国が賠償認め訴訟終結 遺族に1億700万円支払い―森友文書改ざん・大阪地裁

2022年01月28日 11時13分41秒 | 新聞を読もう

2021年12月15日19時53分 時事通信

森友学園に関する公文書改ざんをめぐる国家賠償請求訴訟の進行協議の後、記者会見する赤木雅子さんの代理人の生越照幸弁護士(左)と松丸正弁護士=15日午後、大阪市北区

学校法人森友学園をめぐる財務省の公文書改ざん問題で、自殺した同省近畿財務局職員赤木俊夫さん=当時(54)=の妻雅子さん(50)が国などに損害賠償を求めた訴訟の進行協議が15日、大阪地裁(中尾彰裁判長)であった。国は原告の請求を認める「認諾」を行い、国との訴訟は終結した。

官房副長官「国の責任明らか」 赤木さん自殺、過剰な負荷継続

 国側は同日付の準備書面で、改ざん指示を受け業務負担が増した赤木さんの自殺について、「国家賠償法上の責任を認めるのが相当」と説明。原告の追加主張などの内容を再検討した結果、「いたずらに訴訟を長引かせるのは適切ではなく、決裁文書の改ざんという重大な行為の重大性に鑑み、認諾する」とした。今後、請求額の1億700万円を支払う。
 国側はこれまで請求棄却を求めて争っており、主張を一変させる形となった。原告代理人によると、地裁側にも事前に知らされず、異例の訴訟対応という。遺族が、当時の同省理財局長で改ざんを指示したとされる佐川宣寿元国税庁長官に550万円の賠償を求めた訴訟は継続する。


「河瀨直美が見つめた東京五輪」

2022年01月28日 10時50分22秒 | 社会・文化・政治・経済

配信

NHKが昨年12月に放送したBS1スペシャル「河瀬直美が見つめた東京五輪」が事実に基づかない不適切な字幕を放送した問題で、制作側のずさんなチェック体制が次々と明らかになっている。
NHKでは平成26年に放送した「クローズアップ現代」のやらせ疑惑を受け、翌年に再発防止策を導入したが、生かすことができなかった。
■やらせは否定 「チェック機能が十分に働かなかったことが、一番大きな問題だ」 NHKの前田晃伸会長は13日の定例会見で、一連の問題の原因が「チェック機能」にあったと述べた。
五輪反対派をおとしめる意図を疑う一部の見方については、担当者が「密着取材の中で見つかったさまざまな考えの人を入れようということで、最初から狙いを持って意図して編集したものではない」と否定した。
問題の番組はNHK大阪放送局が制作し、昨年12月26日に放送(30日に再放送)された。
今年公開予定の東京五輪公式記録映画の監督を務める河瀬直美さんら制作チームに密着し、選手・市民の取材や、撮影した映像の編集作業を追ったドキュメンタリーだ。
問題となっているのは、公式映画スタッフの映画監督の島田角栄さんが競技場の外で出会った男性から話を聞く場面。男性は匿名で顔にぼかしが入っており、映像には「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕が添えられた。
しかし、男性が五輪反対デモに参加したかどうかは現在まで確認できていない。 NHKの説明によると、島田氏が男性を取材した際にNHKのディレクターも補足で男性を取材。男性は「これまで(五輪以外の)複数のデモに参加して現金を受け取ったことがある」「五輪反対デモにも参加しようと思っている」という趣旨の発言をした。
局内での試写ではプロデューサーからディレクターに、字幕について確認するよう指示が出た。ディレクターは島田氏に連絡を取ったが、取材当時の男性の発言内容を確認しただけだったという。島田氏は「放送前にディレクターから(字幕について)確認はなかった」と抗議。NHKは謝罪した。
■食い違う説明 ではなぜ、誤った字幕が出てしまったのか。NHKは「出家詐欺」を取り上げた26年のクローズアップ現代でやらせ疑惑を指摘されたことを受け、再発防止策を発表。匿名で放送する必要性や内容の真実性を検証する「匿名チェックシート」や、担当外の職員が参加して放送前の番組を確認する「複眼的試写」を全番組で行うとしていた。
しかし、今回はチェックシートは使われず、社内の試写は複数回行われたものの、制作に関わっていない職員は参加しなかった。
NHKの正籬(まさがき)聡放送総局長は「ディレクターが意図的にまたは故意に、架空の内容を作り上げたという事実はない」として、捏造(ねつぞう)ややらせではないとした。
河瀬氏は「公式映画チームが取材をした事実と異なる内容が含まれていたことが残念」などとコメントを出している。
島田氏や河瀬氏は、事前に番組を確認していなかったという。 この問題をめぐっては、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会も、番組制作過程などについてNHKに文書で報告を求めている。
NHKは関係者からの聴取を続けると同時に、全職種の管理職を対象にリモートで緊急の会議を開催。
ノンフィクション系のすべての番組とデジタルコンテンツについて、27年に出した再発防止策の徹底を改めて呼び掛けた。(道丸摩耶
) ■クローズアップ現代のやらせ疑惑  平成26年5月に放送されたNHKの報道番組「クローズアップ現代 追跡〝出家詐欺〟~狙われる宗教法人~」で、匿名で詐欺に関わるブローカーと紹介された男性が、「(知人の)NHK記者の指示で架空の人物を演じた」などと主張した。
NHKは27年4月、「過剰な演出や誤解を与える編集があった」としながらも、やらせは否定する調査報告書を公表した。

