子供はかまってくれない

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THE BAND「THE BAND」:こんなレコードにはまった高校生には,話の合う友達が少なかった

2007年11月01日 23時43分35秒 | 音楽(アーカイブ)
「アメリカン・ロックの最高峰」と評されることの多い彼らだが,アメリカ人はリヴォン・ヘルムただ一人で,残りの4人はカナダ人だった。どこを切ってもアメリカの風景や社会,人間,そしてそれらを包む壮大な物語が浮かんでくる彼らの音楽は,実は『外国人が作り上げた神話』という側面を持っていたのかもしれない。

彼らの音楽については,既にグリル・マーカスが素晴らしい評伝を書いているが,ロックンロールに対して深い理解と愛情を持った外国人(と一人のアメリカ人)が作ったアメリカ音楽は,1970年代に高校生だった東洋人にとっても,「花の中三トリオ」を凌ぐ,それまで触れたことのない魅力に溢れたものであった。

制作中の仮題が「アメリカ」または1曲目の「Across The Great Divide」だったという話もある1969年発表の本作は,一般的に代表作と言われている前年発表のデビューアルバム「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク」に比べて地味な扱いを受けることが多いが,これだけの名曲と名演奏が詰まったアルバムはそうざらにはない。

後年再結成された際のライブ・ヴィデオで「当時の練習はまるで軍隊のようだった」という発言があったが,ロビー・ロバートソンが作る曲のクオリティに拮抗する演奏の力量と,ハーモニーの力強さは信じられない程だ。ジョーン・バエズが取り上げたことで有名になった3や,管楽器でベースラインを作った2,代表作となりトリビュート盤でも演奏された12など,何度聞いても打ちのめされるような曲が,ずらっと並ぶ様は,正に壮観だ。

ここから「ラスト・ワルツ」まで残り7年。陸上競技で言えば,「800m競走」に出場したランナーが,「100m競争」のペースでダッシュして最もスピードに乗った100m近辺にいるところ,といった感じかもしれない。この先に待ち受ける残り700mの過酷さを予感させずに走り続ける,果敢かつ老獪な若者の躍動の記録はいまだに輝きを放っている。


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