安倍氏銃撃事件が鳴らす警鐘、日本は「ローンウルフ型テロ」に懸念―中国紙

2022年07月20日 08時54分53秒 | 新聞を読もう

レコードチャイナ2022年7月16日 13:00

2022年7月15日、中国メディアの環球時報は、安倍晋三元首相が銃撃を受けて死亡した事件について、日本国内でローンウルフ型テロに対する憂慮が広がっていると報じた。

記事は、安倍氏が奈良県で銃撃を受けて死亡した事件について岸田文雄首相が警察の警備態勢に落ち度があったと指摘していると伝える一方で「今回の事件は、いかなる組織にも属しないローンウルフ(一匹狼)型の襲撃事件を事前察知し防ぐことの難しさを露呈させた」とした。

そして、米誌ディプロマットの電子版が「日本は暴力事件が少ないことで知られており、今回の安倍氏の事件は各方面に衝撃を与えた。

これまでにもローンウルフが日本で大規模な殺りくを行う事例はあった。

ただ、これまでの攻撃者のターゲットは不特定の人びとであり、著名な政治家ではなかった」と評したことを伝えた。

また、韓国・中央日報が日本のローンウルフ型襲撃事件について、容疑者が20~40歳の男で、失業している。

あるいは自らの将来に不安を抱き、社会に対して怒りや不満をためている。

孤立無援で友人や家族とのつながりが希薄であるといった特徴を持っていると紹介した。

ほか、人間関係が希薄になりがちな大都市での生活が「世の中から隔絶した人に対し、犯罪の動機を抱かせる完璧な環境を提供している」と分析した。

ほか、「他人に迷惑をかけない」という日本人の美徳意識が、自らが困窮したときに他人に相談することを心理的に阻み、適切なストレス発散方法が見つからない場合に往々にして他人への殺意が生じることになるのだと論じたことを紹介している。
記事は、対テロ政策に詳しい日本の専門家が「日本の警察は特定の思想組織に対する調査、情報収集では豊富な経験を持っているものの、単独犯による事件では集められる手がかりが限られており、容疑者の具体的な行動を予測することが難しい。

このため、今回の件では要人をどのように守っていくかという課題が浮き彫りになった」と指摘したことを紹介。

ローンウルフ型テロ対策は日本だけの問題ではなく、欧米などでは武器の製造に興味を持っている人を探し出すべく、情報機関がネット上で危険物の提供者を装う「フィッシング型取り締まり」が実施されているとする。

一方、日本の警察にはこういった取り締まりを実施する権限がない上、その実効性が確認されているわけではないという指摘もあることから、日本での実現は難しいと伝えた。(翻訳・編集/川尻)


「喪失連鎖」の果て ローンウルフが過激化するまで 安倍元首相銃撃

2022年07月20日 08時51分21秒 | 新聞を読もう

深掘り 大治朋子  毎日新聞 2022/7/18 11:30

安倍晋三元首相が倒れた後、警察官に取り押さえられた容疑者=奈良市の近鉄大和西大寺駅前で2022年7月8日午前11時33分ごろ、久保聡撮影

 奈良市内で参院選の街頭演説をしていた安倍晋三元首相(67)を銃撃した山上徹也容疑者(41)=殺人容疑で送検=は、現場で警察官に取り押さえられた。抵抗するそぶりはほとんど見せず、暴れることもなく終始無言だったという。その姿にはむしろ、脱力感さえ漂っていた。山上容疑者は白昼堂々、安倍氏を銃撃することにどんな「意味」を見いだそうとしていたのか。

独善的な「世直し」思考?
 英語で「ローンウルフ(一匹オオカミ)」とも呼ばれる単独犯。凶行を終え、力尽きたように現場で放心する姿はこれまでも世界各地で目撃されてきた。

 米司法省から委託を受けて米インディアナ州立大学のマーク・ハム教授(犯罪学)らが実施した調査によると、1940~2016年に米国で起きた単独犯によるテロ事件は123件。01年以降に起きた84件のうち約75%は、容疑者が現場付近で数時間以内に拘束されるか、射殺されたり自殺したりしている。

 これに対し、00年までの39件のうち約半数は数カ月以上逃亡していた。ハム教授らは、近年の容疑者は犯行を「一つのパフォーマンス」ととらえ、「捕まらないこと」よりも「見せ場」を重視する、破滅的な傾向が強まっていると分析する。

 確かに海外では最近、単独犯が犯行の様子をネット交流サービス(SNS)で動画配信する例も目立つ。

 事件の状況に照らすと、山上容疑者も逮捕を覚悟し、衆人環視の下での安倍氏殺害を決意したとみられる。山上容疑者は動機について「母親が宗教団体にのめりこみ破産した。家庭をめちゃくちゃにした団体を、安倍氏が国内に広めたと思って狙った」と供述している。

 大渕憲一・東北大学名誉教授(社会心理学)は「最終的に非常に高名な政治家を標的にした背景には、テロと共通するような、独善的視点からの『世直し』的な思考もあったのかもしれない」と分析する。そこには「より大きな社会問題として告発したい」という「義憤」のような感情と、同時に「自分の存在を社会にアピールしたいというゆがんだ自己顕示欲」も垣間見えるという。

 山上容疑者が思考を先鋭化させていったのだとすれば、そ…

 


ローンウルフは模倣する=大治朋子

2022年07月20日 08時49分43秒 | 新聞を読もう

火論

オピニオン 毎日新聞 2022/7/19 

演説中の安倍晋三元首相(67)を殺害した山上徹也容疑者(41)=殺人容疑で送検=はローンウルフ(単独犯)だったようだ。

 2021年に開催された東京オリンピック・パラリンピックで、警察が警戒していたのも単独犯だった。日常的に監視している犯罪集団や過激派組織とは異なり、兆候がつかみにくいからだ。

 その犯意を事前に察知するのは容易ではないが、方法がないわけではない。一つは犯行を計画する者からの「予告」サイン。以前にもこのコラム(「ローンウルフの予告グセ」6月28日掲載)で書いたが、自分の攻撃は単なる犯罪ではなく「聖戦」なのだと事前に周囲に知らせ、他者からの「承認」をもらうことで自尊心を満たそうとする試みだとされる。