような仕組みを作っておいた方がいいと思います」
安倍元総理の銃撃事件で逮捕された山上容疑者は、動機について自身の母親が破産してもなお旧統一教会に対して献金をしていたなどと供述していた。この件に、ニュース番組『ABEMAヒルズ』に出演している経済学者でイェール大学助教授・成田悠輔氏は「この問題はいろいろ絡み合って混乱する」と持論を展開した。
「いくつか挙げてみる範囲でも、そもそも統一教会という組織が行なっている活動自体が倫理的に問題があるのではといった問題。それから、その組織と例えば自民党のような政治的な組織がかなり近い関係にあって、政治と宗教の密着が起きているのではという問題。今回の山上容疑者が統一教会の問題と自民党との関係を自分の事件の犯行動機として当てたので、かなり異質なものが組み合わさってすごく難しい問題になっていると思う。
最初の二つの問題については、今多くの方が取り組まれているようにメスを入れることが大事だと思う。ただ、一つ重要だと思うのは、今回の犯行動機を大きな組織や政治と宗教の話に短絡的に結びつけない方がいいと思う」
(『ABEMAヒルズ』より)
2022/07/21 日テレNEWS
安倍元首相銃撃事件で浮き彫りになったのが、宗教団体「世界平和統一家庭連合」いわゆる“統一教会”と政治家の関係性です。
教団側は“組織的に特定の政党や政治家を支援することはない”と主張します。しかし、自民党・無派閥の青山繁晴参議院議員は、ある派閥の長から今回の参院選での“教団の票の割り振り”について聞いたと証言します。
一方、教団側は「news zero」の取材に対し、“教団の票の割り振り”について「事実ではない。教団は『政治関与はしない』という基本的なスタンスでやっている」とし、さらに、個別の政党や候補者への“組織的な応援”についても改めて否定しました。
しかし、元信者でジャーナリストの多田文明氏は、「教団による組織的な応援がある」と断言しました。約10年間、入信していたといいますが、当時、教団が支持する人物に票を入れたといいます。教団が政治家と関わる理由について、「最終的に一番いいのは統一教会の議員をたくさん作って 、日本の政治を動かしていくことが最終目的」としました。
(2022年7月20日放送「news zero 」より)
ANNnewsCH
安倍元総理の銃撃事件を発端に注目が集まる旧統一教会。政治家と教団の“距離”の近さについて、現役の自民党議員が取材に応じました。
事件が浮き彫りにしたのは、政治と旧統一教会のかかわりです。
自民党の現職議員が、「参院選前に聞いた」という話です。
自民党・青山繁晴参院議員:「非常に信頼している良心的な議員から話があった。『自身が所属する派閥の長から現状では今回の参院選で当選圏内に届かない恐れがあるから旧統一教会の票を割り振りたいという話があり、それを断った』と。その方の派閥の領袖(りょうしゅう)は『自分が断った分の票を他の議員に割り振ったようだ』と」
今回の参院選で再選した青山繁晴議員は、この“派閥の長”に事実を確認したといいます。
自民党・青山繁晴参院議員:「『旧統一教会の丸抱えで当選させようとしているのではなく、業界団体が抱えている票自体が減っているからそれだけでは当選できない』と」
自民党の候補者が旧統一教会の支援を受けることをどう考えているのでしょうか。
自民党・青山繁晴参院議員:「旧統一教会については、支援しているということが伏せられている。宗教でなくてもどこかの団体の支援を受けて、それがかなりの票なのに有権者が知らないというのはおかしい。伏せられている理由の中に被害者や訴訟の存在があるんだったら余計に大問題」
旧統一教会は取材に対し、「政治に関する取り組みは“友好団体”が行っているようだが、私どもから回答すべきではない」と答えています。
自民党の全国比例候補で出馬した井上義行氏は、当選後こう話しました。
自民党・井上義行氏:「私がご支援頂いたのは世界平和連合。6つの国づくりの政策について賛同を得たということで、賛同会員ということになっておりますし」
「世界平和連合」は、旧統一教会の創始者、故・文鮮明(ムン・ソンミョン)氏が総裁を務めていた団体です。
より広く「政治と宗教」の関わりについて問われた公明党の山口代表は…。
公明党・山口那津男代表:「(Q.政治と宗教どういった関わりが適切か)そこは様々な報道もあるし、また事件としての捜査も進展中でありますので、コメントは控えたいと思います。今後状況をしっかり見極めたいと思っております」
