子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画「12-12-12 ニューヨーク,奇跡のライブ」:米国エンタ業界の懐の深さ

2015年03月28日 18時26分23秒 | 映画(新作レヴュー)
チャリティ電話を受け付ける有名人の一人として参加していた俳優のジェイク・ギレンホールが,掛けてきた相手がどうやら自分のことを知らないらしいと分かって,元ニューヨーク・ヤンキースの選手に電話を廻すシーンが印象的だ。勿論,カメラの存在を意識してという部分もあったのかもしれないが,自分のことを知らない一般人がいるなんて!という雰囲気は全くなく,逆に「せっかくチャリティをしてくれたのに,よりによって僕なんかが電話に出ちゃって御免なさいね」という温かい風情が,チャリティが自然な行為として根付いている米国社会のリアリティを写し出していて,いろいろと考えさせられた。

東日本大震災から1年半を経た2012年10月にアメリカ東海岸を襲ったハリケーン・サンディの被災地救済イヴェントの記録映画。
制作総指揮にイギリス人のポール・マッカートニーが就き,ニルヴァーナをバックに美味しいところを浚うというクライマックスに向けて,大勢のミュージシャンが入れ替わり立ち替わりステージに上がって,順列組み合わせで様々なコラボレーションを繰り広げる。合間には救助に当たった消防隊のエピソードや,ハリケーン襲来時の記録映像,更には短期間でイヴェントを立ち上げた舞台裏のドキュメントなどが挟み込まれるため,完全収録された演奏シーンはほんの一握りだけ。
イヴェントの熱気やアーティストの想いは充分に伝わってくるものの,クリス・マーティンが「一人じゃ寂しいので」と言ってマイケル・スタイプをステージに上げて歌ったシーンや,地元のヒーロー,エディ・ヴェーダー(パール・ジャム)がピンク・フロイドと競演したシーンなどは,もっとじっくりと観たかったという不満は残る。

その一方で,俳優のアダム・サンドラーがこのイヴェントのために作って歌った歌の歌詞に「○○○された後で『私,実は昔,男だったの』と告白されたことがある。その試練を思えば,サンディの被害からだって,きっと立ち直れるさ!」という一節があった。避難生活を余儀なくされている住民のためのチャリティ・イヴェントであり,かつテレビ中継もされていたことを考えると,日本なら間違いなくカットされていたパフォーマンスだった。そんな際どい曲を,腹を抱えて笑いながら受け容れていた観客の姿からは,大戦以降何度もの試練をくぐり抜けてきて今なお成熟の過程にある社会に対して,エンターテインメント業界が果たすべき役割に関する共通理解の存在が明確に感じ取ることができた。
それにしても,ビリー・ジョエルは太りすぎ。「Just The Way You Are」と言っても,限度があるような気が。
★★
(★★★★★が最高)


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