「ケイゾク」の続編として企画された「SPEC」は,堤幸彦がTVドラマに関して抱いていた(と思われる)斬新なヴィジョンを,全面的に展開してみせた作品となった。
当初,キャスティングに関してクレームを申し立てた「ケイゾク」のコアなファンも,この新しいコンビ像の健闘とシャープな映像を観たならば,振り上げた拳をそれなりの形で収めてくれたのではないだろうか。
真の黒幕と思われる人物が次々に現れては死んでいく展開もさることながら,バレットタイム(弾丸の軌跡を捉えながらキャメラの位置が動いていく撮影技法)を多用したクライマックス・シーンの迫力,当麻(戸田恵梨香)が真相を知るために毎回行うヘタウマ書道,そして厚い信頼の上で交わされる,当麻と瀬文(加瀬亮)の間のぶっきらぼうな会話。そのどれもが,危険で妖しい空間の形成に欠かせない要素として,渋い輝きを放っていた。
更に,冷泉(田中哲司)が予知能力を発揮する時の呪文(ひみつのアッコちゃん!)や,職を失ってから突如アグレッシブに変貌した野々村係長(竜雷太)のドタバタ振りなど,随所に感じられた細かなこだわりが,他のドラマでは味わえないオタク的面白さを醸成していたのだが,物語に確固とした意味や必然的な流れを求める層からはそっぽを向かれたのか,数字は一桁に落ちること三度,平均で10.54%に留まる結果となった。
椎名桔平との決着を着けずに終わらせたことが,必ずしも続編の制作を約束するものではないのだろうが,もし本作を支持したファンの期待をこのままの形で裏切ったとしたら,TBSに見切りを付けるのは横浜ベイスターズファンだけでは済まなくなる可能性大と見た。
続編ものでは,第3作となる「医龍」も,あの手この手で今期も楽しませてくれた。特に最終回は,重要な手術を何故か2件同時並行で行うという,無茶な盛り上げ方に走ったのだが,モニタールームを挟んで手術室を2つ作るという荒技(実際の病院ではなく,セットだろう)が功を奏して,わざとらしさを超えた迫力が生まれていた。
俳優陣では,見せ場は少なかったが,映画「ノルウェイの森」でも場面をさらっていた初音映莉子が,冷静な看護士役を好演していたのが目に付いた。
これでTVの方がコミックの筋に追い付いてしまったようだが,平均で13.98%と前回シリーズの17.20%という数字をかなり割り込んだことがどう出るか,こちらも今後の展開に注目したい。
ベタな恋愛もの,ターゲットを中高校生に絞ったジュニアものが姿を消し,代わって「仕事」を全面に出した番組が大幅に増えた中で,今期のドラマでは「随一」と言って良いくらいの「内容的惨敗」を喫してしまったのが,菅野美穂の主演で純粋な犯罪スリラーにトライした「ギルティ」だった。
緊迫したスタートダッシュを見せた初回を観る限りは,ここまで悲惨な出来になるとは思えなかったのだが,殺人者=菅野美穂という意表を突いた設定が早々に腰砕けになってしまった脚本にGOサインを出した制作陣の責任は大きい。中間部のどんよりと停滞した展開と,終盤のお粗末極まりない辻褄合わせだけを取り出しても,連続ドラマが備えるべき語り口の水準を,遙かに下回るものだったと言わざるを得ない。
加えて,どう見ても警察には見えない簡易というより安易なセットと,不自然極まりない硬直した演技のオンパレードは,視聴率が一桁を記録しなかったのが不思議なくらいの出来だった。
「Q10」のような勇気溢れる,素晴らしいチャレンジをした同じ局が,同時期に,俳優のネームバリューにあぐらをかいたとしか思えない,こういった「やっつけ」仕事を放送するという現実が,今の日本のテレビドラマの制作事情と水準を象徴している訳ではない,と思いたい。
当初,キャスティングに関してクレームを申し立てた「ケイゾク」のコアなファンも,この新しいコンビ像の健闘とシャープな映像を観たならば,振り上げた拳をそれなりの形で収めてくれたのではないだろうか。
真の黒幕と思われる人物が次々に現れては死んでいく展開もさることながら,バレットタイム(弾丸の軌跡を捉えながらキャメラの位置が動いていく撮影技法)を多用したクライマックス・シーンの迫力,当麻(戸田恵梨香)が真相を知るために毎回行うヘタウマ書道,そして厚い信頼の上で交わされる,当麻と瀬文(加瀬亮)の間のぶっきらぼうな会話。そのどれもが,危険で妖しい空間の形成に欠かせない要素として,渋い輝きを放っていた。
更に,冷泉(田中哲司)が予知能力を発揮する時の呪文(ひみつのアッコちゃん!)や,職を失ってから突如アグレッシブに変貌した野々村係長(竜雷太)のドタバタ振りなど,随所に感じられた細かなこだわりが,他のドラマでは味わえないオタク的面白さを醸成していたのだが,物語に確固とした意味や必然的な流れを求める層からはそっぽを向かれたのか,数字は一桁に落ちること三度,平均で10.54%に留まる結果となった。
椎名桔平との決着を着けずに終わらせたことが,必ずしも続編の制作を約束するものではないのだろうが,もし本作を支持したファンの期待をこのままの形で裏切ったとしたら,TBSに見切りを付けるのは横浜ベイスターズファンだけでは済まなくなる可能性大と見た。
続編ものでは,第3作となる「医龍」も,あの手この手で今期も楽しませてくれた。特に最終回は,重要な手術を何故か2件同時並行で行うという,無茶な盛り上げ方に走ったのだが,モニタールームを挟んで手術室を2つ作るという荒技(実際の病院ではなく,セットだろう)が功を奏して,わざとらしさを超えた迫力が生まれていた。
俳優陣では,見せ場は少なかったが,映画「ノルウェイの森」でも場面をさらっていた初音映莉子が,冷静な看護士役を好演していたのが目に付いた。
これでTVの方がコミックの筋に追い付いてしまったようだが,平均で13.98%と前回シリーズの17.20%という数字をかなり割り込んだことがどう出るか,こちらも今後の展開に注目したい。
ベタな恋愛もの,ターゲットを中高校生に絞ったジュニアものが姿を消し,代わって「仕事」を全面に出した番組が大幅に増えた中で,今期のドラマでは「随一」と言って良いくらいの「内容的惨敗」を喫してしまったのが,菅野美穂の主演で純粋な犯罪スリラーにトライした「ギルティ」だった。
緊迫したスタートダッシュを見せた初回を観る限りは,ここまで悲惨な出来になるとは思えなかったのだが,殺人者=菅野美穂という意表を突いた設定が早々に腰砕けになってしまった脚本にGOサインを出した制作陣の責任は大きい。中間部のどんよりと停滞した展開と,終盤のお粗末極まりない辻褄合わせだけを取り出しても,連続ドラマが備えるべき語り口の水準を,遙かに下回るものだったと言わざるを得ない。
加えて,どう見ても警察には見えない簡易というより安易なセットと,不自然極まりない硬直した演技のオンパレードは,視聴率が一桁を記録しなかったのが不思議なくらいの出来だった。
「Q10」のような勇気溢れる,素晴らしいチャレンジをした同じ局が,同時期に,俳優のネームバリューにあぐらをかいたとしか思えない,こういった「やっつけ」仕事を放送するという現実が,今の日本のテレビドラマの制作事情と水準を象徴している訳ではない,と思いたい。