子供はかまってくれない

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2009年TVドラマ秋シーズンレビューNO.5:「JIN-仁-」,「ギネ」,「おひとりさま」

2009年12月24日 23時38分03秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
先週から今週に掛けて,今年最後となる秋シーズンのTVドラマが,次々と最終回を迎えている。
今期はタイムスリップと医療を組み合わせた人気コミックを原作とするTBS「JIN-仁-」が,視聴率,話題共に一人勝ちという様相を呈したシーズンとなったようだ。やや変則的ながら,今期も「医療もの=視聴率鉄板」神話は守られる結果となったが,最高視聴率25.3%(最終回),平均視聴率19.02%というのは,ジャニーズ系の主役を迎えず,大人を対象としたラブ・ストーリー的要素も含んだドラマとしては,画期的な大勝利と言っても良いのではないだろうか。

私はと言えば,タイムスリップをした人間がもし過去に少しでも影響を与えてしまったら,主人公自身の存在が危うくなる,という「バック・トゥ・ザ・フューチャー」が「フィーチャー」していたタイム・パラドックスを(ほぼ)無視し,現代医学を応用して江戸時代の人間を片っ端から救命してしまう,という思い切りの良すぎるストーリーに違和感を覚えたため,全てをチェックはしていなかった,というのが正直なところだ。
しかし家人が毎回溢水という表現がぴったりくるくらいの涙を流している横で,雑誌や新聞をめくりながら見ていた限りでは,「官僚たちの夏」同様に作りは丁寧,役者も全力投球という感じで,こういう真っ当な仕事が日曜の夜という時間帯に多くの支持を受けたことは,一種の「サプライズ」ではないか,という印象を持った。「官僚たちの夏」の失速にめげず,当該枠の対象視聴者層(オーバー30)を変更しないままで勝ち得た成果は,数字以上の意味があるはずだ。

一方で,内容的に狙ったレヴェルは高かったにも拘わらず,平均11.79%という微妙な数字のまま,殆ど「途中打ち切り」という扱いを受けてしまったのがNTV「ギネ」だ。「11回」が「完走扱い」となる現在のTVドラマにあって,「9回」に対する局の評価はやはり「失敗作」というものだったのだろうか。
主人公に扮した藤原紀香の造形力や,脇を固めるべきキャラクター(特に本仮屋ユイカと板谷由香)のおざなりな扱い,サイドストーリーの未消化としか見えない決着の付け方など,欠点は目に付いたものの,産婦人科が抱える問題を深いところまで抉り出そうとする意識の高さは充分に買えるものだった。
特に出演回数は多かったのに,何故か最後まで「特別出演」とクレジットされていた中村橋之助の懐の深い演技は見事だった。出来ればきちんと11回を完走して,3回×3の「序破急」ではなく3回×4≒の「起承転結」の展開によって,内田有紀のエピソードを丁寧に見せて欲しかったという気がする。

尾崎将也が脚本を担当した「おひとりさま」は,9.45%という数字もさることながら,タイトルと尾崎の旧作「結婚しない男」から想像される,30代の女性が「おひとりさま」のままで生きていくには,という最も興味深いテーマ部分を省いて,いきなりラブコメに入っていくという展開に戸惑った。
それでも最終回まで見通した一番の磁力は,主役の観月ありさのコメディエンヌとしての成長振りに他ならない。真矢みきと松下菜緒を引き連れて学園内を堂々と闊歩する姿は,小池徹平ならずとも「聳え立っていて下さい」と手を合わせたくなるような貫禄があった。
ドラマとしての出来は全体的に今一つではあったが,男女の身長格差を逆手に取った作りには,ジェンダー・フリーを力まず表現してみせたある種の「爽やかさ」が感じられたことも事実だ。総じてTBS健闘の秋。


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