子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」:単なる暴露ものに留まらない味わい

2017年08月24日 00時23分45秒 | 映画(新作レヴュー)
観ている間中ずっと主演のマイケル・キートンが,フジの報道番組「ユアタイム」に出演しているモーリー・ロバートソンに見えて仕方なかった。片や「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」で見事なカムバックを遂げた俳優,片や秋の番組再編で打ち切りが囁かれる低視聴率番組で「ニュース・コンシェルジュ」なる耳慣れない役割を務めているキャスターということで,接点は殆どないのだが,見た目,というか外観が醸し出す「押し出しの強さ」が実によく似ていて困った。もしモーリーさんが,キートンが演じたクロックと同じ立場に立たされたら,映画におけるクロックと同様に世間一般のビジネス・マナーを踏み越えてガンガン顧客を増やしていったのだろうなと思わせるそんな「強さ」でさえも救えない「ユアタイム」の「弱さ」って何なのか。いやいや,ここは「ユアタイム」のレビューではなかった。「ファウンダー」に戻らねば。

世界に冠たるファーストフードの雄「マクドナルド」が,西海岸の小規模チェーン店から全米に拡大していく過程で何があったのか。創業者兄弟は独自の調理方式を生み出しながら,なぜたった一人のシェイクミキサーのセールスマンに巨万の富を奪われることとなったのか。これまで知ることのなかった「マック」(東日本での呼び名)の成り立ちには,単なる暴露ものに留まらない,防具なしでぶつかり合うアメフトの試合を観るような醍醐味がある。
「ウォルト・ディズニーの約束」に続いて「実録もの」のメガホンを取ったジョン・リー=ハンコック監督は,キートンに対峙する創業者兄弟にニック・オファーマンとジョン・キャロル=リンチという強面の個性的な俳優を配することで,拳銃もナイフも使わずに行われる「対決」に厚みを持たせることに成功した。実際両者の対決は,出会いと最後の契約時の面談を除くと,殆どが電話での会話に限定されるのだが,それだけで115分を保たせ得たのは,双方の腹芸を支える顔の迫力のおかげと言っても過言ではないだろう。

それと忘れてならないのは,コーエン兄弟の専属劇伴作家という印象が強いカーター・バーウェルの音楽だ。十八番とも言える50年代のフレーヴァー溢れる音楽は,時に歴史ダイジェストに流れそうになる瞬間を何度も救っていた。終盤をさらうリンダ・カーデリーニの艶やかさと合わせて,映画は総合芸術だ,との思いを強くした。
★★★★
(★★★★★が最高)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。