子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「ドラゴン・タトゥーの女」:最高水準の娯楽映画であることは間違いないのだが…
ワイド・スクリーンを活かしたシャープな構図。画面の隅々にまで行き届いた細やかな美意識を引き立てるトレント・レズナー(&アッティカス・ロス)の機械音。凍り付くような冷気を,グレーを基調とした色で鮮やかに表現したジョーダン・クローネンウェスのカメラ。記者,裁判で負けた経営者,探偵,そして父親という複数の顔を持つ主人公ミカエルを,コントロールを利かせたパフォーマンスで演じ切ったダニエル・クレイグ。長尺ものが続くデヴィッド・フィンチャー作品だが,長さを全く感じさせない引き締まった展開と編集は,「ソーシャル・ネットワーク」の好調振りを引き続き持続している。
原作者であるスティーグ・ラーソンが,娯楽映画が備えるべきすべての技術が最高水準で展開された「ドラゴン・タトゥーの女」を観ることなく亡くなったのは,返す返すも残念だ。
40年前に姿を消した大財閥の少女の行方を,財界汚職事件に関する報道裁判で敗訴した記者(ダニエル・クレイグ)と,謎を秘めた天才ハッカーのリスベット(ルーニー・マーラ)の二人が追う。本国スウェーデンで映画化された作品に続くフィンチャー版は,失踪した少女の真相を除いてほぼラーソンの原作を忠実に再現しながら,奥行きのある映像を展開していく。財閥一族が抱える闇に起因する物語が,リスベットのパーソナリティーを描くサブ・プロットによって補完されながら,次第に謎解きのスリルを加速させていく様は,物語を語る術を知り尽くした映像作家としてのフィンチャーの面目躍如だ。
特に出世作「セブン」にあった暗く猟期的な描写を,PCのモノクロの静止画像だけに留めることによって,物語の品位とスピードとを保ちながら,人間のおぞましい性を浮き上がらせていく手腕は,見事というほかない。
それほどに見事な作品ながら,観ていて興奮したかと問われれば,否と答えざるを得ない。それは何故か。理由は簡単だ。
先に記したように本作は本国で作られた作品のリメイクであり,そのオリジナル作品(ニールス・アルデン=オプレヴ監督作)がとてもよく出来た作品だった故の既視感が終始頭から離れなかったからだ。
フィンチャーがメガフォンを取るからには,何かオリジナルをぶっちぎるような新しいアイデアがあるに違いないと思わせておきながら,舞台はスウェーデンのまま,展開も同様,リスベットに関して言えば情念の表現力という点において明らかにオリジナル作のノオミ・ラパスに軍配が上がるとなれば,どんなに個々の映像のクオリティが上がったとしても,興奮することは難しい。
同様にスウェーデン作品「ぼくのエリ 200歳の少女」のリメイクに挑んだマット・リーヴスの「モールス」に比べれば,遥かに高いレヴェルのチャレンジだったことは認めつつも,★ひとつを減点して,
★★★☆
(★★★★★が最高)
原作者であるスティーグ・ラーソンが,娯楽映画が備えるべきすべての技術が最高水準で展開された「ドラゴン・タトゥーの女」を観ることなく亡くなったのは,返す返すも残念だ。
40年前に姿を消した大財閥の少女の行方を,財界汚職事件に関する報道裁判で敗訴した記者(ダニエル・クレイグ)と,謎を秘めた天才ハッカーのリスベット(ルーニー・マーラ)の二人が追う。本国スウェーデンで映画化された作品に続くフィンチャー版は,失踪した少女の真相を除いてほぼラーソンの原作を忠実に再現しながら,奥行きのある映像を展開していく。財閥一族が抱える闇に起因する物語が,リスベットのパーソナリティーを描くサブ・プロットによって補完されながら,次第に謎解きのスリルを加速させていく様は,物語を語る術を知り尽くした映像作家としてのフィンチャーの面目躍如だ。
特に出世作「セブン」にあった暗く猟期的な描写を,PCのモノクロの静止画像だけに留めることによって,物語の品位とスピードとを保ちながら,人間のおぞましい性を浮き上がらせていく手腕は,見事というほかない。
それほどに見事な作品ながら,観ていて興奮したかと問われれば,否と答えざるを得ない。それは何故か。理由は簡単だ。
先に記したように本作は本国で作られた作品のリメイクであり,そのオリジナル作品(ニールス・アルデン=オプレヴ監督作)がとてもよく出来た作品だった故の既視感が終始頭から離れなかったからだ。
フィンチャーがメガフォンを取るからには,何かオリジナルをぶっちぎるような新しいアイデアがあるに違いないと思わせておきながら,舞台はスウェーデンのまま,展開も同様,リスベットに関して言えば情念の表現力という点において明らかにオリジナル作のノオミ・ラパスに軍配が上がるとなれば,どんなに個々の映像のクオリティが上がったとしても,興奮することは難しい。
同様にスウェーデン作品「ぼくのエリ 200歳の少女」のリメイクに挑んだマット・リーヴスの「モールス」に比べれば,遥かに高いレヴェルのチャレンジだったことは認めつつも,★ひとつを減点して,
★★★☆
(★★★★★が最高)
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