子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

STEELY DAN「THE ROYAL SCAM」:辛うじて「ロック」の端っこで踏ん張る

2007年11月02日 23時40分45秒 | 音楽(アーカイブ)
破れた靴を履いてベンチで寝ている浮浪者。その上空高く聳える摩天楼の先端部のどれもが,蛇や豹などに変貌して,お互いに威嚇し合う。都会の持つ魔力と,その片隅でうずくまる敗者を,実に分かり易い凄みで描き出したジャケットのベタな迫力が,発表当時は実に新鮮だった。でもその絵には,30年を経た今,カニエ・ウェストにサンプリングされて新世紀の空気に曝されてもなお,少しも色褪せずに迫ってくるものがある。「キッド・シャルメイン」は健在だ。

ウィリアム・バロウズの小説「裸のランチ」に登場するあるものから名前を取ったユニークなロック・グループが,次作の「Aja」でゴージャスな「フュージョン」に片足を踏み入れる寸前,辛うじて「ロック」の領域に踏みとどまってものにした1976年の大傑作。

「Aja」と3枚のソロアルバムによって,すっかりお茶の間にも馴染んでしまった観のあるドナルド・フェイゲンだが,このアルバムにおける,ねじれているのに整合観に溢れたメロディを歌う声は,充分に危ない。
名うてのスタジオ・ミュージシャンを揃えたサウンド・プロダクションも,絢爛さよりも縦ノリを大事にした気合に満ちている一方で,ミックス・ダウンに加わったロジャー・ニコルズの趣味も存分に味わえる。

ラリー・カールトンのロック風味ギターがいなせな3や,当時大ヒットしていたピーター・フランプトンの「ショウ・ミー・ザ・ウェイ」もかくやというトーキング・モジュレーターを駆使した7は,当時何度聞いたか分からない。
ジャズとロック,メインストリームとサブストリーム,2人組となっていたグループの実体と大勢のレコーディングユニット。これらいくつかの相反する要素を抱え込んだまま,面白そうなことにトライするというパイオニア精神を感じさせる,グループ最後のロックアルバムだ。


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