子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「ニューヨークの巴里夫」:お父さんも子供も大変だ
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バルセロナ,パリと来て,最後はニューヨーク。セドリック・クラピッシュがロマン・デュリスを主演に,3人の女優と共に紡ぎ上げてきた青春三部作は,ニューヨークのチャイナタウンで幕を閉じることとなった。いつも頼りなさげで不安な気持ちを宿しながら魅力的な女性たちの間を行ったり来たりしていたグザヴィエ(ロマン・デュリス)が最後に見せる笑顔には,迷いのない人生なんて価値がない,と宣言しているかのような輝きがあった。
前作から10年経ったグザヴィエは,どうやらいまだ小説家としての身分が約束されている訳でもなく,かといって夢をきっぱりと諦め,勤め人として家族を養っていくという覚悟も持てていない様子。そんな時,アメリカで運命的な出会いをした男性を追ってニューヨークに移り住んだ妻が子供たちを連れて行ってしまったことから,やむなく観光ビザでニューヨークに住むこととなったグザヴィエの日常を淡々と描き出すクラピッシュの筆致は,いつものように柔らかく,そこはかとないユーモアに包まれて2時間はあっと言う間に過ぎていく。
エピソードと言えるようなものは,もはや朋輩としか言えない仲となったイザベル(セシル・ドゥ・フランス)の妊娠,更には彼女の浮気を収束させるため走り回るラストのプロットくらいしかないのだが,マルティーヌ(オドレィ・トトゥ)が中国人のクライアントに中国語で古詩を聞かせるシーンや,小柄なグザヴィエが元妻(ケリー・ライリー)の現在の夫である大柄なアメリカ人と向かい合って縮こまるショットなどには,クラピッシュ作品ならではのエスプリが効いていて実に楽しい。太極拳ダンスともいうべき踊りに興じる中国人女性に,無視されてもされても手を振り続け,父親と面と向かっては和解できなくとも,別れた後に両親の若き日の愛の痕跡を発見して安堵するグザヴィエの姿には,ドラマティックではなくとも何気ない日々の出来事の積み重ねこそが人生を作り上げるのだと確信するに到った男のロマンが宿っている。
それにしても,人生の意味を掴み取ろうと彷徨い続ける親の元で育つ現代の子供は,親以上に大変かもしれない。離婚後に実父と継父の元を行ったり来たりすることは当たり前。親の再婚に伴って望まない異国に移住させられというのに,実父からは「ツイてるな」と決めつけられた上,人工授精で生を授かった異母兄弟の子守までさせられるのだから。
クラピッシュ監督,願わくばリチャード・リンクレイターに倣って,彼らの子供の世代まで撮り続けて頂けると人生の楽しみがもう一つ増えるのですが,如何でしょうか?
★★★★
(★★★★★が最高)
前作から10年経ったグザヴィエは,どうやらいまだ小説家としての身分が約束されている訳でもなく,かといって夢をきっぱりと諦め,勤め人として家族を養っていくという覚悟も持てていない様子。そんな時,アメリカで運命的な出会いをした男性を追ってニューヨークに移り住んだ妻が子供たちを連れて行ってしまったことから,やむなく観光ビザでニューヨークに住むこととなったグザヴィエの日常を淡々と描き出すクラピッシュの筆致は,いつものように柔らかく,そこはかとないユーモアに包まれて2時間はあっと言う間に過ぎていく。
エピソードと言えるようなものは,もはや朋輩としか言えない仲となったイザベル(セシル・ドゥ・フランス)の妊娠,更には彼女の浮気を収束させるため走り回るラストのプロットくらいしかないのだが,マルティーヌ(オドレィ・トトゥ)が中国人のクライアントに中国語で古詩を聞かせるシーンや,小柄なグザヴィエが元妻(ケリー・ライリー)の現在の夫である大柄なアメリカ人と向かい合って縮こまるショットなどには,クラピッシュ作品ならではのエスプリが効いていて実に楽しい。太極拳ダンスともいうべき踊りに興じる中国人女性に,無視されてもされても手を振り続け,父親と面と向かっては和解できなくとも,別れた後に両親の若き日の愛の痕跡を発見して安堵するグザヴィエの姿には,ドラマティックではなくとも何気ない日々の出来事の積み重ねこそが人生を作り上げるのだと確信するに到った男のロマンが宿っている。
それにしても,人生の意味を掴み取ろうと彷徨い続ける親の元で育つ現代の子供は,親以上に大変かもしれない。離婚後に実父と継父の元を行ったり来たりすることは当たり前。親の再婚に伴って望まない異国に移住させられというのに,実父からは「ツイてるな」と決めつけられた上,人工授精で生を授かった異母兄弟の子守までさせられるのだから。
クラピッシュ監督,願わくばリチャード・リンクレイターに倣って,彼らの子供の世代まで撮り続けて頂けると人生の楽しみがもう一つ増えるのですが,如何でしょうか?
★★★★
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