<内容紹介>
アメリカ・ヨーロッパ・中東・インドなど世界で戦うビジネスパーソンには、現地の人々と正しくコミュニケーションするための教養が欠かせない。
そして、哲学・歴史・美術・音楽・語学…これら教養の土台となっているのが実は宗教だ。世界94カ国で活躍してきた元外交官が教えるビジネスで使える5大宗教の基礎知識。
日本人の「宗教偏差値」が世界最低レベルになった3つの理由
山中俊之:著述家/芸術文化観光専門職大学教授
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キャリア・スキル
ビジネスエリートの必須教養 世界5大宗教入門
2019.8.30 3:25
●食事のルールがとても厳格な「ユダヤ教」
●アメリカは世界有数の「キリスト教」的な国家
●「イスラム教」は異教徒に寛容な歴史を持つ
●「ヒンドゥー教」と「仏教」は兄弟のような宗教
●外国人に「神道」を説明するには?
【本書が重視する宗教を最短で学ぶための5つのポイント】
──世界のビジネス現場の共通言語「5大宗教」をわかりやすく解説!
1 世界5大宗教の歴史の概略
2 教義の中核、重要な戒律や儀礼、根拠になる聖典
3 知らないと危険な〝地雷〟や〝NG〟
4 知っているとプラスになる話題
5 宗教が現代人や社会に与えている影響
【本書の内容】
第1章 日本のビジネスパーソンだけが知らない! 宗教の基礎知識
・日本人の「宗教偏差値」は世界最低レベル
・グローバルエリートが宗教を学ぶ理由
・世界5大宗教の基礎の基礎とは
・重要なポイントを学び、多角的に考える
第2章 ユダヤ教
──少人数ながら国際政治経済への多大の影響を持つ
・「宗教国家アメリカ」はビジネスパーソンの必須科目
・ユダヤ教はいつ、どのように生まれたのか
・ユダヤ二〇〇〇年の離散の歴史
・英語に強くなる聖書の言葉〈旧約聖書編〉
・なぜユダヤ人には成功者が多いのか
第3章 キリスト教
──世界のルールをつくった「西洋文化のルーツ」
・「教養の基礎」としてキリスト教は必須科目
・キリスト教はいつ、どのように生まれたのか
・東方正教会とローマ・カトリックの基礎
・「西洋文化」のルーツはキリスト教にある
・英語に強くなる聖書の言葉〈新約聖書編〉
・こんなに違う!ローマ・カトリックとプロテスタント
・キリスト教徒のワーク・ライフ・バランスとは
第4章 イスラーム教
──日本人に誤解されがちだが実は「人にやさしい宗教」
・21世紀の〝メジャーな宗教〟はイスラム教
・イスラム教はどのように生まれ、今にいたるのか
・本当はやさしいイスラム教
・「スンナ派」と「シーア派」の基礎知識
・イスラムにはなぜ紛争が多いのか
・ビジネスにすぐに役立つイスラムのしきたり
・もし、イスラム教徒と仕事をするなら
・相手を理解することが最強の武器となる
・イスラムのリアル
第5章 ヒンドゥー教・仏教
──日本文化に強い影響がある兄弟のような宗教を一緒に学ぶ
・IT大国インドの根源は宗教にあった!
