低所得者は高所得者に比べ、栄養バランスの取れていない食事をしている――。
そんな調査結果が12月9日に発表された。
厚生労働省が実施した「2014年『国民健康・栄養調査』」
調査では、世帯所得を「200万円未満」「200~600万円未満」「600万円以上」の3つに区分。200万円未満の低所得者は600万円以上の高所得者に比べて、野菜の摂取量が男性で68.7グラム、女性で41.8グラム少なかった。
肉の摂取量も、男性で20.3グラム、女性で9.8グラム少なかった。その一方で、穀物の摂取量は低所得者の方が多く、高所得者に比べて男性で41グラム、女性で19.7グラム多いという結果になった。
「低所得者は食事の内容見直して」に反発相次ぐ
低所得者は栄養バランスなんて考えられない
調査には所得と消費の因果関係の分析はないが、低所得者の方が安価なファストフードやインスタント食品、弁当などで食事を済ます割合が高いことは容易に推測できる。
これらの食事にはコメやパン、麺類などの穀物の割合が高く、それが反映されたのだろう。
穀物の炭水化物に含まれる糖質は、最も効率のよいエネルギー源になるため、食事にお金をかけられない世帯では炭水化物の割合が高くなるとも考えられる。
また調査では、食品を選択する際に「おいしさを重視する」割合も、高所得者の方が男性で8.5ポイント、女性で10.6ポイント高かったというが、これも当たり前すぎる結果だろう。この結果についてNHKが、「所得が低い人は栄養バランスのよい食事をとる余裕がなくなっているのではないか。食事の内容を見直すなど健康への関心を高めてほしい」という厚労省のコメントを流した。
「『死なないため』にはまずカロリー摂取を優先せざるを得ない。
栄養バランスはお金の問題です」「持たざる者を煽る文章としてこれ以上ないであろう後世に残る名文」などと反発する書き込みが殺到した。
健康意識の違い?「一日の歩数」も高所得者が多い
また、低所得者が安価で高カロリーなものを選ぶ現状を受け、「このままだとアメリカの低所得者がメタボになるのと同じ運命を辿る事になるのでは」と危惧する人も。所得の格差が広がることで、肥満になる人もより増えるというのだ。
ナショナルジオグラフィックによれば、米国では高所得者と低所得者の「食事の質の格差」が2倍に広がっており、貧困層の集まる地域のスーパーマーケットにはトランス脂肪酸の入った揚物や甘味料の入った飲料水は多く、果物や野菜などは少ない傾向にあるという。
低所得者の肥満傾向は今回の厚労省調査にも表れており、低所得者の肥満の割合は男性で13.2ポイント、女性で4.6ポイント高くなっている。
ただしエネルギーの摂取量を見ると、高所得者の方が男性で127.2キロカロリー、女性で89.3キロカロリー高い。エネルギー摂取量が多いほど肥満になりそうだが、これはどういうことなのか。厚労省に見解を求めたところ、こんな回答が寄せられた。
「今回の調査はあくまで実態を説明するものであって、因果関係などを明らかにするものではないのですが、エネルギーの摂取量と消費量の関係が一つ推察できるかもしれません」
そこでエネルギーの消費量にかかわる運動についてチェックすると、調査では低所得者と高所得者で「運動習慣」に有意差はなかったが、一日の「歩数の平均」で有意差があった。
高所得者の方が男性で1329歩、女性で542歩多かった。
女性の喫煙率は低所得者の方が1割も高い
所得と歩数には因果関係がないようにも思えるが、所得の多い都市生活者は電車通勤で歩く機会が意外と多く、地方は自動車を使って移動することが多いのだろうか。
普段から健康を意識し、歩くことを日常生活に取り入れているのかもしれない。
健康に対する意識にも違いがあり、「喫煙率」は低所得者の方が男性で6.2ポイント、女性で9.7ポイント高く、「健診未受検者の割合」も男性で26.8ポイント、女性で10.1ポイント高くなっていた。