【関連記事】

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BS1スペシャル

「河瀨直美が見つめた東京五輪」

初回放送日: 2021年12月26日 んhK

来年6月公開予定の東京五輪公式記録映画で監督を務める河瀨直美さん。

五輪が私たちの社会に残したものとは。映画の制作を通じてその問いと向き合う河瀨さんを密着取材。

来年6月に公開予定の東京五輪公式記録映画で監督を務める河瀨直美さん。コロナ禍以前の2019年7月に取材を始め、撮影した映像は5000時間以上。今月、編集作業に入った。

開催を巡り賛否の声がぶつかりあった五輪が私たちの社会に残したものとはなにか。その問いへの答えを探そうと、河瀨さんは膨大な映像素材と向き合っている。

長期にわたる密着取材に加え、記録映画の素材も用いながら河瀨さんの知的格闘を描く。

 


2少女誘拐の被告に懲役24年求刑 弁護側は無罪主張 水戸地裁

2022年01月28日 10時41分50秒 | 事件・事故

毎日新聞 2022/1/26 19:56(最終更新 1/26 19:56) 

2019年に大阪市の小学6年女児と茨城県の女子中学生を誘拐したとして、未成年者誘拐などの罪に問われた栃木県小山市の無職、伊藤仁士被告(37)の論告求刑公判が26日、水戸地裁(中島経太裁判長)であり、検察側は「周到な準備をした、極めて卑劣な犯行」として懲役24年を求刑した。

弁護側は「誘拐ではなく、死にたい人を助けたかっただけ」と無罪を主張し、結審した。判決は3月22日に言い渡される。

 検察側は論告で、伊藤被告が事前に書籍で他人の洗脳方法などを下調べし、その通りに実行していたと指摘。防犯カメラを避け、変装して待ち合わせ場所に来るよう女児に指示し、携帯電話の電源を切らせて家族と連絡を取れないようにするなど「計画性も高く悪質」とした。


 一方、弁護側は「(自殺をほのめかしていた2人の)命を守るために家に招き入れた」として無罪を主張した。伊藤被告は「助けるためにできるだけのことをした」と述べた。

 起訴状によると、被告は19年5~6月、茨城の女子中学生(当時14歳)にネット交流サービス(SNS)でメッセージを送って自宅へ来るように促し、わいせつ目的で誘拐。11月には大阪の小6女児(同12歳)もSNSで大阪市の公園に誘い出し、自宅に連れ去ったとされる。【森永亨】


自殺対策白書 働く女性の自殺増加 新型コロナで労働環境変化か

2022年01月28日 10時40分04秒 | 社会・文化・政治・経済

2021年11月2日 17時29分  NHK

ことしの自殺対策白書は働く女性の自殺の増加が去年は顕著だったとして、新型コロナウイルスの感染拡大による労働環境の変化が関連した可能性があると指摘しています。

2日、閣議決定された自殺対策白書によりますと、去年1年間に自殺した人は2万1081人と前の年より912人増えました。

前の年より増加したのはリーマンショック後の2009年以来です。

 

前の年より増加したのはリーマンショック後の2009年以来です。
男性の自殺者は前の年より23人減って1万4055人と11年連続で減少した一方、女性は935人増えて7026人と2年ぶりに増加しました。
増加が顕著だった女性の自殺者を過去5年の平均と比較したところ「被雇用者・勤め人」が最も増加し、職種別では「事務員」や「その他のサービス職」「医療・保健従事者」などが増えていました。

また、女性の自殺の原因や動機では職場環境の変化や人間関係などの「勤務問題」が最も増えていることなどから、新型コロナウイルスの感染拡大による労働環境の変化が関連した可能性があると指摘しています。

政府は民間団体と連携してSNSを使った相談体制を拡充するなど、自殺を予防するための取り組みを進めることにしています。

松野官房長官「重く受け止めなければならない」

松野官房長官は午後の記者会見で「多くの方が亡くなられている現実について、政府として重く受け止めなければならない。政府としては自殺を考えている方に対する電話相談や、女性や若者の利用が多いツールであるSNSでの相談などの体制の拡充に努めるほか、やむをえず職を失った方へのきめこまやかな就労支援や生活資金で悩んでいる方への支援を行っている。今後とも関係省庁の連携を密にして、誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指し取り組んでいく」と述べました。