・ヒンドゥー教はどのように生まれ、今にいたるのか
・ヒンドゥー教と仏教の深い関係
・覚えておきたいヒンドゥー教の教え
・知っておきたいカースト制度のリアル
・仏教はどのように生まれ、今にいたるのか
・上座部仏教と大乗仏教の違いとは
・現代の上座部仏教はどのようなものか
・様々な仏像
・仏教をネタに「教養ある雑談力」を身につける
第6章 日本の宗教
── 「自国の宗教観」を語れてこそ、一流のビジネスパーソン
・宗教についての「偏見」をリセットする
・日本の仏教はどのように広がったのか
・日本の仏教はなぜ「現実的」なのか
・神道の説明は日本のビジネスパーソンのマスト
・日本における世界5大宗教の分布
第7章 科学・政治経済と宗教
── AI、生命化学、国際紛争、社会問題を読み解く
・二一世紀、「神と人との距離」は縮まるのか
・AIと「神の領域」の問題
・宗教は少子高齢化を食い止めるのか
・宗教は多様性を認めるのか
・世界の未来図を宗教から読み解く
アメリカ・ヨーロッパ・中東・インドなど世界で活躍するビジネスパーソンには、現地の人々と正しくコミュニケーションするための「宗教の知識」が必要だ。しかし、日本人ビジネスパーソンが十分な宗教の知識を持っているとは言えず、自分では知らないうちに失敗を重ねていることも多いという。本連載では、世界94カ国で学んだ元外交官・山中俊之氏による著書、『ビジネスエリートの必須教養 世界5大宗教入門』(ダイヤモンド社)の内容から、ビジネスパーソンが世界で戦うために欠かせない宗教の知識をお伝えしていく。
著者について
山中俊之(やまなか・としゆき)
元外交官。株式会社グローバルダイナミクス代表取締役社長、神戸情報大学院大学教授。
1968年兵庫県西宮市生まれ。東京大学法学部卒業後、1990年外務省入省。
エジプト、イギリス、サウジアラビアへ赴任。対中東外交、地球環境問題などを担当する。エジプトでは、カイロのイスラム教徒の家庭に2年間下宿し、現地の生活を実際に体験。
イスラエルでは、ヘブライ大学のサマースクールにて、寮でユダヤ人と同じ部屋で暮らす。イギリスでは、キリスト教の教会にボランティアとして通う。
また、首相通訳(アラビア語)や国連総会を経験。外務省を退職し、2000年、株式会社日本総合研究所入社。2009年、稲盛和夫氏よりイナモリフェローに選出され、アメリカ・CSIS(戦略国際問題研究所)にてグローバルリーダーシップの研鑽を積む。2010年、グローバルダイナミクスを設立。研修やコンサルティングを通じて、激変する国際情勢を読み解きながら戦略立案ができる経営者・リーダーの育成に従事。「宗教とビジネス・最先端科学」に関連するセミナー・研修も多数開催。
2011年、大阪市特別顧問に就任し、橋下徹市長の改革を支援。SDGsカードゲームファシリテーターとしてSDGsの普及にも努める。2019年現在、世界94カ国を訪問し、先端企業から貧民街まで徹底視察。ケンブリッジ大学大学院修士(開発学)。高野山大学大学院修士(仏教思想・比較宗教学)。ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA、大阪大学大学院国際公共政策博士。テレビ朝日系列「ビートたけしのTVタックル」、朝日放送テレビ「キャスト」にも出演。
日本人の「宗教偏差値」が世界最低レベルになった3つの理由
日本の宗教偏差値が低い三つの理由
もしも「世界宗教偏差値」があるとしたら、日本はおそらく世界最低レベルです。理由はいろいろありますが、私は次の三つの影響が大きいと考えています。
1 地理的な理由
世界5大宗教のうち、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の三つは発祥が中東ですが、中東で生まれた宗教が伝わるには、日本は距離があります。残る二つのうちヒンドゥー教と仏教はインドで生まれ、日本には中国経由で仏教のみ伝わりました。
また、島国でもあるので、世界の宗教を信じる他民族と本格的な戦争もあまりありませんでした。日本的な宗教観・価値観でぬくぬくとやってこられたのです。
2 神道がもともとあり、その上に仏教を受け入れた
仏教が日本に伝来したのは六世紀半ばですが、当時の日本にはすでに神道が存在しました(もっとも、この時代には神道という言葉は使われておらず日本古来の民族宗教と言ったほうがより正確です)。
この神道というのは自然崇拝がベースになっています。「空にも海にも山にも川にも、自然界のすべてに神様がいる」という考えですから、キリストやムハンマドやお釈迦様のような開祖もいなければ、聖書やコーランのように、教えを系統化したものもありません。
宗教とはっきり意識しないまま、八百万(やおよろず)の神様を信じ、神様を信じたまま仏教を受け入れたのですから、曖昧になるのもうなずけます(世界でも自然信仰をしている上に新たな宗教を受け入れたところは多数ありますが、もともとの宗教は多くの場合現存していません)。
このような曖昧な宗教観の上には、難しい教義や厳しい戒律はなじみにくいと考えられます。
3 江戸時代の檀家制度と明治以降の国家神道
一六~一七世紀になるとキリスト教が世界的な布教活動を展開しましたが、日本では豊臣秀吉や徳川家康により禁教とされ、全国民が仏教徒としてどこかのお寺に属すること(檀家と言います)になりました。
この檀家制度は、寺を幕府や藩の下部的な行政組織として位置づけるものであり、仏教本来の宗教的側面は失われてしまいました。寺は、檀家である住民を管理・監視して、後は葬式だけをしていれば良いということになったのです。
明治時代には、その仏教も一時期弾圧され、天皇を神のように崇める「国家神道」となりました。人間である天皇を神とするという考え方は、世界の他の宗教とはまったく異質のものです。
第二次世界大戦終了後、それが全否定される一方、一部の新興宗教の犯罪や不祥事に関する報道により「宗教には近づかないほうが良い」という意識が高まりました。こうして、宗教偏差値が最低レベルの国となってしまったのです。
日本への外国人観光客の数は急増中で、二〇一八年には、初めて三〇〇〇万人を超えました。従来型の東京の都心や富士山、京都の有名社寺といった観光地に加え、高野山、日光、平泉などにも多くの外国人が訪れています。
外国人観光客の日本の宗教への関心が高まっていることは確実であり、外国人観光客に日本の宗教について話ができるようになれば、人間関係の構築も進み、宗教偏差値も上がることでしょう。
もしも中国人に「スシの握り方」を習ったら?
