小学生時代の私は、大変な引込み思案で、いつも人の陰に隠れていた。
そして、一日目立たずに暮らしていければ、それで幸せと思うような子供だった。
そんな私の夏休みの自由研究が、なぜか先生の目に留まり、
学校の講堂で発表することになった。
発表会の前夜、「そんなことできない!!」とゴネる私に、父はこんな話をした。
まだ私が幼稚園に上がる前のことだ。
父が会社から帰って来ると、家の前に人だかりができていた。
何事かと思って覗き込むと、ミカン箱に乗った私が大声で近所の人に、
覚えたばかりの「桃太郎」や「舌切りすずめ」の話を聞かせていたという。
その堂々たる話ぶりに、
「この子は将来、社会運動家にでもなるのではないか?」
と両親は本気で心配したらしい。
「あの時、あんなことができたんだから、おまえならできるよ。」
と父は言った。
そして、私は緊張しながらも、全児童の前で発表を終えた。
父の言葉は、今でも節目節目に私の耳に届く。
野菜ソムリエのプレゼンテーションの試験の時も、
初めてパワーポイントを使って230人の前で講演した時も、
父の言葉が私を支えてくれた。
今日は、父の命日。
お墓の花を替えていたら、いつものようにふわりと風が吹いた。
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