悩んでいる方へ

厚生労働省は、電話やメール、SNSなどで相談できる各地の相談窓口を、インターネットで紹介しています。

サイトのURLは「https://shienjoho.go.jp/」で、「厚生労働省 支援情報」でも検索できます。

希望の星

2022年01月28日 08時23分47秒 | 創作欄

片木奈織里はある時期、自ら「希望の星」になろうとした。
特別の才能や実績があるわけではなかったが、目標を定めたのだ。

でも、実情は情けないことに「失敗の連続」に終始する。
それでも、「希望の星」をあきらめない。

立ち向かう相手は、あきらめの心。

「希望の星」にならうとする「一念」こそが原点であり、原動力。
この世に「私」という存在は一人しかいない。

立ち向かう相手は、外ではない。
自分の胸に影を落とす弱気や、あきらめのこころ。

自分に負けずに、まず、できることから始める。
それこそが「希望の星」の輝きの源なのだ。

「希望の星」とは:闇夜に輝く天の星のように、困難な状況や絶望的な状況に対して“希望”という名の光を示す存在のこと。

また、行くべき方向を見失った者たちに方角を示す北極星のように、迷った人たちを正しい方向に導く存在のこと。


いつもの言葉を哲学する

2022年01月28日 07時40分16秒 | 社会・文化・政治・経済
 
古田 徹也  (著)
 
ニュースや日常のなかで「言葉が雑に使われている」と感じたことはないだろうか?

かつて哲学者のウィトゲンシュタインは、「すべての哲学は「言語批判」である」と語った。
本書で扱うのは、巷でよく見かける、現実をぼやかす言葉、責任を回避する言葉のほか、
日常の中で文化の奥行きを反映する言葉などの「生きた言葉」たちだ。

結局、言葉を大切にするとは何をすることなのか。
サントリー学芸賞受賞の気鋭の哲学者が、
自分自身の表現を選び取り、他者と対話を重ねていくことの実践法を説く。

【目次】
第一章 言葉とともにある生活
1 「丸い」、「四角い」。では「三角い」は?
2 きれいごとを突き放す若者言葉「ガチャ
3 「お手洗い」「成金」「土足」―生ける文化遺産としての言葉
4 深淵を望む言葉―哲学が始まることの必然と不思議
5 オノマトペは幼稚な表現か
6 「はやす」「料る」「ばさける」―見慣れぬ言葉が開く新しい見方
7 「かわいい」に隠れた苦味
8 「お父さん」「先生」―役割を自称する意味と危うさ
9 「社会に出る」とは何をすることか
10 「またひとつおねえさんになった」―大人への日々の一風景
11 「豆腐」という漢字がしっくりくるとき―言葉をめぐる個人の生活の歴史

第二章 規格化とお約束に抗して
1 「だから」ではなく「それゆえ」が適切?―「作法」に頼ることの弊害
2 「まん延」という表記がなぜ蔓延するのか―常用漢字表をめぐる問題
3 「駆ける」と「走る」はどちらかでよい?―日本語の「やさしさ」と「豊かさ」の緊張関係
4 対話は流暢でなければならないか
5 「批判」なき社会で起こる「炎上」
6 「なぜそれをしたのか」という質問に答える責任
7 「すみません」ではすまない―認識の表明と約束としての謝罪

第三章 新しい言葉の奔流のなかで
1 「○○感」という言葉がぼやかすもの
2 「抜け感」「温度感」「規模感」―「○○感」の独特の面白さと危うさ
3 「メリット」にあって「利点」にないもの―生活に浸透するカタカナ語
4 カタカナ語は(どこまで)避けるべきか
5 「ロックダウン」「クラスター」―新語の導入がもたらす副作用
6 「コロナのせいで」「コロナが憎い」―呼び名が生む理不尽
7 「水俣病」「インド株」―病気や病原体の名となり傷つく土地と人
8 「チェアリング」と「イス吞み」―ものの新しい呼び名が立ち現せるもの

第四章 変わる意味、崩れる言葉
1 「母」にまつわる言葉の用法―性差や性認識にかかわる言葉をめぐって1
2 「ご主人」「女々しい」「彼ら」―性差や性認識にかかわる言葉をめぐって2
3 「新しい生活様式」―専門家の言葉が孕む問題
4 「自粛を解禁」「要請に従う」―言葉の歪曲が損なうもの
5 「発言を撤回する」ことはできるか
6 型崩れした見出しが示唆する現代的課題
7 ニュースの見出しから言葉を実習する
8 「なでる」と「さする」はどう違う?
 
 
 

主にウィトゲンシュタインを研究対象とする著者による、言葉をめぐる論考を集めたもの。いずれも日常のことや社会的な関心を集めていることから軽いタッチで話は始まるが、かなり踏み込んだ議論へと進んで行く。それぞれの分量は決して多くはないが、じっくり読ませる内容かつ読者の側にも思索を巡らせることを促す内容である。

本書の最後は、次のような文章で締めくくられている。「私たちの生活は言葉とともにあり、そのつどの表現との対話の場としてある。言葉を雑に扱わず、自分の言葉に責任をもつこと。言葉の使用を規格化やお約束、常套句などに完全に委ねてはならないこと。これらのことが重要なのは、言葉が平板化し、表現と対話の場が形骸化し、私たちの生活が空虚なものになること-ひいては、私たちが自分自身を見失うこと-を防ぐためだ。本書はここまで、この点を跡づけてきたつもりである。」
 
特に今般のコロナ禍の中で言葉に関して起きたあれこれ。例えば「濃厚接触」や「社会的距離」などの問題ある訳語の出現、「新しい生活様式」という新たな言葉の創出、「自粛を解禁」といった歪んだ言葉の使用など。言葉という切り口から、実は問題があった出来事を鮮やかに腑分けしてみせたところが素晴らしい。
 
