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2011年TVドラマ夏シーズン・レビューNO.2:「それでも,生きてゆく」「全開ガール」

今季のドラマの中で最も注目すべきは,連続ドラマは「Mother」以来となる坂元裕二が手掛けた「それでも,生きてゆく」だろう。
加害者の家族を取り上げたものとしては過去に君塚良一が監督し,モントリオールで脚本賞を受賞した「誰も守ってくれない」があったが,加害者家族と被害者の遺族を同時に取り上げたドラマは極めて珍しい。

「殺人事件に関係した家族に本当の赦しは訪れるのか」という極めて重いテーマを,「Mother」で確信的誘拐犯を慈愛に満ちた真の母親として描いた坂元裕二がどう扱うのか注目していたが,これまでのところは,瑛太と満島ひかりという旬の俳優に大竹しのぶの抑制の利いた演技がうまく絡み,更に犯人の更生というサブプロットが不気味な重しとして効いており,滑り出しは極めて順調だ。
特にゴールデン・タイムの主演は初となる満島は,傑作「川の底からこんにちは」の主人公のダークサイド版とも言えるような役柄を,直感と絶妙の返しで巧みにこなしており,細身にも拘わらず堂々たる存在感を示している。

ただ視聴率を見ると第2回以降は一桁が続いており,シリアスな展開の中で一服付けるようなアクセントが求められているのも事実だ。
ドラマの音楽に初めて進出したと思われる辻井伸行が奏でる旋律も,やや甘ったるく,話題先行の感が否めない。
とは言え,「物語の力」を信じて,まっすぐに前へ向かおうとする制作陣の姿勢は全面的に買いたい。高岡蒼甫に「決して韓国一辺倒ではありませんよ」というメッセージが伝わるかどうかは分からないが,ドラマのフジの威信に賭けて「再生の道」を示して欲しい。

同じ局のドラマながら,そのテイストは対極にあるのが月9「全開ガール」だ。ガリ勉により東大法学部を首席で卒業したセレブ弁護士志望の女の子(新垣結衣)が,定食屋の料理人(錦戸亮)と出会って恋に目覚める,というストーリーは,実に陳腐。だが新垣の幼少期のエピソードや,「プラダを着た悪魔」を意識した薬師丸ひろ子演じる弁護士事務所社長のキャラクター等,あちらこちらに顔を覗かせるコミック調と,助演陣のドタバタ度からは,明らかに「のだめカンタービレ」アゲインを狙っていることが見て取れる。

一応は,新垣結衣のフジ連ドラ初主演というのが謳い文句のようだが,「コードブルー」等で散々主演「級」の出演をしてきたため,正直言って新鮮な印象はない。
吉田智子の脚本も,新垣と錦戸の間に,互いの天才に対する敬意と嫉妬を愛情に絡めた「のだめコンビ」にあった細やかな襞を生み出すには到っていない。

だが今のところは,シリアスなドラマとコメディとスリラーとを混在させながら,何故かその交通整理を放棄してしまった「幸せになろうよ」のような混乱はないようだ。
まだ固くて一本調子の新垣の演技を,物語の展開通り錦戸のキスが変えるのかどうかは知らないが,少なくとも弁護士のお仕事パートがきちんと描かれれば,今のところ12%半ばをキープしているフォロワーが離れることはないと思うが,果たしてどうだろうか?
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