すかいらーくのちょい飲みも好調です。運営するガストでは、ちょい飲み需要を取り込むために、平日の15時~18時でビールは税抜き449円から同249円に割り引く「ハッピーアワー」を導入しています。
運営するバーミヤンでも、平日の14時~18時でビールは税抜き450円から同200円に割り引く「ハッピーアワー」を導入しています。バーミヤンではボトルキープもできます。
また、バーミヤンの専用アプリをダウンロードすると、餃子が税抜き239円が同83円に割り引きになるクーポンが発行されます(初回のみ)。「おつまみ3種盛り」といったお酒のつまみになるメニューが割り引きになるクーポンなども豊富にあり、アプリのクーポンでちょい飲み需要を開拓しています。
すかいらーくの2016年12月期決算は、売上高は前年比1.0%増の3,545億円、営業利益は12.4%増の312億円です。増収増益です。ちょい飲みが好調な業績を支える一翼を担ったといえるでしょう。
コンビニでもちょい飲みができるところがあります。ミニストップは、店内でお酒が飲めるイートイン併設の新業態店「cisca(シスカ)」を拡大しています。2014年9月に1号店となる「cisca 日本橋本町店」をオープンしたのを皮切りに、店舗数を拡大しています。
シスカはカフェをベースとしていますが、輸入・国産ワインなどのアルコール類やチーズ、輸入菓子なども取り揃え、ちょい飲みの場としても利用できるようになっています。2月24日のプレミアムフライデー時に、1,000円でビールが1時間飲み放題となるちょい飲みの企画を実施するなど、ちょい飲み需要の開拓を積極的に行なっています。
ちょい飲みは定着しつつあります。キリン食生活文化研究所が2015年に約1万人を対象に行った調査によると、ちょい飲みを行なったことがある人は全体の33%にもなるといいます。
ちょい飲みの特徴としては、時間が「1時間以内」が94%、金額が「1,000円以内」が84%、人数は「1人」が19%、「2人」が40%です。「気軽さ」がキーワードといえるでしょう。そして、ちょい飲みをしたいと答えた人は85%にもなります。ちょい飲み市場は有望といえそうです。
そうなると、ちょい飲み市場の拡大で守勢に立たされるのが「居酒屋」になるでしょう。若者のアルコール離れや消費者のニーズの多様化により居酒屋市場の規模は伸び悩んでいます。特に総合居酒屋は衰退の一途をたどっています。
居酒屋は基本的に気軽に利用できる仕組みにはなっていません。「お通し」が半ば強制的に出され、料金を支払わなければならないシステムの店が大半です。立地はビルの2階以上の階や地下に位置することも少なくありあません。そのため、気軽に立ち寄って、低価格で楽しむのには適していないといえるでしょう。
苦戦が伝えられる居酒屋業界ですが、気を吐いているのが「鳥貴族」などの激安居酒屋です。鳥貴族の2016年7月期決算は、売上高は前年比31.3%増の245億円、営業利益は42.7%増の15億円です。増収増益です。
鳥貴族は「税抜き280円均一」という低価格でわかりやすい料金体系を売りにしています。「お通し」もありません。セントラルキッチンを保有せず、各店舗で仕込みを行うことで鮮度の高い商品を提供しています。競争が激しい居酒屋業界でも異彩を放っているといえます。
ただ鳥貴族でも、ちょい飲み市場の拡大の影響がないというわけではなさそうです。気軽に立ち寄って飲みたい人は増えています。一方、鳥貴族は駅から少し離れたビルの2階以上の階や地下での出店が基本です。利便性が高いとはいえません。そのため、利便性の面ではちょい飲み市場と競合するといえるでしょう。
とはいえ、鳥貴族は成長段階にあるため、ちょい飲み市場の拡大で多少の需要は奪われたとしても、当面は快進撃が続くでしょう。ただ、競争の激化が始まっていることには変わりはありません。いつの間にか、吉野家やファミレスに顧客を奪われるとも限りません。激安居酒屋を含めたちょい飲み戦争の戦線は拡大していくことでしょう。今後のちょい飲み市場の行方に注目が集まります。