 
古田徹也さんの本はこれで3冊目です。
過去に、論理哲学論考(角川選書)、はじめてのウィトゲンシュタイン(NHK出版)を読んでいます。

古田徹也さんの特筆すべき特徴として、物事に対する中立的な姿勢があると思います。
相手を言い負かすような議論はネットに限らずよく目にするようになり、
いったい彼らは何のために議論しているのかとうんざりすることが多いのですが、
古田さんは自身の主張をしつつ相手を言い負かすような議論をしないという姿勢が感じ取れて好印象です。
どのコラムも共感しながら読むことができました。

個人的な意見ですが、幼児に対する一人称(「お父さん」「先生」など)は、
古田さんが主張されていた幼児に対して役割を明示するという意味よりも、
幼児は交換可能な一人称(「私」など)を理解できないという理由の方が大きいのではないかと思いました。
私は"私"、あなたも"私"、これがまだ分からないのではないか?と思うのです。
(理解できないから明示的な一人称にするという解釈でよければ両方とも成立しますね)

また、前述した2冊に比べて少し物足りなさを感じたのは否めません。
誰もが誤読なく手軽に読める内容ですが、古田さんの思想をもっと深く知りたかったです。
 
 
このレビューのタイトルは、本書の188頁からのものだが、この件に限らず、まったくもって感心する文章に、何度も出会う、秀逸本。

とりわけ、わたしがうーんと唸ったのは、71頁にある、以下の注記。
「自立は、依存先を増やすこと 希望は、絶望を分かち合うこと」という言葉。
たまたまこの頁のこの文章を見て、購入を決めた。

まだまだ、読みたい文章が、てんこ盛りの新書であると思う。
 
 

ウィトゲンシュタインの研究者である、古田さんの本だからだろうといえばそれまでですが、言葉の
面白さと怖さ、そしてそこからくる「言葉の大切さ」がストンと腹落ちしました。

前半部分は、言葉の「面白さ」について多く触れられていて、後半は「恐ろしさ」が中心になって
います。

■ 言葉の面白さ

挙げだすとキリがないので、ほんの数例だけですが、実に興味深いです。

・「白い」「黒い」「赤い」「青い」とは言われるが、「緑い」「紫い」などとは言わない
 これは日本人にとって古来「白」「黒」「赤」「青」が基本的な色彩であったことを示す

・「土足で入ってくる」という表現は、プライベートスペースに土足のまま入ってくることに対して
 強い拒否反応を示す文化内でのみ、独特の意味をもつ

・日を数える時に、ついたち、ふつか、みっか、よっかというように、「ついたち」になっている
 のは、「月立ち」から来ているからだ

・オノマトペ言葉は幼稚な代物ではなく、「しとしと」「ぽつぽつ」「ぱらぱら」などで雨が降る
 様子を表すように、繊細な使い分けが要求される成熟した言葉表現である

古田さんは「言葉について考えることは、それが息づく生活について考えることでもある」と評して
います。言葉の感性を持つことの大切さや、それを持ち合わせていると、言葉が面白くなることに
気付かされました。その古田さんが本書で使われている文章も、平易だけれども知的で味わい深い
ものがあります。ひとつだけ取り上げます。

 その普通の豆腐が、シンプルなかたちと洗練された滋味も相俟って、
 自分のしていることの 卑小さと対照を成していると実感した

本書中盤の、「交ぜ書き」についてあたりから、言葉の面白さと、恐ろしさが交差し始めます。
「まん延」「ひっ迫」「破たん」のような交ぜ書きは、さしあたり、不自然で不格好だ、という
著者の意見には、完全に同意します。
単純に美しくないし、文化を貧弱にしていきます。
古田さんの言葉で言うなら、「画一的なものの見方や考え方に支配されることにつながる」です。

■ 言葉の恐ろしさ

現在進行形の新型コロナ感染症問題に関わる「濃厚接触」「都市封鎖(ロックダウン)」
「自粛解禁」「新しい生活様式」など、解釈が曖昧であったり、誤用されたりしていることの指摘
は、読者である私たちの多くが首肯するものです。
本書ではさらに踏み込んで、何気なく日常に紛れ込んで馴染んでしまっているけど、どこか
「違和感」を感じるときに、その言葉に対して改めて注意を向けて見直すことを提起しています。
著者の指摘に共感するものとして、次の2つを取り上げます。

・夫婦の呼び方で困っている問題
 「主人」「旦那」「亭主」も、「家内」「嫁」「奥さん」も男性優位を彷彿させるため、避けよう
 とする人が増えてきており、「夫」「妻」「パートナー」といった言葉が用いられる傾向がある。

・SNSなどの短文コミュニケーション
 短いために、誤解や混乱を招く表現が多くみられるので、それらを避けるための技術の必要性が
 増している。

言葉は、歴史と文化の蓄積であり、そこに内包される豊かさを、探れば探るほど、見つけることが
できる面白さがあります。
また、言葉は常に変わりゆくものでもあり、その方向性によっては社会を歪めて操作しうる恐ろしさ
もあります。
著者が『あとがき』で警鐘を鳴らしているように、「言葉に不関心であってはならない」のです。