日本、韓国、ベトナムなど東アジアの国々は中国の影響を強く受けています。宗教にしてもそれは同じ。つまり日本に入ってきた仏教は、「中華味の仏教」なのです。
あなたも海外旅行に行った際、外国人がつくる日本料理を食べて「ん? なんか違う」と感じたことがあるでしょう。それはたいてい現地に住んでいるアジア人が経営する店だからです。
もしも欧米人が、現地で日本料理店を経営する中国人に「スシの握り方」を習ったとしたら、それは本来の寿司とは、かなり違うものになるはずです。
これと同じく中国の仏教は、インド発祥のもともとの仏教とは異なります。インドで生まれた初期仏教から枝分かれした大乗仏教が主に東アジアに広がったのですが、中国にきた時点で、孔子を祖とする儒教や、古代からある民間信仰に道家の思想を合わせた道教が混ざり合ったものになりました。中華味の仏教の誕生です。
中華味の仏教が日本にやってきて、もとからあった神道と混じり合ってできたのが日本の仏教ですから、本来の仏教とはいろいろと違っています。
たとえば、インドで仏教が生まれた頃、仏教の開創者であり悟りを開いた後は釈尊と呼ばれるガウタマ・シッダールタは、「男女を差別してはならない」と説いていました。
ところが中国に渡ると儒教の影響を受け、仏教は女性差別的なものになります。ゆえに日本に伝わった仏教の教えのなかには「女性の場合、男性に生まれ変わらないと成仏できない」と考える、変成男子という言葉があるのです。
また、中国では儒教の影響のため、仏教がより国家や皇帝の権威に近い位置づけになりました。
つけ加えておくと、伝来の過程で宗教が変化していく現象は、仏教に限った話ではありません。たとえば、中東のイスラム教と東南アジアのイスラム教とでは戒律の厳しさなどが違います。アラビア半島発祥のイスラム教が伝来する過程で、東南アジアでは現地の文化や宗教と融合していき、中東のような厳格さが失われた面があります。
東アジアを一歩出たら「宗教の知識」が特に必要
かつて毛沢東はダライ・ラマに対し「宗教は毒だ。宗教は二つの欠点を持っている。まずそれは民族を次第に衰えさせる。第二に、それは国家の進歩を妨げる。チベットとモンゴルは宗教によって毒されてきたのだ」と断じました。やがて二人は決定的に断絶し、宿敵となりました。
二〇一九年現在の中国は、共産党の支配下にない宗教が弾圧される国です。新疆ウイグル自治区に住むイスラム教徒に宗教弾圧を行い、「地下教会」と呼ばれる非公認教会の牧師を逮捕するなどキリスト教にも圧力を加えています。中国には非公認教会を含めるとキリスト教徒が一億人近くいるとの報道もあり、社会的に小さな問題ではありません。
また、カトリック信者への影響を嫌った中国政府は、バチカンとも外交関係がないのです(もっとも近年は関係修復の動きがあるようですが)。
韓国では、最近キリスト教信者が増加していますが、日本と同じく「中華味の仏教」や儒教の影響が強い国です。中国や韓国でも宗教についての知識がないと失敗することはありますが、儒教や、中国の場合には共産主義の影響もあり、宗教について曖昧であったり、社会の前面に出てこなかったりします。
しかし、宗教の影響が比較的弱いのはこれら東アジアの国々に限られます。そこでビジネスパーソン対象のグローバル研修の際、私はしばしば「東アジアを一歩出たら、宗教のことに特に気をつけてください」とアドバイスしています。
敬虔な仏教徒が多いタイ、カトリックが多いフィリピン、イスラム教徒も多く住むインドネシアやマレーシア。シンガポールは多民族国家だけあって、人種ばかりか宗教のるつぼです。
