映画53;『劔岳 点の記』
お勧め度 ★★★★★ ★★★★☆
満足度 ★★★★★ ★★★☆☆
映画「劔岳 点の記」製作委員会
2009年 日本 139分
木村大作 監督
キャスト
浅野忠信 香川照之 松田龍平 宮崎あおい 仲村トオル 役所広司 他
テレビで『劔岳 点の記』を見る。
『劔岳 点の記』は全体を通して面白かったし満足のいくものだった。
映像は美しいし、話の展開も期待通り。 映画の文法を踏んだこの作品は安心してみることができる。
音楽も美しい。
すききらいに二分すれば、即答で好きと答えるだろう。
手放しに満足かといえば、そうでもない。
映画のタイトルは 縦書き二行 右から左書き
ところが映画説明は 縦書きで 左から縦列 右に向けて書かれていた。
また、映画途中の「測量記録」(松田龍平)は横書き左から右に向けてノートに書き記していた。
わたしは詳しくは知らないが、明治40年の入内をあらわしたこの作品ではどうなのだろうと考えてしまう。
こういうことが気になり始めると、衣服や俳優が明治の話には見えなくなってしまう危険性を孕む。
一週間山に入り歩くだけでも衣服の状態やカラダの汚れや日焼けや疲労は相当なものだ。
しかしこの映画では髭はのびているが、上のような経過がほとんど感じられず、各俳優の美しさを保っている。
俳優は上手い人たちを起用しているが、皆がそれぞれに何か言いたげな表情をつくり、それぞれの俳優の個性が生かされない感じさえするのが残念。
一旦この病に陥ってしまうと、素晴らしいなと思い感動している自分と、若干しらけた自分の互いを天秤にかけながら、第三者的な立場で見ている自分に気づく。
しかしこういった病は、嫌いな関心の無い映画では生じ得ない感情だ。
では一体この映画に対し、どう思っているのか。
色々気になる部分はあるが、答えは好みの映画である。
山に対する人々の思い、信仰、掟。
こういったものがこの映画を重厚につくりあげる。
そして掟破りの劔岳登頂を行者は1000年も前に成し遂げていたということの意味深さは興味深く感じる。
ラスト近くの香川照之の表情の良さにも拍手を送りたい。