これほど、言葉について楽しみながら考えることのできる良書はありません。お勧めです。
 
 
 

古田徹也(1979年~)氏は、東大文学部卒、同大学院人文社会系研究科博士課程修了、新潟大学教育学部准教授、専修大学文学部准教授等を経て、東大大学院人文社会系研究科准教授。『言葉の魂の哲学』(2019年)でサントリー学芸賞受賞。専門は現代哲学、現代倫理学。
本書は、2020年9月~2021年5月に朝日新聞に連載されたコラムのテーマをベースに、内容としては大半を書き下ろしたもの。
内容は、私たちが今、日常の生活の中で使っている様々な言葉について、それらの持つ多様な側面を考察した(著者はその行為を「哲学する」と表現している)ものであるが、34に分けられたテーマは、新聞連載から取られていることもあり、常日頃感じていることも多く、とても興味深いものとなっている。
私が面白いと思ったのは、例えば以下のようなテーマである。
◆近年若者がよく使う「●ガチャ」という言葉について
◆「まん延」、「ちゅうちょ」、「あっせん」、「ねつ造」、「改ざん」、「ひっ迫」等の平仮名書き、漢字との交ぜ書きについて
◆特定の障害のある人や在日外国人にも習得・理解がしやすいように調整された、いわゆる<やさしい日本語>について(人工的な共通言語は、G・オーウェルの『1984年』に登場する全体主義国家の公用語「ニュースピーク」に通じることに注意が必要である)
◆対話の「当意即妙さ」、「流暢さ」は言語実践において称賛されるべきことなのか
◆自由で民主的な社会において、「なぜそれをしたのか?」という問いに政治家が答えないことをどう考えるか
◆政治家・有名人が謝罪会見で使う「私の発言が誤解を招いたのであれば申し訳ない」、「ご心配をおかけして申し訳ありません」、「私の不徳の致すところで・・・」等は謝罪の言葉といえるのか
◆「スピード感」のような「●●感」という言葉について
◆氾濫するカタカナ語をどう考えるか
◆性差や性意識にかかわる言葉(「母」のつく熟語、「ご主人」、「女々しい」、「彼ら」等)をどう考えるか
◆コロナ禍で現れた「新しい生活様式」、「自粛を解禁」、「要請に従う」等の言葉をどう考えるか
◆政治家がよく使う「発言を撤回する」ことはできるのか

読了して、改めて、言葉の大切さ、「<しっくりくる言葉を慎重に探し、言葉の訪れを待つ>という仕方で自分自身の表現を選び取り、他者と対話を重ねていく実践>の重要性を認識することができた。
(2022年1月了)
 
 
 
 
 

生きた言葉の力を身に付ける新しい国語科授業の実際 小学校5年

2022年01月28日 07時24分20秒 | 新聞を読もう
 
 
小森 茂 (著)
 
 
話すこと・聞くこと(考えた事や自分の意図が分かるように話の組立てを工夫しながら、目的や場に応じた適切な言葉遣いで話すこと。
/話し手の意図を考えながら話の内容を聞くこと。
/自分の立場や意図をはっきりさせながら、計画的に話し合うこと。)
/書くこと(全体を見通して、書く必要のある事柄を整理すること。
/自分の考えを明確に表現するため、文章全体の組立ての効果を考えること。
/事象と感想、意見などとを区別するとともに、目的や意図に応じて簡単に書いたり詳しく書いたりすること。)
/読むこと(自分の考えを広げたり深めたりするために、必要な図書資料を選んで読むこと。
/目的や意図などに応じて、文章の内容を的確に押さえながら要旨をとらえること。
/登場人物の心情や場面についての描写など、優れた叙述を味わいながら読むこと。
/書かれている内容について事象と感想、意見の関係を押さえ、自分の考えを明確にしながら読むこと。
/必要な情報を得るために、効果的な読み方を工夫すること。)
/漢字指導(文字に関する事項
)/書写指導(書写に関する事項)
 

内容(「MARC」データベースより)

平成14年度から実施を迎える新教育課程に即した国語科授業の指針。小学校5年の「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」「漢字指導」「書写指導」の具体例を示す。評価と指導の工夫についても触れる。
 
 
 
 

早くも春を告げる若草萌える利根川土手

2022年01月27日 21時56分04秒 | 新聞を読もう

今日の取手市内は、午前5時ころ、気温はプラス3度。

快晴ではなく、残念ながら利根川土手から富士山をみることはできなかった。

土手一面が枯草に覆われていたが、1月下旬となり、早くも春を告げる若草萌える利根川土手となる。
菜の花が咲きだし、タンポポもポッンと顔だしていた。

長禅寺境内の蝋梅が香る

取手・長禅寺の池と蝋梅 2022年1月27 日

東京の新規感染者数1万6538人に井上貴博アナ「政府、自治体はこの2年間で何を変えることができたのか」

2022年01月27日 21時21分13秒 | 社会・文化・政治・経済

1/27(木) 16:53配信 スポーツ報知

 東京都は27日、新たに1万6538人が新型コロナウイルスに感染したことが確認されたと発表した。3日連続の過去最多更新となった。

 前日の1万4086人から増加。前週の木曜日の8638人から倍増した。都の基準による重症者は18人となった。死者は3人だった。

 TBS系「Nスタ」(月~金曜・午後3時49分)では、井上貴博アナウンサーが「検査陽性者の数は1万6538人となりました。昨日時点の東京の病床使用率は42・8%です」と報じた上で「多くの方が変わらず感染対策を行って生活している中で政府、自治体はこの2年間で何を変えることができたのか。医療体制の強化、医療資源の確保、治療薬の分配、このあたりは政府や自治体にしかできないことです。どうも根本的な問題はこの2年間、変わっていないような気もします」と続けた。

