子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「だれもが愛しいチャンピオン」:根性とも勝利至上主義とも無縁なのに泣かせるクライマックス
今年のお正月映画は凄い。興行収入の年間トップを争うであろうヒット作(「アナと雪の女王2」「S.W.エピソードⅨ」など)がクリスマス・シーズンから年を跨いで上映されていることに加え,「パラサイト 半地下の家族」や「フォードvsフェラーリ」,「ジョジョ・ラビット」など,既に欧米の賞レースを賑わせている秀作が一挙に公開されている。特にアメリカでは,オスカー狙いの芸術路線作が年末に公開されることが多いため,日本ではこれらの公開がオスカー発表後になることが多いのだが,近年はNetflixを筆頭とする配信専用・先行作品に高い評価が寄せられることも影響してか,公開時差は縮まる傾向にあるような気がする。
そんな秀作群の隙間を縫って公開されたスペイン映画「だれもが愛しいチャンピオン」だが,クライマックスの感動は,芸術面で世界中から高い評価を受けた秀作群に勝るとも劣らない。間違いなく,今年のお正月映画のダークホースと言える存在だ。
物語は実にシンプル。短気が災いしてチームを追われたプロ・バスケットのコーチであるマルコ(ハビエル・グティエレス)が,飲酒運転の罰として知的障がい者のチーム・アミーゴスを教える,という社会奉仕を命じられる。初めは何故プロ・コーチの自分が,こんなレヴェルの低い仕事をしなければならないのかと困惑するマルコだったが,やがてチームメンバーの純粋さと自分に寄せる信頼に動かされて熱が入って行くうちに,チームは強くなり,優勝争いの真っ只中へと突き進んでいく。
最初は組織の体を成していない弱体チームが,一見やる気がないように見えるコーチの力を得て,次第に選手個々人の個性を活かしてまとまっていくと同時に勝ち進んでいく。マイケル・リッチーの「がんばれベアーズ」以来,スポーツを題材とした一連の作品の定番とも言えるプロットは,必ず一定のレヴェルの楽しさと興奮を与えてくれるという安心感を内包していると同時に,サプライズはないのがお約束だ。ジョージ・ロイ=ヒルがポール・ニューマンと組んだ「スラップショット」は,そこに一捻りを加えて,「勝負の綾」という重要な要素を突き放してみせたのだが,成功を収めたとは言い難かった。
ところがその基本プロットを踏襲している本作のエンディングは,勝利の価値をしっかりと認めた上で,これまでの「お約束」を超える次元のカタルシスを味あわせてくれるのだ。
それを生み出したのは,オーディションで選ばれた実際に障がいを持つ役者たちの素晴らしい演技の数々だ。彼らにあて書きされたという役柄や巧みな台詞の効果もあって,ありふれた表現だが,文字通りその純粋さは胸を打つ。特に必殺技でチームを救うコジャンテスの生意気さは,「七人の侍」の菊千代を彷彿とさせる。
リオで連勝が止まり,表彰式で銀メダルを貰ってもなお泣きじゃくっていた吉田沙保里氏にこそ観て貰いたい秀作だ。
★★★★
(★★★★★が最高)
そんな秀作群の隙間を縫って公開されたスペイン映画「だれもが愛しいチャンピオン」だが,クライマックスの感動は,芸術面で世界中から高い評価を受けた秀作群に勝るとも劣らない。間違いなく,今年のお正月映画のダークホースと言える存在だ。
物語は実にシンプル。短気が災いしてチームを追われたプロ・バスケットのコーチであるマルコ(ハビエル・グティエレス)が,飲酒運転の罰として知的障がい者のチーム・アミーゴスを教える,という社会奉仕を命じられる。初めは何故プロ・コーチの自分が,こんなレヴェルの低い仕事をしなければならないのかと困惑するマルコだったが,やがてチームメンバーの純粋さと自分に寄せる信頼に動かされて熱が入って行くうちに,チームは強くなり,優勝争いの真っ只中へと突き進んでいく。
最初は組織の体を成していない弱体チームが,一見やる気がないように見えるコーチの力を得て,次第に選手個々人の個性を活かしてまとまっていくと同時に勝ち進んでいく。マイケル・リッチーの「がんばれベアーズ」以来,スポーツを題材とした一連の作品の定番とも言えるプロットは,必ず一定のレヴェルの楽しさと興奮を与えてくれるという安心感を内包していると同時に,サプライズはないのがお約束だ。ジョージ・ロイ=ヒルがポール・ニューマンと組んだ「スラップショット」は,そこに一捻りを加えて,「勝負の綾」という重要な要素を突き放してみせたのだが,成功を収めたとは言い難かった。
ところがその基本プロットを踏襲している本作のエンディングは,勝利の価値をしっかりと認めた上で,これまでの「お約束」を超える次元のカタルシスを味あわせてくれるのだ。
それを生み出したのは,オーディションで選ばれた実際に障がいを持つ役者たちの素晴らしい演技の数々だ。彼らにあて書きされたという役柄や巧みな台詞の効果もあって,ありふれた表現だが,文字通りその純粋さは胸を打つ。特に必殺技でチームを救うコジャンテスの生意気さは,「七人の侍」の菊千代を彷彿とさせる。
リオで連勝が止まり,表彰式で銀メダルを貰ってもなお泣きじゃくっていた吉田沙保里氏にこそ観て貰いたい秀作だ。
★★★★
(★★★★★が最高)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 映画「パラサ... | 映画「ジョジ... » |
コメント |
コメントはありません。 |
コメントを投稿する |
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません |