「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2013・08・28

2013-08-28 07:20:00 | Weblog
今日の「お気に入り」は、久世光彦さん(1935-2006)のエッセー「幻景二題」より。

「もう三十年、私はテレビドラマでさまざまな絵を撮ってきた。男の絵もあり、女の絵もあった。幸せの風景も撮ったし、絶望の心も撮った。けれど、春峰のペンキ絵に勝る人生の不思議も、『満願』の泣きたくなるほどの幸せも、私には撮った覚えがない。もし、私の中の、この二つの幻景と肩を並べられるものがある日撮れたら、そう自分で思えたら、その瞬間に私はいまの仕事をやめてもいいと思っている。
                                     (『CEL』91年5月)」

(久世光彦著「むかし卓袱台があったころ」ちくま文庫 所収)

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