報知新聞社

 

【関連記事】


大切なのは<努力し続ける強さ>

2022年01月27日 20時52分58秒 | 伝えたい言葉・受けとめる力

▼語らなければ、真実は伝わらない。
▼「勝った」と言える日は突然来る。
大切なのは<努力し続ける強さ>漫画家・水島新司さんの言葉。
▼逆境が自身を築き、野球界での功績につながった―プロ野球の名将・野村克也さんの指摘。
自身を「二流」と称した。
自分の弱点を理解した上で、強みを生かせる選手を「超二流」と呼んだ。
一流は無理でも「超二流」なら努力次第で誰でもなれる。
これができる選手は、時に一流を凌駕し、より長く<結果>を残せる。
▼試練の嵐に遭っても、その中で苦闘し、未来へ向かって努力を積み重ねる人が、勝利の栄光をつかみ取る。
▼労苦こそが、自ら<一流>へと鍛え上げる、幸福の原動力となる。


人間には、いかなる試練も乗り越え力が具わっている。

2022年01月27日 11時31分35秒 | その気になる言葉

▼失敗は敗北ではない。
前進している証拠だ!
そこから学び立ち上がり、何度も挑み続ける中で、栄光の逆転劇が生まれる。
▼勇気をもって実践する。
それが勝利の要諦である。
▼問題解決の前進を相互に後押しする<プラスの連鎖>を起こすべきだ。
▼人間には、いかなる試練も乗り越え力が具わっている。


若い世代が希望を育み

2022年01月27日 10時53分05秒 | 伝えたい言葉・受けとめる力

▼コロナ禍は、人類の転換期である。
時代の混迷のなか、健康や幸福は何を意味するのか。
▼<生きる喜び>を分かち合える社会を築くことが重要だ。
▼コロナ危機からの再建において、若い世代が希望を育み、女性が尊厳を輝かせることのできる経済を如何に創出することができるかだ。
▼非正規雇用問題は、貧困の連鎖を生み、社会構造上も極めて深刻であり格差がますます広がるばかりだ。
▼歴史の行方を根底で決定づけるのはウイルスの存在ではなく、あくまで人間にほかならない。
▼ゆへに、想像もしなかった事態の連続で戸惑い、ネガティブな出来事に目が向きがちになるが、危機の打開を目指すポジティブな動きを希望の光明として捉えたいものだ。


WHO拠出金、米国は25%減 ドイツが最大の貢献

2022年01月27日 10時23分03秒 | 社会・文化・政治・経済

1/26(水) 3:28配信 ロイター

1月25日、世界保健機関(WHO)に対する米国の資金拠出が新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)中に約25%減少したことが暫定データで明らかになった。

(2022年 ロイター/Denis Balibouse)

[ブリュッセル/ジュネーブ 25日 ロイター] 

 世界保健機関(WHO)に対する米国の資金拠出が新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)中に約25%減少したことが暫定データで明らかになった。

暫定データによると、WHOの直近の2カ年予算(2020─21年)に対する米国の拠出金は6億7200万ドル。18─19年の8億9300万ドルから減少した。

これにより、11億1500万ドルを拠出したドイツが米国に代わり最大の貢献国となった。

3位は5億8400万ドルを拠出したビル&メリンダ・ゲイツ財団。

米国の拠出金は、トランプ前大統領がWHOへの資金拠出を停止したことを受け減少。バイデン現政権は昨年12月に新たな資金拠出を確約しているため、WHOの22─23年予算では米国の貢献が増加する可能性がある。

この件について米国務省からコメントは得られていない。WHO報道官からも公式見解は得られていない。


ビル&メリンダ・ゲイツ財団

2022年01月27日 10時07分31秒 | 社会・文化・政治・経済

ビル&メリンダ・ゲイツ財団(Bill & Melinda Gates Foundation; B&MGF)は、マイクロソフト元会長のビル・ゲイツと妻メリンダによって2000年に創設された世界最大の慈善基金団体である。
2006年にはウォーレン・バフェットの300億ドルにのぼる寄附により財団の規模が倍増した(後述)。
世界における病気・貧困への挑戦を主な目的としているが、特にアメリカ国内においては教育やITに接する機会を提供する活動を行っている。

ワシントン州シアトルに本部を置き、ビル・ゲイツ、メリンダ・ゲイツ、ビル・ゲイツ・シニア(ビルの父)の3人の共同議長により運営されている。
財団の理事は、主要な寄付者であるゲイツ夫妻とバフェットの3人である。
また、マイクロソフトの元幹部ジェフ・レイクス、スーザン・デスモンド・ヘルマンが歴代CEOを務めてきた。
2020年2月1日よりマーク・スズマンがCEOである[2]。日本の報道機関はゲイツ財団または、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団と表記する。