旧統一教会との関係が指摘されているのは自民党だけではありません。
日本維新の会・吉村洋文副代表:「日本維新の会の議員の中にも、旧統一教会のイベントに参加したりしている議員もいると報道されていますので、どういった経緯で、どういう関係で、それがどういうものなのか、しっかり説明するべきだと思います」
国民民主党の玉木代表は、旧統一教会と関係が深いとされる「世界日報」の元社長から献金を受けていたことを明らかにしました。
国民民主党・玉木雄一郎代表:「2016年に世界日報の元社長から2万円と1万円の寄付を私が受けていたということ。これを調べましたら事実です。公開もされているので何らやましいところはないので、今のところは返還は考えておりません」
共産党は、旧統一教会問題追及チームを21日に立ち上げる方針です。
共産党・小池晃書記局長:「自民党など多くの議員が関連団体の集会に参加したり、メッセージを送ったりしてきたことが明らかになっています。自民党と(旧)統一教会の癒着。さらに(旧)統一教会による政界工作。この全容解明をすることが必要であると考えます」
社民党の福島党首は、自民党の政策への影響を検証すべきだとしています。
社民党・福島瑞穂党首:「持ちつ持たれつというか、(旧統一教会が)秘書や色々な形で(自民党議員に)派遣していたと言われております。まさに自民党の政策が、もっと言うと国会の政策が極めてゆがめられていたのではないか。徹底的な検証が必要だと思っています」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
公開日:2022/07/19 13:50 更新日:2022/07/19 16:14
旧統一教会に関係する個人や団体から、関連政治団体が献金を受け取っていた国会議員(左上から下村博文氏、石破茂氏、細野豪志氏、玉木雄一郎氏)/(C)日刊ゲンダイ
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安倍元首相の暗殺事件を機に、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と自民党の“親密”関係がクローズアップされている。
日刊ゲンダイが18日付で、ジャーナリスト・鈴木エイト氏の調査に基づく、教団と関係のある国会議員リストを報じたところ、話題沸騰。改めて100人超のリストから、過去に教団側とカネのやりとりがあった議員をピックアップする。
旧統一教会に関係する個人や団体から、関連政治団体が献金を受け取っていた国会議員は<別表>の計5人。
特に下村博文元文科相の場合、代表を務める政党支部が「授受」の双方に関わっていた。
12年には旧統一教会の関連団体「世界女性平和連合」に会費として1万5000円を支出。逆に16年は教団の機関紙を発行する「世界日報社」から6万円の献金を受け取った。
下村氏本人は13、14年に世界日報のインタビュー記事に登場していた。
自民党の閣僚級では萩生田光一経産相、井上信治前万博担当相、加藤勝信前官房長官が、ほかにも小田原潔氏、大岡敏孝氏、高木啓氏、高鳥修一氏、奥野信亮氏の各衆院議員と上野通子氏
参院議員が、それぞれ関連する政治団体から「会費」などの名目で旧統一協会の関連団体に1万~5万円を支出。
立憲民主党の松木謙公衆院議員の関連政治団体も13年に世界女性平和連合に会費1万5000円を支払っていた。
国会議員と旧統一教会とのカネのやりとりに、どんな意図があるのか。鈴木エイト氏に聞いた。
「金額の多寡はそこまで大きくないかもしれませんが、統一教会としては、多くの国会議員と金銭上の関係があることのメリットは大きい。信者が献金ノルマや教団の社会的な評判に疑問を抱いたとしても『国会議員の先生とつながりがあるのだから信用できる』と思わせることができます。国会議員側は、会費名目などのお金を支払っておくことで団体への信用を与える見返りに選挙の際に運動員を派遣してもらえる可能性もあります。資金のやりとりは双方共にメリットがあるのです」
政権を担う自民党が反社会的な特定の宗教団体と“ウィンウィン”の関係なら、世も末だ。
公開日:2022/07/22 06:00 有田芳生氏(C)日刊ゲンダイ
参院議員の有田芳生氏が21日、自身のツイッターを更新し、《安倍晋三元総理暗殺事件をきっかけに浮上した統一教会。私がテレビに出演すると、統一教会はかつてのように各局に執拗な抗議をしています。さきほど出演した「ミヤネ屋」に対してもしかり。》と投稿した。
