子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「どん底作家に幸あれ!」:二重写しになる大英帝国の19世紀と現代
監督のアーマンド・イアヌッチの前作「スターリンの送葬狂騒曲」は,ドタバタのツボが私のものとは若干ずれていて,残念ながら世評ほどには笑えなかった。けれどもチャールズ・ディケンズの「デヴィッド・コパーフィールド」の映画化である新作「どん底作家に幸あれ!」は,あからさまなコメディという枠を外れたことによって獲得した自由度とキャスティングの妙が相乗効果を生み,前作の倍くらい笑えた。つんとすました大英帝国の,一本裏に入った街路には,まだまだ猥雑なエネルギーを秘めた宝物が眠っていることを見事に証明してみせた秀作だ。
ディケンズの自伝的な側面の強い小説として名高い原作は未読だが,膨大なエピソードを詰め込みつつ,大勢の登場人物の細かな描写に関して手を抜かないイアヌッチの演出は,2時間の上映時間の間,一瞬たりともスピードとリズムを失うことなく走り続ける。金は持っているが容赦なくデヴィッドを痛めつける義父から始まって,借金取りから巧みに逃げ続ける下宿先の主人まで,貧富の振れ幅マックスの登場人物たちが,帝国時代のど真ん中で世界をドライブし続けた大英帝国の「時代の空気」を思い切り吸い込みながら躍動する姿は,グローバリズムの只中でブレグジットを断行した今のイギリスの姿と,ものの見事に重なる。
それが最も顕著に現れているのが,主人公のデヴィッドを演じるデヴ・パテルに代表されるキャスティングだろう。白人とアフリカン・ネイティブとアジア系が,親子を含めて入り乱れて出入りする演出こそが,この作品の真骨頂だ。「ぼくはホワイトでイエローで,ちょっとブルー」で話題を呼んだブレイディみかこの著作に「ワイルドサイドをほっつき歩け」というイギリス郊外都市のおっさんの姿を活写した作品があるが,そのロンドン版みたいなちょっと,いや,かなりクセのある匂いとでも言えば近いか。好き嫌いは分かれるかもしれないが,要所をベン・ウィショーとティルダ・スウィントンが締める小技も効いていて,私は充分に楽しんだ。
★★★☆
(★★★★★が最高)
ディケンズの自伝的な側面の強い小説として名高い原作は未読だが,膨大なエピソードを詰め込みつつ,大勢の登場人物の細かな描写に関して手を抜かないイアヌッチの演出は,2時間の上映時間の間,一瞬たりともスピードとリズムを失うことなく走り続ける。金は持っているが容赦なくデヴィッドを痛めつける義父から始まって,借金取りから巧みに逃げ続ける下宿先の主人まで,貧富の振れ幅マックスの登場人物たちが,帝国時代のど真ん中で世界をドライブし続けた大英帝国の「時代の空気」を思い切り吸い込みながら躍動する姿は,グローバリズムの只中でブレグジットを断行した今のイギリスの姿と,ものの見事に重なる。
それが最も顕著に現れているのが,主人公のデヴィッドを演じるデヴ・パテルに代表されるキャスティングだろう。白人とアフリカン・ネイティブとアジア系が,親子を含めて入り乱れて出入りする演出こそが,この作品の真骨頂だ。「ぼくはホワイトでイエローで,ちょっとブルー」で話題を呼んだブレイディみかこの著作に「ワイルドサイドをほっつき歩け」というイギリス郊外都市のおっさんの姿を活写した作品があるが,そのロンドン版みたいなちょっと,いや,かなりクセのある匂いとでも言えば近いか。好き嫌いは分かれるかもしれないが,要所をベン・ウィショーとティルダ・スウィントンが締める小技も効いていて,私は充分に楽しんだ。
★★★☆
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