活動概要
2000年の創設以来、「全ての生命の価値は等しい(ALL LIVES HAVE EQUAL VALUE)」との信念のもと、ゲイツ財団は全ての人々が健康で豊かな生活を送るための支援を実施してきている。具体的には、国際開発プログラム、グローバルヘルスプログラム、米国プログラムの3つのプログラムを展開するほか、僅かではあるが慈善支援も実施している。

国際開発プログラム
国際開発プログラムは、途上国の人々が飢餓と貧困を克服する機会を与えることを目的としている。
農業開発、貧困層への金融サービス、水・衛生整備支援といった、より多くの人々に対して持続可能で成果が上がる支援を中心として、パートナー機関と共に支援を実施している。また、世界の深刻な貧困根絶を促進するため政策アドボカシ―支援も実施している。

グローバルヘルスプログラム
グローバルヘルスプログラムでは、途上国における主要な疾病に対して科学技術の進歩を活用した革新的な支援を実施することを目指している。発見・普及・政策アドボカシ―を重視し、特にワクチンや医薬品、診断方法の確立と普及を通じた感染症と家族保健の改善を目指している。

直近の活動としては、2011年8月に日本政府との官民パートナーシップのもと、約50億円のパキスタンにおけるポリオ根絶支援を発表した。これは、パキスタン政府によってポリオ根絶事業が一定の成果を出すことができれば、ゲイツ財団がパキスタン政府に代わって日本政府に債務を返済するという「ローン・コンバージョン」と呼ばれる革新的手法を用いたポリオ根絶のための取組で、誰もが願う『ポリオがない世界』を達成するための一助となる。

2010年、ライオンズとライオンズクラブ国際財団(LCIF)は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団よりエチオピア、マダガスカル、マリ、ナイジェリアの特定4地域でのはしか撲滅を支援するための初期交付金を支給された。
この試験的取り組みに参加したライオンズは、次の3つの主要分野の活動に的を絞った。

地元、地域および国レベルでの支援活動
ソーシャル・マーケティングと社会的動員への直接関与
経済的支援
ライオンズとのはしかイニシアチブ・パートナーによる活動は大成功を収め、上記4か国で予防接種を受けた子供たちの数は4,100万人になった。

ゲイツ財団は、この試験的取り組みの成功と世界中の地域社会でライオンズが果たす役割に鑑み、2011年10月、ライオンズにチャレンジ援助金500万ドルを授与した。
はしか撲滅運動に総額1,500万ドルを提供するというもので、ライオンズとLCIFには1,000万ドルの資金援助が求められていた。
ライオンズは、2012年10月にこのチャレンジを達成し、2012年に1億5,000万人以上の子供たちにはしかの予防接種を行う支援を行った。

2019年現在では、下水道普及率の低いアフリカの都市で、汲取式トイレの汚水槽をバキュームカーで汲み取り、コレラなどの伝染病のリスクの低減させるプログラムにも貢献している。

米国プログラム
米国プログラムでは、全ての米国国民に中等・高等教育の機会を与えることを目的として、高等教育に関係する様々な支援や図書館を通じたパソコンやインターネットの普及、太平洋岸北西部における貧困層に対する支援などをパートナー機関と共に実施している。
また、世論の喚起や政策へのインプットなどのためのアドボカシーも実施している。


非正規雇用とは?貧困化につながりかねない実態や問題点を紹介

2022年01月27日 10時07分31秒 | 社会・文化・政治・経済

2021/03/23 あしたの人事

コロナ禍の影響もあり、社会的格差が広がっていますが、2020年の雇用状況は、景気の悪化により、非正規雇用を減らす一方で将来に向けた人材の確保を目的とした正規社員を維持する傾向がありました。

また、非正規社員は休業手当が払われず、事実上の退職に追い込まれたというケースも少なくありません。

2020年の4月1日から、既に大企業では適用されている同一労働同一賃金ガイドラインですが、2021年4月1日からは中小企業にも適用されます。このガイドラインは、正規社員か非正規社員かという雇用形態に関わらず均等、均衡待遇を確保して同一労働同一賃金の実現を目指したものです。

今後は、雇用形態や勤務時間に関わらず、勤務態度や能力による人事評価制度にも注目することが大切です。この記事では、非正規雇用の実態や問題点と是正策、今後の課題などを検討してみます。

非正規雇用の主な種類
非正規雇用には、いくつかの呼び方や働き方があります。まずは、それぞれの違いや特徴について解説します。

契約社員
契約社員と正規社員との主な違いとして、雇用期間が挙げられます。契約社員は、労働契約の際にあらかじめ雇用期間を労働者と企業の間で取り決めます。労働者や業務内容によっても異なりますが、契約期間1回の一般的な上限は3年です。

このように、契約期間の満了によって労働契約が終了となります。契約期間以外にも、労働組合の参加の有無、退職金や給与体系等に関しても正規社員と異なるケースがあります。

派遣労働者
派遣労働者は、人材派遣会社と労働者が契約する働き方です。したがって、人材派遣会社が派遣先企業に労働者を派遣します。それにより、派遣先企業の指揮命令の下で労働者が働くことになります。例えば、業務中に起きた事故やトラブルの問題などのルールは、労働派遣法において定められています。

