「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズで,おたくアクション監督としての地位を確固たるものとしたジェームズ・ガンが,DC作品のディレクターとして帰ってきた。
過去の発言が問題視され,一時はMARVELからも追放されていたガンだが,最終的にカムバックを果たした一連の動きを見ると,東京2020開会式関連でボイコットされた関係者との違いは,発言の内容や質の差異は当然あったにせよ,一方が政治的な思惑に支配される国際的なイベントであったこと以上に,共演者を含む業界内外からの復帰要望の声の有無が大きかったように感じる。本作序盤におけるリーダー救出作戦の際の大量殺戮エピソードが象徴するように,表現内容が常に「過剰」や「ユーモアと残虐」の境界を敢えて綱渡りする作風であるだけに,今回の騒動がガンのメガホンの鋒を鈍らせるのではないかという危惧があったのだが,そんな心配は杞憂に終わった。「大きい方をしちゃった」ハーレイ・クインを先頭に編成されたチームの奮闘は,実写版の「進撃の巨人」を遥かに凌ぐ迫力で観客を串刺しにする。
ストーリーの起伏や大勢出てくるキャラクターの違いを活かした捻りで観客をドライブするような部分は殆どない。バトルシーンを盛り上げるような気の利いた台詞も聞かれない。映像の細部に関する拘りに比べるとシナリオは大味で,太い背骨となる物語の周りをキレの良いアクションが取り囲むような構造となっていたならば,もっと興奮しただろうにと思わないでもない。
けれども戦争映画から犯罪映画,カイジュー映画までジャンルを横断して繰り広げられる活劇としての熱量は圧倒的だ。特にラストのカイジュー映画パートについては,ハリウッド製の新ゴジラシリーズが,基本的に天上からの視線で捉えた巨大モンスターのバトルモードで語られているのに対して,逃げ惑う人間視線に降りてくることを選択したガン監督の英断には拍手を送りたい。主要キャラクターのひとりがあっと言う間に踏みつぶされてしまう描写の有無が,リアリティの獲得に繋がるか否かということを知っているオタク監督は強い。
とは言え,やはり最高に画面が躍動するのはマーゴット・ロビー演じるクインが,槍を武器に次々と相手を倒すシーンだろう。一分の躊躇いも見せずに,相手をなぎ倒す毎に極彩色の花が画面を埋め尽くすシーンの美しさこそが作品全体の肝であり,そのカタルシスを味わうためだけでも劇場に足を運ぶ価値はある。緊急事態宣言下で両隣の席が空いている今なら,クインの動きに合わせて腕を振り回しても問題なし!
★★★★
(★★★★★が最高)
過去の発言が問題視され,一時はMARVELからも追放されていたガンだが,最終的にカムバックを果たした一連の動きを見ると,東京2020開会式関連でボイコットされた関係者との違いは,発言の内容や質の差異は当然あったにせよ,一方が政治的な思惑に支配される国際的なイベントであったこと以上に,共演者を含む業界内外からの復帰要望の声の有無が大きかったように感じる。本作序盤におけるリーダー救出作戦の際の大量殺戮エピソードが象徴するように,表現内容が常に「過剰」や「ユーモアと残虐」の境界を敢えて綱渡りする作風であるだけに,今回の騒動がガンのメガホンの鋒を鈍らせるのではないかという危惧があったのだが,そんな心配は杞憂に終わった。「大きい方をしちゃった」ハーレイ・クインを先頭に編成されたチームの奮闘は,実写版の「進撃の巨人」を遥かに凌ぐ迫力で観客を串刺しにする。
ストーリーの起伏や大勢出てくるキャラクターの違いを活かした捻りで観客をドライブするような部分は殆どない。バトルシーンを盛り上げるような気の利いた台詞も聞かれない。映像の細部に関する拘りに比べるとシナリオは大味で,太い背骨となる物語の周りをキレの良いアクションが取り囲むような構造となっていたならば,もっと興奮しただろうにと思わないでもない。
けれども戦争映画から犯罪映画,カイジュー映画までジャンルを横断して繰り広げられる活劇としての熱量は圧倒的だ。特にラストのカイジュー映画パートについては,ハリウッド製の新ゴジラシリーズが,基本的に天上からの視線で捉えた巨大モンスターのバトルモードで語られているのに対して,逃げ惑う人間視線に降りてくることを選択したガン監督の英断には拍手を送りたい。主要キャラクターのひとりがあっと言う間に踏みつぶされてしまう描写の有無が,リアリティの獲得に繋がるか否かということを知っているオタク監督は強い。
とは言え,やはり最高に画面が躍動するのはマーゴット・ロビー演じるクインが,槍を武器に次々と相手を倒すシーンだろう。一分の躊躇いも見せずに,相手をなぎ倒す毎に極彩色の花が画面を埋め尽くすシーンの美しさこそが作品全体の肝であり,そのカタルシスを味わうためだけでも劇場に足を運ぶ価値はある。緊急事態宣言下で両隣の席が空いている今なら,クインの動きに合わせて腕を振り回しても問題なし!
★★★★
(★★★★★が最高)