有田氏は、旧統一教会の問題がクローズアップされてから、連日のようにテレビ番組に出演していたが、18日のテレビ朝日系「モーニングショー」に出演後に一変。
番組では、1995年の地下鉄サリン事件の後、「オウム真理教の次は旧統一教会の摘発を視野に入れている」と話していた警察が、その後動きがなかったので、10年後に改めて聞いてみると「政治の力」と言われたというエピソードを暴露していた。
公開日:2019/09/17 14:50
日本会議系12人、統一教会系も12人(C)共同通信社
11日発足の第4次安倍再改造内閣は、党4役を含めると日本会議国会議員懇談会の幹部が12人もいる極右内閣。
ところが実は、霊感商法問題で知られる宗教団体「統一教会」(現・世界平和統一家庭連合)がらみの大臣と党4役も計12人いる。
安倍晋三首相自身、官房長官時代に統一教会の大規模イベントに祝電を送り、首相就任後も教団幹部を官邸に招待するなどしてきた。
菅義偉官房長官、麻生太郎財務相、高市早苗総務相、加藤勝信厚労相、下村博文選対委員長も、統一教会と関わりが深い。
さらに今回、初入閣13人の中にも6人もの“統一教会系大臣”がいる。統一教会問題に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏の解説。
「萩生田光一文科相は、2014年に都内での統一教会系イベントで来賓として挨拶に立っています。17年に統一教会系団体がワシントンで開いた日米韓の国会議員会議やニューヨークで教団が開催した大規模フェスティバルに参加していたのが武田良太国家公安委員長や竹本直一IT政策担当相、山本朋広防衛副大臣です」
前川喜平・元文科次官が明かす「統一教会」名称変更の裏側【前編】「文化庁では教団の解散が議論されていた」
7/22(金) 9:06配信
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日刊ゲンダイDIGITAL
〈1997年に僕が文化庁宗務課長だったとき、統一教会が名称変更を求めて来た。実体が変わらないのに、名称を変えることはできない、と言って断った〉
【写真】旧統一教会と「関係アリ」国会議員リスト入手! 歴代政権の重要ポスト経験者が34人も
文部科学省の事務次官だった前川喜平氏が2020年12月にツイートした冒頭の書き込みが、にわかに注目を集めている。霊感商法や合同結婚式などによる被害が明るみとなり、80~90年代に大きな社会問題となった旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)は、名称変更で実態をゴマカし、組織維持を画策。所轄庁の文化庁は突っぱね続けていたが、第2次安倍政権下の15年8月に認証した。一連の動きの背景で何が起きていたのか。97年7月から1年間、文化庁文化部宗務課長も務めた前川氏に改めて聞く。
◇ ◇ ◇
宗教法人と文化庁の関係は「監督庁」ではなく、「所轄庁」。憲法が保障する「信教の自由」に関わる業務なので、権力的な関与は行わないという建前があるためです。「認証」は事実を認定する行為を指し、「許可」や「認可」とは性質が異なります。宗教法人法は原則、要件を満たした宗教団体にはすべて法人格を与えるとの考え方に立っている。ですから、宗教団体であるという事実を確認する作業が認証なのです。
僕が文部省の外局である文化庁の宗務課長に異動した97年、旧統一教会が「世界基督教統一神霊協会」から「世界平和統一家庭連合」に名称を変更したいと認証を求めてきた。「事前相談」があったのです。
■「組織の実態が変わっていなければ、規則変更は認証できない」
手続き上の説明をすると、認証の対象は宗教法人の規則です。社団法人などで言えば、定款にあたるもの。宗教法人の規則の中に必ず名称を記さなければならず、名称変更にあたっては規則を改めて認証する必要があるのです。宗務課がどう対応したかは、ツイートした通り。組織の実態が変わっていなければ、規則変更は認証できない。そう判断し、申請を受理しなかったのです。申請を受けて却下したわけではありません。水際で対処したのです。
教団側が名称変更を求めた理由は、「世界基督教統一神霊協会」とは名乗っておらず、「世界平和統一家庭連合」として活動しているから、ということでした。
ーー旧統一教会は教祖の故・文鮮明が54年に韓国ソウルで創設。間もなく日本でも布教が始まり、64年に東京都知事が宗教法人として認証した。97年以降、世界各地で家庭連合を正式名称としている。
