子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「のだめカンタービレ最終楽章前編」:TV版「のだめ」の楽しさが生きた好編
外国人は流ちょう(時に妖しげな)日本語を喋り,指揮者はうざいピアニストの彼女を遙か彼方に投げ飛ばし,主人公であるそのピアニストは歓びの時には世界を花で埋めてしまう。
どこを取っても「マンガ」らしい表現に満ちた原作のマンガを,そのテイストを活かしたままTVのフォーマットに移植したフジの連続ドラマは,まさに連ドラ史上に残る楽しさで私をノックアウトした。
TV版の特別編を挟んで,とうとうスクリーンに進出した映画版は,だからといって浮き足立つことなく(いや,むしろ相変わらず浮き足立って,と言うべきか)TV版の成功を踏襲し,連続ドラマとほとんど変わらない間合いと軽さでまたもや楽しませてくれる。
「最終楽章」と銘打たれた映画版の,前編の主役は玉木宏扮する千秋。伝統はあるのに,今は寄せ集めのポンコツに成り下がってしまったパリのローカル・オーケストラの常任指揮者に就任した千秋が,そのお披露目ステージまでに何とかオケを立て直そうと奮闘する姿が描かれる。
まるでシュトレーゼマン(竹中直人)に師事した千秋が,Sオケを立ち上げるドラマ初期の,パリ・ヴァージョンといった趣きだ。
そのため,のだめ(上野樹里)単独の描写は少ないが,千秋と絡む場面や,ベッキーをのたうち回らせるカレーを作るシーンでは,しっかりと笑いを取る一方で,演奏シーンでは一転して音楽のミューズを感じさせるようなオーラを纏っている。上野のキャラクターなしでは,このシリーズがここまで成功することはなかっただろう,と思わせる程のはまり役だ。
しかし今回の玉木宏は,それを上回るなりきり「振り」を見せている。ラストの演奏会で振ったチャイコフスキー「1812」の指揮で見せた集中力には,熱い役者魂を感じさせるものがあった。演技よりも独特の声で存在感を見せていた玉木の,ひとつの転換点になるかもしれない。
映画全体を単なる「熱血クラッシック音楽少年少女物語」に留まらず,クラッシック音楽門外漢(私のような)にとっても楽しめる作品にしているのは,登場人物が奏でる音楽に対する彼らの愛情を,笑いとファンタジーを挟めた分だけ,視点を離して描くことに成功しているからだ。眉間に皺を寄せれば良い音楽が出来る訳ではない,という芸術観を,みんなが共有しているようだ。
更に,際限なく広く深い,底なし沼のような世界に挑む若者たちを,ここまで爽やかに賑やかに,そして切実に描くことが出来た背景には,TV版の成功に奢らない謙虚さも大きかったはずだ。のだめが弾く旋律が,作品に関わった人たちみんなの耳にこう囁いたのかもしれない。「たかが映画じゃないの?」と。
★★★☆
(★★★★★が最高)
どこを取っても「マンガ」らしい表現に満ちた原作のマンガを,そのテイストを活かしたままTVのフォーマットに移植したフジの連続ドラマは,まさに連ドラ史上に残る楽しさで私をノックアウトした。
TV版の特別編を挟んで,とうとうスクリーンに進出した映画版は,だからといって浮き足立つことなく(いや,むしろ相変わらず浮き足立って,と言うべきか)TV版の成功を踏襲し,連続ドラマとほとんど変わらない間合いと軽さでまたもや楽しませてくれる。
「最終楽章」と銘打たれた映画版の,前編の主役は玉木宏扮する千秋。伝統はあるのに,今は寄せ集めのポンコツに成り下がってしまったパリのローカル・オーケストラの常任指揮者に就任した千秋が,そのお披露目ステージまでに何とかオケを立て直そうと奮闘する姿が描かれる。
まるでシュトレーゼマン(竹中直人)に師事した千秋が,Sオケを立ち上げるドラマ初期の,パリ・ヴァージョンといった趣きだ。
そのため,のだめ(上野樹里)単独の描写は少ないが,千秋と絡む場面や,ベッキーをのたうち回らせるカレーを作るシーンでは,しっかりと笑いを取る一方で,演奏シーンでは一転して音楽のミューズを感じさせるようなオーラを纏っている。上野のキャラクターなしでは,このシリーズがここまで成功することはなかっただろう,と思わせる程のはまり役だ。
しかし今回の玉木宏は,それを上回るなりきり「振り」を見せている。ラストの演奏会で振ったチャイコフスキー「1812」の指揮で見せた集中力には,熱い役者魂を感じさせるものがあった。演技よりも独特の声で存在感を見せていた玉木の,ひとつの転換点になるかもしれない。
映画全体を単なる「熱血クラッシック音楽少年少女物語」に留まらず,クラッシック音楽門外漢(私のような)にとっても楽しめる作品にしているのは,登場人物が奏でる音楽に対する彼らの愛情を,笑いとファンタジーを挟めた分だけ,視点を離して描くことに成功しているからだ。眉間に皺を寄せれば良い音楽が出来る訳ではない,という芸術観を,みんなが共有しているようだ。
更に,際限なく広く深い,底なし沼のような世界に挑む若者たちを,ここまで爽やかに賑やかに,そして切実に描くことが出来た背景には,TV版の成功に奢らない謙虚さも大きかったはずだ。のだめが弾く旋律が,作品に関わった人たちみんなの耳にこう囁いたのかもしれない。「たかが映画じゃないの?」と。
★★★☆
(★★★★★が最高)
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