今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。再録。
「どうしてこんな話が受けるかというと、おしんは修身のかたまりだからである。社会主義国にせよ資本主義国にせよ修身のない国はないのに、ひとりわが国にはない。修身を復活させようとすると新聞が必ず邪魔をする。
実を言うと新聞の『天声人語』『余録』のたぐいは現代の修身なのである。あれには書いた当人が決して実行しない、またするつもりもない立派なことばかり書いてある。だから新聞は修身科復活と聞くと、自分のお株を奪われやしまいかと反対するのである。
いくら反対しても人は修身を欲することをやめない。おしんは久々で天下晴れて見られる修身の権化である。
〔Ⅲ『限りある身の力ためさん』昭58・8・11〕」
(山本夏彦著「ひとことで言う‐山本夏彦箴言集」新潮社刊 所収)
Estimated noncombatant (mostly civilian) death toll:
over 100,000 killed by the U.S. air raid (fire bombing) of Tokyo on March 10, 1945
cf. Estimated death toll:
90,000~166,000 killed by the U.S. atomic bombing of Hiroshima on August 6, 1945
60,000~80,000 killed by the U.S. atomic bombing of Nagasaki on August 9, 1945
I offer a silent prayer for the indivisual dead.
「どうしてこんな話が受けるかというと、おしんは修身のかたまりだからである。社会主義国にせよ資本主義国にせよ修身のない国はないのに、ひとりわが国にはない。修身を復活させようとすると新聞が必ず邪魔をする。
実を言うと新聞の『天声人語』『余録』のたぐいは現代の修身なのである。あれには書いた当人が決して実行しない、またするつもりもない立派なことばかり書いてある。だから新聞は修身科復活と聞くと、自分のお株を奪われやしまいかと反対するのである。
いくら反対しても人は修身を欲することをやめない。おしんは久々で天下晴れて見られる修身の権化である。
〔Ⅲ『限りある身の力ためさん』昭58・8・11〕」
(山本夏彦著「ひとことで言う‐山本夏彦箴言集」新潮社刊 所収)
Estimated noncombatant (mostly civilian) death toll:
over 100,000 killed by the U.S. air raid (fire bombing) of Tokyo on March 10, 1945
cf. Estimated death toll:
90,000~166,000 killed by the U.S. atomic bombing of Hiroshima on August 6, 1945
60,000~80,000 killed by the U.S. atomic bombing of Nagasaki on August 9, 1945
I offer a silent prayer for the indivisual dead.
今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。再録。
「文字は言葉の影法師だとギリシャ人は見ていた。ソクラテスもイエスも問答しただけで自分は書いてない。書いたのは弟子たちである。本を読むのは死んだ人と話をすることだ。死んだ人は返事をしない。十年二十年たって読み返すとハタと思い当る。すでに書いてあるのを発見してようやく問答がなりたったのだ。
人間の知恵は古典に尽きている。それに加える何ものも現代人にはない。学ブニシカザル也と古人はそこまで言っている。けれども同じことでも同時代人の口から聞くのはまた格別である。だから本は少しは出てもいい。そんな本でも読む人は稀である。
〔Ⅹ『本屋近くつぶれる』平11・4・8〕」
(山本夏彦著「ひとことで言う‐山本夏彦箴言集」新潮社刊)
今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。再録。
「この世の中にニュースはない。テレビは百害あって一利がないと、私は何回も何十回も言ったが、聞いてはもらえなかった。
『敵軍は指呼(しこ)の間に迫りました。すでに乱入してドアを蹴破る音は近づいています。これが最後の放送になるでしょう。けれども私たちはまたまたマイクの前に立つ日が来ることを信じて疑いません。その日まで皆さんさようなら』
ポーランドでチェコでハンガリーで、私たちは何度同じラジオを聞いたことだろう。
『航空機は羽田を離陸して十なん時間になります。もう燃料は尽きているはずです。連絡はまったくありません。遺族は続々つめかけ叫んでいます。会社には誠意のかけらもない。社長を出せ社長をと』
つめよる遺族の顔つき口もと二十年前十年前のそれと全く同じである。人はこの世にニュースがないのに耐えられないのである。五年前の十年前の墜落事故と違う証拠に故人の写真をほしがるのである。ほらこの通り住所氏名が違うと言いたいのだろうがそれが違いだろうか。
〔Ⅹ『二十年ぶんのテレビを見る』平10・5・21〕」
(山本夏彦著「ひとことで言う‐山本夏彦箴言集」新潮社刊 所収)