子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2012年TVドラマ冬シーズン・レビューNO.4:「運命の人」「ストロベリーナイト」

2012年02月07日 22時33分53秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
大傑作もない代わりに,外れもない。版権は決して安くはないと思われるが,それでも繰り返し山崎豊子原作のTVドラマが制作されるのは,急速に増えつつある高齢層ドラマ視聴者対応という側面が大きいからだろう。実話に材を取り,愛する者達の,会社の,そして国家の将来を真剣に考え,果敢に行動する男たちの姿は,常に一定の共感と評価を得てきた。某国営放送局の大河ドラマと,現代をフィクションとして描いたドラマの狭間という,独自の領域を開拓してきた意義は大きい。

TBSの今季の新作「運命の人」は,そんな従来からの評価に加え,主人公がマスコミの風雲児ということもあって,各メディアにおける露出量も多い。
オールスター・キャストに目の行き届いた時代考証,そして埋もれていた政治スキャンダルの発掘というジャーナリスティックな視点を考えれば,第3回までの平均視聴率12%は,低いくらいだという声が上がってもおかしくはないのかもしれない。

だが,それでも私は日曜日の夜が待ち遠しい,という気分にはなれないでいる。
その理由は単純。アーロン・ソーキンが書いたアメリカNBCの傑作政治ドラマ「ザ・ホワイトハウス」の特徴とも言える「緩急」が,山崎ドラマにはないからだ。要するに,力を抜ける場面に笑えるキャラクターと粋なやり取りという,私が連続ドラマに求める本題以上に重要な要素が,どこを探しても見つけられないのだ。

今回は特に主役の弓成記者役の本木雅弘が徹頭徹尾,力み過ぎており,観ているだけでぐったり疲れる。彼に惹かれた外務省審議官付きの秘書(真木よう子)が,機密の漏洩に加担するというエピソードがここまでのメインプロットなのだが,いつも怒り,焦っているようにしか見えない弓成に,これまた思い詰めた顔をした真木が絡んでも,艶っぽい雰囲気が生まれないのが象徴的だ。
テーマがシリアスである以上,それは仕方がないという意見が大多数であろうことは容易に想像できるが,志の高さと真面目さだけが,ドラマの質にダイレクトに結びつく訳ではないという点だけは指摘しておきたい。

力が入っているという点では,フジ「ストロベリーナイト」の竹内結子も負けていないかもしれない。
昨秋放送されたパイロット版を未見のため,劇中何度か出てくる過去の悲劇の詳細が分からないのが残念だが,部下をなくした上司としての悲嘆をエンジンにして犯罪捜査に取り組むヒロインの姿は,弓成記者に劣らずエネルギッシュだ。

ただ「運命の人」を観終わった時のような疲労感を感じないのは,竹内結子扮する姫川が,自分の肩に力が入っているということを意識し,それをなかば笑っているようなキャラクターとして設定されていることに違いがある。
更に彼女を支える係員,特に西島秀俊と宇梶剛士の二人が,受けの演技に徹することにより,渡辺いっけいや武田鉄矢も含めたやり過ぎ演技のオンパレードによる緊迫感を,上手に中和する役割りを担っていることも大きい。

ミステリーとしての奥深さはないものの,姫川班にひとりチームを冷ややかに見つめる小出恵介を加えることによって「仕事もの」としてのリアルさを獲得していることも高く評価したい。4人を配した脚本陣が,シリーズとしての統一感を持続できるかどうかが今後の鍵だろう。


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