パートタイム労働者
パートタイム労働者は、一般的に「パート」や「アルバイト」と呼ばれています。正規社員と比較して一週間の所定労働時間が短いことが特徴です。呼び方が異なっても、条件があてはまればパートタイム労働者となります。

また、雇用ルールや昇給、退職手当や賞与について、雇い入れの際に明示することが「パートタイム労働法」で義務付けられています。

正社員と非正規社員の「不合理な相違」とは
事例:日本郵便に一部勝訴
2017年9月14日、日本郵便で契約社員の男性3人が正社員と同じ仕事をしているが手当などに格差があるのは違法として、約1,500万円の損害賠償を求めました。訴訟の判決においては、東京地裁は訴えの一部を認めました。

判決によれば、住居手当や有給の病気休暇がないことなどは「不合理な労働条件の相違に当たる」と判断し、計約92万円の賠償を日本郵便に命じたのです。

不合理な待遇の違いを禁止する改正労働契約法
2013年に施行された改正労働契約法は、正社員と非正規社員の不合理な待遇の違いを禁止しています。契約社員に、正社員と比べて住居手当や有給の病気休暇がないことを違法と断じた判決は今回が初めてです。こういう不合理な社会的格差の実態が、まだ現実には非正規雇用にあり、裁判所も明確に違法だとしています。

2021年正規社員が増えた理由と実態
2021年は、コロナ禍の影響もあり、経済状況は不安定だったにもかかわらず、正規社員の雇用がプラスとなっています。

理由としては、コロナ禍以前より人手不足の傾向にあった上に、今後の人口減少に備えて中核となる人材を確保するニーズが強まったと考えられています。反対に、企業は非正規労働者を大きく減らすケースがみられました。

厚生労働省の集計では、新型コロナウイルス感染拡大に関する解雇や雇止め7万9608人のうち、非正規社員が少なくとも3万8人を占めていることが分かり、今後非正規社員が受ける影響がますます懸念されています。

ただし、非正規で雇用されることのすべてがデメリットというわけではありません。非正規雇用されることのメリットも知っておきましょう。

非正規雇用のメリット「非正規雇用ならではの柔軟で多様な働き方」
労働者側にも正社員より柔軟で多様な働き方ができるというメリットがあります。

正社員の場合、1日8時間、週5日で40時間という時間が多くの企業で基本となりますが、非正規雇用の社員の場合は1日あたりの労働時間が短くなったり、出退勤の時間が変動することで、子育てや介護などがしやすくなるというメリットが生まれます。

非正規雇用が増加することで生じる問題点
自ら望んで非正規雇用になる場合を除き、不本意ながら正社員になりたくてもなれない非正規社員が増え続けると、ますます社会的な格差が広がるという問題がでてくるでしょう。

総務省の「労働力調査」によると、非正規で働いている社員の中で、実際には正社員を望んでいるという「不本意非正規雇用労働者」の人数は、2019年は236万人で前年比-23万人減少しています。しかし、不本意非正規だった人で、翌年に正規社員になったという人は、10%程度にとどまっています。

不本意非正規の割合を減らすには、正規雇用に転換していくことが重要ですが、たとえ非正規雇用のままでも本人の納得度を深める必要があります。同一労働同一賃金ガイドラインが制定されるなか、非正規社員に対しても正しい評価を行うことが大切です。

非正規社員と正社員の格差の是正と問題
非正規社員には、低賃金や不安定な雇用のほか、能力アップの機会が少ないなどの問題が挙げられます。国税庁の2019年民間給与実態統計調査では、正規雇用の平均給与が503万円に対し、非正規雇用が175万円となっており、と正社員の平均給与差は328万円でした。

この格差から、「結婚したくてもできない」「子どもが欲しくても産めない」など大きな社会問題となっている少子高齢化とも無関係ではないことがわかるでしょう。格差の拡大は一般消費者の購買力を低下させ、景気の悪化から企業の利益が減少するという悪循環に陥ります。

企業では、有期雇用の非正規社員がアップすることで長期的な展望での人材育成ができず、継続的な経済成長を脅かしています。そこには、かつて世界をリードしたようなイノベーション(技術革新)を生み出すような気風も育ちません。

政府の「働き方改革」の柱となる「同一賃金同一労働」などの施策で、早急な改善が望まれるところですが、厚生労働省は2016年1月に「正社員転換・待遇改善実現プラン」を発表しました。

これは非正規社員の希望や意欲、能力に応じて正社員への転換や待遇改善を長期的に図るもので、企業にも取り組みが求められます。雇用の質だけでなく、生産性の向上にも寄与するもので、2016年4月~2021年3月までの5年を計画期間として実施されています。

非正規雇用とこれからの時間外労働
時間外労働の上限規制も、非正規社員増加の大きな要因の一つです。

2019年4月に施行された働き方改革関連法では、残業は年間720時間以内、単月では100時間未満に制限され、違反した場合には事業者に罰金などが科されます。そのため、正社員が稼働できない部分を非正規社員で補おうとする動きが顕著となりました。