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映画「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」:トム・クルーズの正念場

2017年08月19日 20時50分18秒 | 映画(新作レヴュー)
フライヤーには「トム・クルーズ主演映画史上NO.1」とある。ということは,あの「トップガン」や「ミッション:インポッシブル」シリーズや「マグノリア」をも上回ったということか。まあ「マグノリア」を下回るのは至難の業にせよ,とにかく凄いことだ。1931年制作の「魔人ドラキュラ」を嚆矢とする一連のモンスター映画で一世を風靡したユニバーサル映画を,現代に甦らせるプロジェクト「ダーク・ユニバース」の第一弾の主役に,あえて近頃益々「怪奇映画顔」になってきたジョニー・デップではなく「トム・クルーズ様」を選択したのは,慧眼だったと言えるだろう。

オリジナルのシリーズ制作時には技術的な制約から実現できなかった表現を,最新のCGや3D技術によって大画面に展開する。当時は「怪奇映画」としてB級にカテゴライズされていた一連の作品への出演を忌避する傾向にあったメインストリームにいる俳優を,プロジェクトの中心人物として起用する。これら,新たなプロジェクトを立ち上げた理由は理解できるし,恐怖映画のファンならずともどんな作品に誰が出るのか,期待は高まる。
今回の大ヒットの背景には,アイデア勝負の低予算ヴィデオ撮り独立系作品に飽き足らない,ウェルメイドなホラー作品を求める層が一定数存在することがあったと思われる。そんな状況を把握したマーケティングの勝利とも言える本作のヒットだが,詰めかけた観客が満足して劇場を後にしたかどうかはまた別の問題だ。

結論から言うと,「ダーク・ユニバース」の今後の展開には,甚だ疑問符が付く出来だったと言わざるを得ない。
何しろ唯々仕掛けがでかいだけで,まったく怖くないのだ。由緒正しいミイラ映画として,延々と大流行が続くゾンビ映画との違いを強調するでもなく,封印されてからの長い時間の経過が育んだはずの王女の怨念が前面に出るでもなく,普通のゾンビ映画に毛が生えた程度の魔力の展開に,目新しい魅力はなかった。ラッセル・クロウが演じるジキル博士も,せっかくの「怪奇映画マッシュアップ」というアイデアを活かすことなく,砂塵に消えてしまう。

何より残念なのは,トム・クルーズが従来の「トム・クルーズ様」の枠から一歩も出ようとしていなかったことか。55歳にしてこの肉体,と言わんばかりに裸を強調する演出も演出だが,せっかくの新しい企画を年齢相応のキャラクター創出機会と捉える気持ちが見られなかったのは致命的。トム様作品の例に漏れず,ヒロインの顔ももう忘れそうだし。「M:I」最新作の撮影で骨折したというニュースを聞いたが,入院中に事故を天の声と受け容れる柔軟性が生まれることを祈る。
★★
(★★★★★が最高)


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