ですが、霊感商法で多くの被害者を出し、損害賠償請求を認める判決も出ていた。青春を返せ裁判などもあった。「世界基督教統一神霊協会」として係争中の裁判もあり、社会的にもその名前で認知され、その名前で活動してきた実態があるのに、手前勝手に名称を変えるわけにはいかない。問題のある宗教法人の名称変更を認めれば、社会的な批判を浴びかねないという意識はありました。
オウム事件後の宗教法人法改正で慎重対処に転換した矢先だった
旧統一教会の教団による7月11日の会見は大手マスコミ以外を排除(C)日刊ゲンダイ
1997年7月から1年間、文部省の外局である文化庁で文化部宗務課長を務めたのはある事情がありました。96年9月に施行された改正宗教法人法の初期運用にあたるためです。
法改正はオウム真理教による一連の事件を受けた動きで、当時の与謝野馨文部大臣の政治主導だった。「宗教法人が前代未聞のテロを起こしたのは、宗教法人法が甘すぎるからではないのか」との問題意識から、「宗教界をすべて敵に回す」と尻込みする役人を抑えて決断したのです。実際、宗教界はこぞって大反対でした。
法改正のポイントは大きく2点。全国的に活動する宗教法人の所轄庁を文部大臣とし、文化庁が実務を担う。それまでは宗教法人が本部を置く所在地の都道府県知事が所轄庁でした。オウム真理教は登記上、東京都江東区に本部を置いていたため、当時の所轄庁は東京都知事だったのです。広大な教団施設があった山梨県の上九一色村(現・南都留郡富士河口湖町)を調べることは現実的に困難で、その権限もなかった。これによって、文部大臣の所轄する宗教法人がドッと増えました。
もうひとつのポイントは、年1回の書類提出。役員名簿、財産目録、収支計算書などを出してもらいます。宗教法人として活動している事実を確認するためです。
宗教法人の認証は従来、性善説で行われてきた。教義、礼拝施設、30人程度の信者が確認できれば法人格を与えてきました。法改正以前は、宗教法人となった後の教団は糸が切れたタコ状態。どこで何をしているのかサッパリ分からなかった。
もっとも、文化庁が特別な監視機能を持つようになったわけでもなく、テロ組織など危険分子を見分けるのは容易ではない。ですが、宗教法人をより注意深くチェックして慎重に対処し、怪しい教団を認証しない考え方へ大きく変化しました。そうした中、名称変更の認証を求めてきたのが統一教会(現・世界平和統一家庭連合)だったのです。
「公共の福祉の侵害」や「宗教法人の目的逸脱」などの規定を適用できないか
教祖が信者をマッチングする合同結婚式は現在も行われている(C)ロイター
オウム真理教による一連の事件を受け、1996年9月に改正宗教法人法が施行されました。僕が98年7月まで在任していた文化庁文化部宗務課でも、所轄する統一教会(現・世界平和統一家庭連合)について議論になりました。公序良俗に反する宗教法人を解散させることはできないものかと。
オウムに対しては、当時の所轄庁だった東京都知事らが東京地裁に解散命令を請求。地裁の決定により、96年1月に解散命令が出されました。
宗教法人法第81条に基づく請求でした。
宗教法人法は第81条で解散の事由をこう規定している。
▼法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと。
▼第二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと又は一年以上にわたつてその目的のための行為をしないこと。
ーーオウムは法令違反、公共の福祉の侵害、宗教団体の目的逸脱が認定された。
統一教会の霊感商法や合同結婚式はかつて大きな社会問題になりました。法外な寄付、法外な価格の物品購入、法外な労働奉仕は過度の自己犠牲ですし、見ず知らずの人との結婚は理性や自由意思があれば選択するはずのない行動です。統一教会にも公共の福祉の侵害や宗教法人の目的逸脱などの規定を適用できないものか。信者が引き起こした刑事事件はいくつもあり、教団側が敗訴した民事裁判もたくさんある。内部で検討はしたものの、当時は厳しいとの結論に至りました。
こうした経緯からも、統一教会が求める名称変更を文化庁が認証したのは、方針の大転換だったのです。20年近く押し返してきたわけですから。第2次安倍政権下の2015年8月のことで、僕は事務次官に次ぐ文科審議官のポストに就いていました。(後編につづく)
(前川喜平/元文部科学事務次官)