記録だけ
2010年度 58冊目
『幻の鎌倉』
批評社
宇苗 満 (ウナエミチル)著
164ページ 2000円 +税
2008年 05月 第1版
以前『おとなの鎌倉散歩 「花と祭」』を楽しんだ際、親切な鎌倉のみなさまに いろいろとご指導いただいた。
心から感謝していたわたしは、心の中に『幻の鎌倉』能登も鮪を持ち続けていた。
今回は鎌倉のみなさんが信頼し合いしておられるお写真の美しい宇苗 満先生が書き上げられた『幻の鎌倉』を楽しむことにした。
『幻の鎌倉』葉写真集だと思っていたが、わたしの想像とは全く違う。
まず ぱらぱらと本を開けてみると、地図が面白い。
目次も興味深い。
主版社から紹介されている目次を紹介しておこう。
目次
第一章 幻の鎌倉
[鎌倉の都市風景]
第二章 鎌倉時代
[鶴岡八幡宮・荏柄天神社・源頼朝公墓・白山神社・高徳院(鎌倉大仏)・光照寺・天園・北条高時腹切やぐら・宝戒寺]
第三章 室町時代・安土桃山時代
[鎌倉宮・建長寺・円覚寺・寿福寺・浄智寺・浄妙寺・瑞泉寺・東慶寺・報国寺]
第四章 江戸時代
[円応寺・大巧寺・海蔵寺・来迎寺・瑞泉寺・杉本寺・光触寺・長谷寺・常楽寺・今泉不動・英勝寺・江島神社(江の島)]
第五章 明治時代・大正時代
[葛原岡神社・青蓮寺・瑞泉寺]
第六章 現代の鎌倉
[鎌倉再生都市計画の提案]
現代に残る祭礼<無形文化財>
寺社データ<パワースポット>
ざっと本書を見渡す中で、いくつかの目を惹く項目があった。
先日子のブログでも記録した江ノ島の『天女と五頭竜伝説』 である。
文様(聖獣文様や龍も含む)の好きな私は、本書を読む前に、まずこれに着いて調べることにした。
話を戻そう。
『幻の鎌倉』はたいへん面白い。
歴史の苦手な私でも、一気に読むことができた。
付箋を付けた数、なんと21ヶ所。
鎌倉を愛し、深く記された本書は心地よく、鎌倉の魅力を十分に伝えてくれる。
著者の鎌倉を選んだ理由の始まり、鎌倉のアウトラインや歴史的流れを説明。
寺院やその地などの由来や伝承はわたしの興味深い部分だ。
京都や奈良との関連性をひもときながらの鎌倉の歴史や伝承や昔からの呪術的要素も含むと思われる鎌倉幕府の鎌倉を造りを説明し、さらに 現在の再生都市計画に至る本書。
それは、建築家の視線と写真家の視線など多角的にとらえられ、読者の心をしっかりとひきつける。
鎌倉時代の墓所はイランの岩に彫られた浮き彫りのある部分に四角に彫られた石棺置き場のそれに共通。
「百八やぐら」の写真をみて、また 「わめき十王岩」の写真をみて、そんなことを感じる。
「百八やぐら」の形態はイランのそれと類似する。
鎌倉は三方山に囲まれており、平地が少ないらしい。
鎌倉時代には上層階級でも墓地の所有が許されず、山の側面を彫って「やぐら」と称される遺体安置所に葬っていたという。
こういった経緯はイランのそれとは異なる。
やぐらとは、いろいろな意味に使われるが、こういった使われ方は大辞典には無い(多分?間違いであればお許し下さい))ので、興味深い。
庶民はこういったやぐらには頬無ることができず、由比ケ浜海岸や「わめき十王岩」の前におかれるといった 風葬や鳥葬が行われていたという。
風葬や鳥葬においては鎌倉だけではなく、京都でも何ヶ所かで行われていた。
ついでと言っては何だが、去年9月にみたイランのヤズドの鳥葬場所のほんの一部を紹介しておくことにする。
109ページの「鎌倉藤沢長史弾左衛門頼兼写シ」は、鎌倉限定ではなかったが、職業における民俗学的見解をひもといたものを読んだことがあり、興味深く読む。
「鎌倉藤沢長史弾左衛門頼兼写シ」を見ると全国的に職業における位置づけにおいては、さほど大きな変わりはないように感じた。
ただその位置づけにおいては、『幻の鎌倉』では直球では触れられてないし、触れる必要も無いことだと感じる。
縁切寺、駆け込み寺の話(62ページから)は民俗学でも度々取り上げられるが、本書ではより具体的であった。
冥加金(みょうがきん)は、より厳しく記されている。
また、別書には、縁切寺、駆け込み寺の生活に耐えかねて途中辞退する人も多いと書かれていた。
いずれにせよ、当時の女性の苦悩が伺われる。
『幻の鎌倉』はいろいろな方面から鎌倉を描かれ、鎌倉の魅力に触れることのできる本だと感じる。
わたしの場合は、『おとなの鎌倉散歩 「花と祭」』でも感じた数々の「切り通し」に行ってみたいと感じる。
『幻の鎌倉』に載せられた地図などを見てはなおさらである。
加えて、伝承をふまえながら寺院なども歩いてみたいと感じた。
先ほども触れたが、著者の鎌倉再生都市の考え方は共感を覚える。
「時間性=歴史性」と「時間性=空間性」の相関関係から鎌倉をとらえる著者 宇苗 満 先生の素晴らしい構想が理解のいくものであると同時に、これは鎌倉ばかりでなく他の歴史ある土地にもいえることなのではないかと、ふとそんなことを感じた良書でした。
著者紹介 ▼ (本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
宇苗満[ウナエミチル]
宇苗満空間工房代表。建築家・写真家。(社)日本建築学会会員。(社)日本写真家協会会員。フォトマスターEX(総合)。1961年:北海道奥尻郡奥尻町青苗(奥尻島)生まれ。現在、鎌倉に関する執筆多数。
最後になりましたが、『幻の鎌倉』をお教え下さいました鎌倉にお住まいの
鎌倉・有風亭 様
真理子 様
NPO法人 鎌倉ガイド人 様
道々の輩 様
ありがとうございました。 心より感謝申し上げます。
わたくしの力不足で見失ってしまった部分も多く、申し訳ございません。
今回書ききれないくらい多くの興味深いことが記されていました。
ここでは本の一部分でしかありません。
何も知らないわたくしが『幻の鎌倉』の読了記録する失礼をお許し下さい。
もし間違いやお気づきの・画ございましたら、お教え下さいましたら嬉しいです。
また、気がつかない部分も多くありますでしょう。おしかりなどは、気軽にお申し付け下さいませ。
鎌倉は素晴らしいところだと改めて感じました。
鎌倉にお住まいの方々の鎌倉に対する思いは計り知れないものがありますでしょうし、難しいことはわかりませんが、できれば観光で有名な部分も、少し奥に入った鎌倉もみてみたいと感じました。
これからの鎌倉の後清栄を祈願し、旅することを夢みて
ありがとうございました と、もう一度いわせて下さい。
乱鳥合掌 2010年4月19日