途中で怪我のためピッチを後にした河合には申し訳ないが,それに伴う選手交替がまさしく「怪我」の功名となった,と言わざるを得ない試合だった。
前半の途中までコンサドーレ札幌には相手のゴールに向けてボールを運ぶ意識はおろか,ボールを繋いでフットボールをするんだ,という気持ちすらなかったように見えた。
それに対して小さなフィールドでの巧みなパス交換から,スペースに走り込む選手を積極的に使うことによって,コンサドーレのDFラインを翻弄し続けた徳島の前半の戦い振りは見事だった。
そんな嫌な流れを断ち切って,まさかの逆転勝ちに導いたのは,交代選手のひたむきなプレーと若い小山内の積極的な「走り」だった。
前半はボールを奪ってもただ最前線のテレを探しては,ひたすら長いボールをぶつけるだけで,サイドをパスとフリーランニングで崩すんだという意識が感じ取れるようなプレーは,全くと言って良いくらい見られなかった。
それを変えたのは,河合と交替で入った深井だった。彼が繰り出す短く正確なパスを交換することによって,次第にコンサドーレ札幌の選手たちは「崩す」意識を取り戻していったように見えた。
特に右サイドバックに入った小山内が,前半に自ら相手ボールを奪い,ワンツーで長い距離を走ってから,相手DFの裏を取って中央に折り返しを入れた瞬間からは,攻撃に関する「全て」が変わった。
その直後に先制点を入れられるも,後半はマイボールの際にボールが動く距離とスピードが間違いなくワンランク上がり,それによってそれまで苦しんでいた徳島のプレスが,中盤でも最終ラインでもかからなくなったことは明らかだった。
同点弾となったパウロンのヘディングは,日本人には難しい捻りの利いたものだったし,勝ち越し点となった上原のゴールを導き出した上里のCKも素晴らしい精度だったが,そうした直接点数に結びついたプレー以上に,走って,受けて,素速く受け渡す,というどんなトリッキーなプレーよりもサポーターを興奮させる「オーソドックスなプレー」に徹した後半の攻撃は,特筆されるべき楽しさに満ちていた。
何が何でもシュートを打つんだという岡本の執念(せめて枠には飛ばして欲しかったが…),前田のドリブル,そして内村の一点突破のスピードなどは,間違いなく勝利に値するものだった。
しかし選手の選考,選手への指示ともに曖昧な部分が多い財前采配に対する評価はといえば,どうしても辛口なものにならざるを得ない。
ホームで勝てなかったという事実もさることながら,戦術を固めてそれを繰り返すことによって少しずつ前に進んで行っている,という実感をサポーターが共有できない限り,8千人を割り込みそうな状態にまで落ち込んだ観客動員を回復させることは難しいだろう。果たして,精神的支柱と言われている河合を切ることが出来るかどうか,指揮官の試金石は今この時かもしれない。
前半の途中までコンサドーレ札幌には相手のゴールに向けてボールを運ぶ意識はおろか,ボールを繋いでフットボールをするんだ,という気持ちすらなかったように見えた。
それに対して小さなフィールドでの巧みなパス交換から,スペースに走り込む選手を積極的に使うことによって,コンサドーレのDFラインを翻弄し続けた徳島の前半の戦い振りは見事だった。
そんな嫌な流れを断ち切って,まさかの逆転勝ちに導いたのは,交代選手のひたむきなプレーと若い小山内の積極的な「走り」だった。
前半はボールを奪ってもただ最前線のテレを探しては,ひたすら長いボールをぶつけるだけで,サイドをパスとフリーランニングで崩すんだという意識が感じ取れるようなプレーは,全くと言って良いくらい見られなかった。
それを変えたのは,河合と交替で入った深井だった。彼が繰り出す短く正確なパスを交換することによって,次第にコンサドーレ札幌の選手たちは「崩す」意識を取り戻していったように見えた。
特に右サイドバックに入った小山内が,前半に自ら相手ボールを奪い,ワンツーで長い距離を走ってから,相手DFの裏を取って中央に折り返しを入れた瞬間からは,攻撃に関する「全て」が変わった。
その直後に先制点を入れられるも,後半はマイボールの際にボールが動く距離とスピードが間違いなくワンランク上がり,それによってそれまで苦しんでいた徳島のプレスが,中盤でも最終ラインでもかからなくなったことは明らかだった。
同点弾となったパウロンのヘディングは,日本人には難しい捻りの利いたものだったし,勝ち越し点となった上原のゴールを導き出した上里のCKも素晴らしい精度だったが,そうした直接点数に結びついたプレー以上に,走って,受けて,素速く受け渡す,というどんなトリッキーなプレーよりもサポーターを興奮させる「オーソドックスなプレー」に徹した後半の攻撃は,特筆されるべき楽しさに満ちていた。
何が何でもシュートを打つんだという岡本の執念(せめて枠には飛ばして欲しかったが…),前田のドリブル,そして内村の一点突破のスピードなどは,間違いなく勝利に値するものだった。
しかし選手の選考,選手への指示ともに曖昧な部分が多い財前采配に対する評価はといえば,どうしても辛口なものにならざるを得ない。
ホームで勝てなかったという事実もさることながら,戦術を固めてそれを繰り返すことによって少しずつ前に進んで行っている,という実感をサポーターが共有できない限り,8千人を割り込みそうな状態にまで落ち込んだ観客動員を回復させることは難しいだろう。果たして,精神的支柱と言われている河合を切ることが出来るかどうか,指揮官の試金石は今この時かもしれない。