日本のビジネスパートナーとして、今後関係が深まっていく東南アジア諸国は、「宗教偏差値が高い国」と考えておくべきです。
なにより日本に対して多大な影響力を持つアメリカは、世界でもトップレベルの宗教的な国家。そんなアメリカ人が、日本人に自分たちの宗教の話をしてくることが少ないのは、「よく知らないだろう」と思っているからです。それなのに日本人が雑談をしているうちに宗教に関連する話題になり、無知であるために地雷を踏むパターンが多い……。
これはアメリカ生活が長い友人の意見ですが、私もそう感じます。
また、欧米の人たちが聞きたがるのは、日本人から見たユダヤ教、キリスト教の話ではなく、自分たちがよく知らない仏教や神道についてです。宗教偏差値を上げるには、まず、自分たちの宗教を知っておくことが大切です。
さらに最先端とされているIT企業はグローバル企業でもありますが、そこで働く人々は、現在アメリカでも人気が高まっている禅や瞑想への興味から「日本人なら仏教について詳しく教えてくれるだろう」という期待を持っています。
話題にのぼる可能性が非常に高いのに、まったく答えられないのは危険です。
「今のままの宗教偏差値ではまずい!」
最低限、この意識は必要ではないでしょうか。
大変為になりました。特にユダヤ教、ヒンドゥー教、イスラム教については知らないことばかりで参考になります。外交官として海外で多くの方々と接してきた経験知が本の中にあるので、対人エチケットとして必要になった時に活用します。
この本の意義は、宗教教育を受けていない日本人が、海外のクライアント等と話す時に「最低限の知識」として知りたい時に役立つように作られていることです。読みやすくコンパクト、1冊の本に整理されていることが、画期的なのだと思います。
当然そこには何を書き何を残すかという編集があります。そして、宗教についてフラットな目線が持てます。
宗教は奥が深く、又一つの宗教の解釈においても見方が違えば違う解釈が生まれるものです。
それらを知ろうと思えばとても1冊では足りません。
例えば日本の宗教や”貴方の宗教“を問われた時に答えようとすれば、もっと多くのことを理解する必要に迫られるでしょう。この一冊がそういう知的興味のスタートになるならば、それはそれで本の意義になると思います。
さらに「信じる」ということがどういうことなのか、体験を含めて分け入ろうとするきっかけになるならば素晴らしいことではないでしょうか。そう考えると、「とっつきにくい本」よりも「わかりやすい本」が良いと思います。
私は40をとうに過ぎて、国内でしか仕事をしたことのない、英語もろくに話せない、
ただの社会人です。
そんな私でも、一般教養として知っておいて損はないことが書かれてあり、楽しく読めます。
ニュースで耳にする宗教の成り立ちや、考え方が、コンパクトにまとめられていて良いと思います。
この1年ほど参加したオンラインプログラムで海外に友人を持つことができました。
海外渡航の規制も緩やかになって、今度インドネシアの友人宅へホームステイさせてもらえることになったこともあって、この年齢で、何も知らない状態でお邪魔するよりは、少し礼儀などを知ってる方がいいかな?
と思って、この本を手に取りました。
相手の国の宗教だけでなく、自分の宗教観についても少し考えをまとめることができて良かったです。
タイトルに「ビジネスエリート」と書いてる時点で読者層を狭くしている点が残念だなと思ったので
星を一つ減らしました。
インターネットで調べれば出てくる情報が書いてあるだけ
的な意見もレビューに見受けられましたが、
それでも一つ一つの宗教を調べる手間を考えたら、概略かもしれませんが1冊にまとまっているのは便利だと思います。