
今日の「お気に入り」は、中野孝次著「人生の実りの言葉」(文春文庫)から印象に残った言葉を二つ。
ひとつは、広津和郎「桃子への遺書」にあるという言葉です。
「生まれた以上、生きるといふことは、生きる本人の問題である。さう思つて何にもめげずに生きて行くべきであると思ふ。」
もうひとつは、尾崎一雄の小説「痩せた雄鶏」の中に出てくるという言葉です。
「疲れたら憩むがよい、彼らもまた、遠くはゆくまい。」
この言葉について、作家の中野孝次さんはご自身の経験に照らして次のように書いておられます。
「人生では少し遅れたってどうということはない。自分がハンディキャップを負って遅れたのなら、それを克服してから行けばいいのだ。ずっと先に行っているかに見えた彼らだって、そう遠くへ行っていたわけではなかった。むしろハンディを負った人間の方が、そのことでいろんな人生を体験し、順調組より成熟しているかもしれないではないか。」

