子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「ヤング≒アダルト」:シャーリーズ・セロン嬢,都から故郷に帰るの巻
監督ジェイソン・ライトマンと脚本家ディアブロ・コディという「JUNO」の黄金コンビ復活!という割には,ほとんど話題にならずに消えてしまった(札幌での公開は終了)ようだ。だが作品自体は,先頃NHKでセカンドシーズンが放送された「glee」のチアガールのリーダー役だったクィンが,もしも出産も改心もしないままに卒業して上京していたとしたらこんなヒロインになっていたかもと思わせるような「痛い女」を,シャーリーズ・セロンがヴィヴッドに演じて,またしてもライトマン流人生の教訓を下から目線で描いた秀作だ。
ヒロインのメイビス(シャーリーズ・セロン)は田舎の高校から都会に出たまでは良かったものの,その類希なる美貌によって栄華を極めた高校時代の呪縛から逃れられず,ヤングアダルト小説のゴーストライターという「微妙な花形職業」を投げ打って,昔の恋人とよりを戻すべく故郷に戻る。
そう決心するきっかけが,恋人からの「子供が生まれました」メールだったという時点で,ヒロインの精神状態が「危険な情事」のキム・ベイシンガー状態に近いことが仄めかされる。しかしこの作品の巧みなところは,メイビスを完全に「イッちゃってる」状態にはさせないよう,冒頭から高校時代の冴えない同級生マットを彼女の傍に添わせていることだ。メイビスを心配するマットの存在が,故郷に帰ってきた都会人のカルチャー・ギャップを題材にした典型的な「帰郷もの」や,前述した「危険な情事」ものに陥ることを防ぐためのアンカーとして,実に有効に機能している。マットを演じたパットン・オズワルドの悲しみを湛えた懐の深い演技は,セロンの痛い美しさと互角に渡り合っている。
帰郷するメイビスが元カレから送られたカセットテープを再生するテープデッキを接写したタイトルバックや,足りなくなったプリンターのインクに悪態をつきながら唾液で補充したり,デートでは華麗に装う一方でプライヴェートではキティちゃんのトレーナーを嬉々として羽織るメイビスの造形力は,正に黄金コンビの仕事と唸らされる。ライトマンとのコンビも3作目となるエリック・スティールバーグのカメラも,シャープなライティングと安定した構図で,的確に物語を捉えている。
物語は予想通り,彼女の思い込みが暴走を始め,元カレの子供の名付けパーティーでメイビスが爆発するというクライマックスになだれ込むのだが,そんなメイビスをマットが優しく受け止め一夜を過ごした後に,マットの妹と交わす会話で真のクライマックスを迎える。覚醒と諦念を経たメイビスが,自分もミネアポリスに連れ出して欲しいと願うマットの妹に突きつける「あなたは此処に残りなさい」という台詞が胸に残る。
★★★★
(★★★★★が最高)
ヒロインのメイビス(シャーリーズ・セロン)は田舎の高校から都会に出たまでは良かったものの,その類希なる美貌によって栄華を極めた高校時代の呪縛から逃れられず,ヤングアダルト小説のゴーストライターという「微妙な花形職業」を投げ打って,昔の恋人とよりを戻すべく故郷に戻る。
そう決心するきっかけが,恋人からの「子供が生まれました」メールだったという時点で,ヒロインの精神状態が「危険な情事」のキム・ベイシンガー状態に近いことが仄めかされる。しかしこの作品の巧みなところは,メイビスを完全に「イッちゃってる」状態にはさせないよう,冒頭から高校時代の冴えない同級生マットを彼女の傍に添わせていることだ。メイビスを心配するマットの存在が,故郷に帰ってきた都会人のカルチャー・ギャップを題材にした典型的な「帰郷もの」や,前述した「危険な情事」ものに陥ることを防ぐためのアンカーとして,実に有効に機能している。マットを演じたパットン・オズワルドの悲しみを湛えた懐の深い演技は,セロンの痛い美しさと互角に渡り合っている。
帰郷するメイビスが元カレから送られたカセットテープを再生するテープデッキを接写したタイトルバックや,足りなくなったプリンターのインクに悪態をつきながら唾液で補充したり,デートでは華麗に装う一方でプライヴェートではキティちゃんのトレーナーを嬉々として羽織るメイビスの造形力は,正に黄金コンビの仕事と唸らされる。ライトマンとのコンビも3作目となるエリック・スティールバーグのカメラも,シャープなライティングと安定した構図で,的確に物語を捉えている。
物語は予想通り,彼女の思い込みが暴走を始め,元カレの子供の名付けパーティーでメイビスが爆発するというクライマックスになだれ込むのだが,そんなメイビスをマットが優しく受け止め一夜を過ごした後に,マットの妹と交わす会話で真のクライマックスを迎える。覚醒と諦念を経たメイビスが,自分もミネアポリスに連れ出して欲しいと願うマットの妹に突きつける「あなたは此処に残りなさい」という台詞が胸に残る。
★★★★
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