トランプ大統領「パリ協定」から離脱する大統領令に署名
アメリカのトランプ新大統領は「私はただちに不公平で、一方的なパリ協定から離脱する」と述べて、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」から離脱する大統領令に署名しました。
「パリ協定」をめぐっては、トランプ大統領が1期目の政権時に「アメリカの製造業を制約する不公平な協定だ」などと主張して離脱し、その後、バイデン前政権で復帰していました。
大規模風力発電所のリースを終了
アメリカのホワイトハウスは、トランプ大統領のエネルギー政策として、自然の景観を損ないアメリカの消費者に奉仕しない大規模な風力発電所に対するリースを終わらせると発表しました。
トランプ氏はこれまでバイデン前政権が進めてきた気候変動対策を転換させると訴えてきました。
国連事務総長 州・企業レベルでの温暖化対策に期待
アメリカが地球温暖化対策の国際的な枠組み、「パリ協定」から離脱すると発表したことについて、国連のグテーレス事務総長は20日、コメントを発表しました。
このなかでグテーレス氏は「アメリカ国内の都市や州、企業が他の国々とともに、低炭素で強じんな経済成長に取り組み、引き続きビジョンとリーダーシップを発揮することを確信している。アメリカが環境問題のリーダーであり続けることは極めて重要だ」として、トランプ新政権がパリ協定から離脱しても、アメリカの州政府や企業のレベルで温暖化対策が続くことに期待を示しました。
浅尾環境相 “残念に感じるが脱炭素の方向性は揺るぎない”
トランプ氏がアメリカの大統領に就任し地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」から離脱する大統領令に署名したことなどについて、浅尾環境大臣は閣議後の記者会見で「アメリカのパリ協定からの脱退のいかんにかかわらずパリ協定を着実に実施することの重要性は損なわれていない。脱退表明について気候変動問題を担当する私自身としては残念に感じているが、わが国は2050年ネットゼロに向けた脱炭素と経済成長との同時実現を目指した取り組みを国を挙げて進めていて、この方向性は揺るぎがないものだ」と述べました。
その上で、「世界の気候変動対策への米国の関与は引き続き重要であり、環境省としてはさまざまな機会を通じて米国との協力について探求していく」と話しました。
また、アメリカのパリ協定からの離脱が国際社会に与える影響については「余談をもって答えることはできない」とした上で、「脱炭素の取り組みに関してはアメリカの地方政府や経済界にも広く浸透していて現在、世界的な潮流となっている。アメリカとしてもこれまで温室効果ガスを減らしてきたということをパリ協定からの離脱の大統領令の中でも触れているので、引き続きそういったことについて取り組んでもらえるというふうに思っている」と話しました。
日本で環境教育の若者団体“横の連携強化を”
トランプ氏がアメリカの大統領に就任し地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」から離脱する大統領令に署名したことなどについて、子どもたちへの環境教育などに取り組む日本の若者団体からは「アメリカはパリ協定を離脱するが、諦めるのは早く、環境への取り組みで今まで以上に横の連携を強化していくことだ大事だ」といった声が聞かれました。
子どもたちへの環境教育などに取り組む日本の若者団体「SWiTCH」代表の佐座槙苗さんは2024年のCOP29で日本政府団の民間のメンバーとして現地に入り世界の気候変動の問題などをめぐって各国の若者と交流しました。
トランプ氏は就任式で気候変動対策を優先課題としていたバイデン政権から方針転換して化石燃料を増産する考えを強調しその後、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」から離脱する大統領令に署名しました。
これについて佐座さんは、「パリ協定の離脱は国際関係に大きなインパクトを与え、本来であればアメリカが途上国を支援する資金がなくなると思います。ヨーロッパや日本がどれだけカバーすることができるかなど、私たちが国際社会においても重大な責任を担うことになるのではないか」と述べました。
その上で、「世界の若者たちには『地球が本当に危機的な状況だ』という認識がすでにあります。去年のCOP29でアゼルバイジャンの会場に行ったときも、予想されたアメリカのパリ協定離脱に対し『今まで以上に横の連携を強化しないといけない』という意識が本当に強かったです。実際にアメリカ国内でも『パリ協定は守らないといけない』と信じて頑張っている自治体や団体はたくさんあるので、そうした団体などとのパートナーシップをもっと促進していこうという話がわたしたちの間で上がっています」と話しました。
そして、「トランプ大統領の4年の任期が終わったあとに、アメリカがまたパリ協定の中に入り直す可能性は高いと思います。その準備のためにも、今までパリ協定を支持してきた人たちをサポートし、強化していくよいタイミングだと思っています。気候危機でいちばんインパクトを受けるのは途上国や南半球の人たち、そして私たち若い世代です。アメリカはパリ協定を離脱しますが、諦めるのは早いと思っています」と話していました。
- 注目
専門家 “市民や国際社会が連携して対策 一層重要に”
トランプ氏がアメリカの大統領に就任し、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」から離脱する大統領令に署名したことなどについて、気候変動問題の国際交渉に詳しい東京大学未来ビジョン研究センターの高村ゆかり教授は「世界全体で温室効果ガスの排出量を減らす必要がある気候変動問題では国際的な協調が非常に重要になる。このため世界第2位の排出国であり外交上も非常に重要な位置を占めているアメリカが、気候変動対策の国際的な要であるパリ協定から脱退することは、残念ながら、少なからず世界の気候変動対策に影響を与えることになる」と指摘しました。
具体的には、アメリカを含めた先進国が資金を提供しなければ、途上国が温室効果ガスの排出削減のために十分な取り組みができなくなるとした上で、「アメリカの資金支援の撤回は世界の排出削減対策を停滞させるのではないかと懸念する」と述べました。
その一方で、「気候変動の影響やリスクが深刻化していることを受け、多くの国が温室効果ガスの排出をゼロにする長期目標を持って対策を進めている。さらに、企業や金融機関も気候変動のリスクを自らの事業や資産へのリスクとして捉え、取り組みを進めてきているのは第1期のトランプ政権との大きな違いだ」と指摘し、「アメリカ国内でも企業や金融機関などによる『気候変動対策を自分たちで先導していこう』という取り組みは続いている。アメリカのパリ協定からの脱退で世界の排出削減対策が止まってしまうわけではない」と話しました。
そして、「アメリカの不在によって起こりうる問題に対し、市民社会や国際社会が連携して気候変動対策に取り組んでいくということが一層重要になってくる」と述べました。
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