子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「2012」:大きいことは良いこと,という価値観が辿り着いた地点
ローランド・エメリッヒというドイツ人の映画監督がハリウッドに進出して撮った初めての作品であるジャン・クロード=ヴァン・ダム主演のアクションSF「ユニバーサル・ソルジャー」については,筋はともかく,冒頭の場面だけはよく憶えている。
それはとてつもなく大きなアーチ式ダム(だったと思う)の上から,ロープを伝って降りてくる男たちを少し引いて捉えたショットで,人間が作った土木構造物の「大きさ」がどどーんと迫ってくるような力に満ちた絵だった。
あれから17年。「大きさ」を追い求めた男が辿り着いたのは,地殻をひっくり返してしまうという,いかにも「巨大」フェチらしい境地だった。
1920年代のスラップスティック喜劇に見られた「危機一髪」間に合った,というシークエンスを,緻密で想像力豊かなコンピューター・グラフィックスを駆使して延々と繋いだ主人公一家の脱出劇は,確かに見事だ。特に飛行機が離陸する際,滑走距離が足りずに失速しそうになった瞬間に大地が割れ,飛行機が空中に「降下」しながら飛び出したと思ったら,目の前に高層のビルが迫ってくるシーンでは,思わず肩に力が入ってしまった。
あまり難しいことを考えずにそういったシーンを楽しめた要因の一つに,「インデペンデンス・デイ」に見られた「アメリカ至上主義」が影を潜めていることが挙げられる。主人公(ジョン・キューザック)は,別居している家族の命を救うため,意地もプライドもかなぐり捨てて,平身低頭,徹頭徹尾,利己的な振る舞いに終始する。そんなリアリティに満ちた小市民の姿は,かつて「インデペンデンス~」で巨大UFOに立ち向かった大統領ではなく,国民とともに地面に飲み込まれる道を選ぶ大統領(ダニー・グローバー)の描写との対比によって,一層鮮やかになる。小市民のリアリティが,地球の崩壊というヒューマン・スケールの極北とも言える描写によって生命を持つというのは,皮肉でも何でもなく,エメリッヒ映画の集大成に相応しい成果だろう。コスト・パフォーマンスという点で見ると,ちょっと低すぎるかもしれないけれど。
物語としては,主人公一家のアメリカ脱出までが本編で,選ばれた人類を乗せるために建造される「ノアの方舟」の基地(中国)に辿り着いた途端に動力を手放してしまい,以降の話は引き延ばされて,薄められたエンディングに過ぎなくなっている。
ただ1997年に撮られたロバート・ゼメキスの「コンタクト」では,予備の宇宙飛行装置が人知れず準備されていたのが,今や世界遺産となった知床半島だったことを考えると,この12年の間に日本と中国の立ち位置が如何に変わったかということを思い知らされて,しばし感慨に耽る。
★★★
(★★★★★が最高)
それはとてつもなく大きなアーチ式ダム(だったと思う)の上から,ロープを伝って降りてくる男たちを少し引いて捉えたショットで,人間が作った土木構造物の「大きさ」がどどーんと迫ってくるような力に満ちた絵だった。
あれから17年。「大きさ」を追い求めた男が辿り着いたのは,地殻をひっくり返してしまうという,いかにも「巨大」フェチらしい境地だった。
1920年代のスラップスティック喜劇に見られた「危機一髪」間に合った,というシークエンスを,緻密で想像力豊かなコンピューター・グラフィックスを駆使して延々と繋いだ主人公一家の脱出劇は,確かに見事だ。特に飛行機が離陸する際,滑走距離が足りずに失速しそうになった瞬間に大地が割れ,飛行機が空中に「降下」しながら飛び出したと思ったら,目の前に高層のビルが迫ってくるシーンでは,思わず肩に力が入ってしまった。
あまり難しいことを考えずにそういったシーンを楽しめた要因の一つに,「インデペンデンス・デイ」に見られた「アメリカ至上主義」が影を潜めていることが挙げられる。主人公(ジョン・キューザック)は,別居している家族の命を救うため,意地もプライドもかなぐり捨てて,平身低頭,徹頭徹尾,利己的な振る舞いに終始する。そんなリアリティに満ちた小市民の姿は,かつて「インデペンデンス~」で巨大UFOに立ち向かった大統領ではなく,国民とともに地面に飲み込まれる道を選ぶ大統領(ダニー・グローバー)の描写との対比によって,一層鮮やかになる。小市民のリアリティが,地球の崩壊というヒューマン・スケールの極北とも言える描写によって生命を持つというのは,皮肉でも何でもなく,エメリッヒ映画の集大成に相応しい成果だろう。コスト・パフォーマンスという点で見ると,ちょっと低すぎるかもしれないけれど。
物語としては,主人公一家のアメリカ脱出までが本編で,選ばれた人類を乗せるために建造される「ノアの方舟」の基地(中国)に辿り着いた途端に動力を手放してしまい,以降の話は引き延ばされて,薄められたエンディングに過ぎなくなっている。
ただ1997年に撮られたロバート・ゼメキスの「コンタクト」では,予備の宇宙飛行装置が人知れず準備されていたのが,今や世界遺産となった知床半島だったことを考えると,この12年の間に日本と中国の立ち位置が如何に変わったかということを思い知らされて,しばし感慨に耽る。
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