子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「裸足の季節」:大都会の灯りの温かさ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/93/90cbf7caac8adaab613294cae6f9cec5.jpg)
ユルマズ・ギュネイやファティ・アキン,最近ではセミフ・カプランオールやヌリ・=ビルゲ=ジェイランといった「とりわけ国際映画祭に強い」俊英を輩出してきたトルコ映画界に,新たに有力なメンバーが加わった。
その名はデニズ・ガムゼ・エルギュヴェン。38歳の女性監督が初めてメガホンを取った「裸足の季節」は,フライヤーに「各国で33の賞を獲得!」という見出しが躍るとおり,先達に負けじと世界中で映画通の話題をさらった秀作だ。
早くに両親を亡くし,祖母の家で粗暴な伯父と共に暮らす5人姉妹が,古い因習に囚われた田舎から,自分たちの人生を自らの手で選び取っていく物語。
5人姉妹の暴力的なまでに瑞々しいエネルギーが,「男尊女卑」や「処女信仰」といった,現代社会では水面下に潜ったように見える概念や信条によって,徐々に損なわれていく様子が,繊細かつ大胆なタッチで丹念に描かれていく。
前半から中盤にかけては,男性が入場を禁止されたサッカーの試合を観ることを決心した末娘に率いられ,5人姉妹が都会へ出て行き,競技場で若さを発散させるシークエンスに代表されるように,明るくユーモアさえ漂う描写が実に新鮮だ。5人が若い肢体を持て余すかのように戯れる描写には,ソフィア・コッポラの「ヴァージン・スーサイズ」を想起させるところもある。時に露出過多に近いとも見える,自然光の強さを最大限に活かした撮影は,彼女たちの生命力を確実にグリップしている。
ところが後半,伯父が次第にその本性を露わにしていくにつれて加速していく,非人道的な社会システムが彼女たちを圧迫していく過程では,胸が押し潰されるような辛い描写が続く。そのあまりのトーンの違いに戸惑った観客は,おそらく私一人ではないはず。
それが監督の意図したものであれば仕方ないが,生ではなく死という形を取ることによって無言の抗議を選択した三女のエピソードは,私にはあまりに唐突であったことは事実だ。
しかしそれにも拘わらず,いや,だからなのかもしれないが,往々にして否定的な意味合いで捉えられることの多い「大都会(=イスタンブール)の喧噪」を象徴するまちの灯りが,朝靄の中から立ち上がるラストシーンは感動的だ。女性が普通にスタジアムで大声をあげられる国に住む一人として,いまだ行動を起こすことができない環境にいるはずの大勢のラーレ(末娘)の幸せを祈りたい。
★★★☆
(★★★★★が最高)
その名はデニズ・ガムゼ・エルギュヴェン。38歳の女性監督が初めてメガホンを取った「裸足の季節」は,フライヤーに「各国で33の賞を獲得!」という見出しが躍るとおり,先達に負けじと世界中で映画通の話題をさらった秀作だ。
早くに両親を亡くし,祖母の家で粗暴な伯父と共に暮らす5人姉妹が,古い因習に囚われた田舎から,自分たちの人生を自らの手で選び取っていく物語。
5人姉妹の暴力的なまでに瑞々しいエネルギーが,「男尊女卑」や「処女信仰」といった,現代社会では水面下に潜ったように見える概念や信条によって,徐々に損なわれていく様子が,繊細かつ大胆なタッチで丹念に描かれていく。
前半から中盤にかけては,男性が入場を禁止されたサッカーの試合を観ることを決心した末娘に率いられ,5人姉妹が都会へ出て行き,競技場で若さを発散させるシークエンスに代表されるように,明るくユーモアさえ漂う描写が実に新鮮だ。5人が若い肢体を持て余すかのように戯れる描写には,ソフィア・コッポラの「ヴァージン・スーサイズ」を想起させるところもある。時に露出過多に近いとも見える,自然光の強さを最大限に活かした撮影は,彼女たちの生命力を確実にグリップしている。
ところが後半,伯父が次第にその本性を露わにしていくにつれて加速していく,非人道的な社会システムが彼女たちを圧迫していく過程では,胸が押し潰されるような辛い描写が続く。そのあまりのトーンの違いに戸惑った観客は,おそらく私一人ではないはず。
それが監督の意図したものであれば仕方ないが,生ではなく死という形を取ることによって無言の抗議を選択した三女のエピソードは,私にはあまりに唐突であったことは事実だ。
しかしそれにも拘わらず,いや,だからなのかもしれないが,往々にして否定的な意味合いで捉えられることの多い「大都会(=イスタンブール)の喧噪」を象徴するまちの灯りが,朝靄の中から立ち上がるラストシーンは感動的だ。女性が普通にスタジアムで大声をあげられる国に住む一人として,いまだ行動を起こすことができない環境にいるはずの大勢のラーレ(末娘)の幸せを祈りたい。
★★★☆
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