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2011年TVドラマ冬シーズン・レビューNO.3:「告発~国選弁護人」

武井咲の出世作として取り上げた「大切なことはすべて君が教えてくれた」だが,どうやら高校生の間では,教師役の三浦春馬の「びっくり眼(まなこ)」顔が話題になっているらしい。武井咲に迫られても「びっくり!」,戸田恵梨香に責められても「びっくり!」。「イケメンの変顔」≒お笑いとして見たならば,それはそれでかなり高度な技なのかもしれないが,ドラマの主役が行う「演技」として捉えるならば,評価は180度変えざるを得ない。この調子でドラマが進んで行ったとしても,心理的な葛藤をニュアンス豊かに表現する,というカリキュラムを,あの先生が今学期中にこなすことはほとんど無理だろう。
もっともあの顔を,とうとう車のCMにまで進出してしまったブラマヨの「ヒーハー」や「どうかしてるぜ」並に,ひとつの売りにしていくという戦略を持っているのだったら話は別なのだが。

そんな演技のおそらく対極にあるのが,田村正和の「ふっふーん」というあの余裕綽々笑顔演技かもしれない。あれも,ある意味演技を越えた「売り」のひとつと言えば言えるのだが,そこはやはり年季の入り方が違う。
田村正和が久しぶりとなる連続ドラマで,冤罪や市井の弱者を救う国選弁護人に扮したテレビ朝日「告発~国選弁護人」は,「ふっふーん」こそ抑え目だが,歌舞伎の型のようにも見える大袈裟な身振りや,やや早口でまくし立てる独特の台詞回しなど,「田村正和ブランド」を支える数々の小技は健在だ。

喉の調子がかなり悪いのか,かすれ声になってしまうことが頻繁にあるのだが,仮に真相を突く重要な台詞がよく聞き取れなかったとしても,そんなことは些末なことだと思わせてしまうような説得力が,田村の肩の辺りのラインから滲み出ている(サスペンスとしてみたならば,いずれの真相も「謎」と呼べるような奥行きを持ったものではないことも確かだが…)。

松本清張の原作をアダプトしたという脚本は,洗練とはほど遠いが,弱者に寄り添った視点の確かさと,そこはかとなく漂う「昭和の香り」で,中高年の視聴者を楽しませてくれる。そういう目で見ると,真矢みきは勿論だが,娘役の若い相武紗季までもが,何となく昭和っぽく見えてくるのが不思議だ。
プロファイリングとも科学捜査とも離れたところで,ひたすら「足」を使って真実に辿り着こうとする姿勢や,「何故かジャズ・ピアノが達者」というお決まりの設定も含めて,驚きもなければ外れもない定食で勝負しようとした成果が,山のような愚作群の中にあってはきわめて新鮮だ。
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