子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

Steve Winwood「Nine Lives」:今年60歳の元天才少年だけに許された年の取り方

2008年05月16日 23時24分31秒 | 音楽(新作レヴュー)
基本的には前作「About Time」で掘り当てたブルースの新しい鉱脈を,更に深く,しかもつるはしを使った人力掘削で掘り進んだという印象を受ける,タイトルそのままのソロ9作目。
ジャケットの見てくれ通り,地味で単彩色の世界だが,声の伸びは驚くばかり。何より音楽を楽しんでいる風情に満ちているのが,素晴らしい。

前作の延長とは言っても,今回はギターが大々的にフィーチャーされており,本人の演奏に加えて,「ブラインド・フェイス」以来の共演となるエリック・クラプトンの客演も聞ける。その「Dirty City」が持つ熱量は,「ラスト・ワルツ」におけるロビー・ロバートソンとのバトルにも匹敵する。

トラフィックから,ソロの初期作を通じて,ウィンウッド独自の個性を形作っていた,ラテンからアフリカへと繋がっていくようなパーカッションも控えめながら鮮やかだ。
ベースレスの編成だが,そのパーカッションが軽やかに跳ねる底で,十八番のハモンドオルガンが作る重低音とギターが生み出すグルーブ感は,やっぱりこの声在ってのもの。40年以上にわたるロック行脚の末に到達した地平の広さは,聴くものをゆっくりと心地よく解放してくれるはずだ。

最先端のサウンドプロダクションを自家薬籠中のものとしつつ,どこを取っても主役の色が鮮明だったマドンナの新作とは正反対のヴェクトルながら,音楽に向かう姿勢は同じように真っ直ぐで,声の持つ力という点では他の追随を許さない。
少人数のバンド編成でツアーも行っているらしいが,今最もライブを観てみたいのは,この人だ。拍手。
★★★★1/2


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