子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2009年TVドラマ秋シーズンレビューNO.4:「不毛地帯」

2009年11月22日 11時05分28秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
第6回まで進んだところでの平均視聴率が12.16%。ドラマの成否を判断する上でのボーダーが25%~20%だった頃(80年代~90年代半ば)から見れば,決して満足のいく数字とは言えないかもしれないが,ドラマの退潮が著しいここ数年の基準で見れば,取り敢えず「失敗作」という烙印は免れる成績は取っている。
しかし,過去に山本薩夫の映画化作品もある山崎豊子の原作に対して,「開局50周年」という冠を被せ,豪華な出演陣を揃えて2クールぶち抜きという勝負に出た大作としては,何とも中途半端なスタート,という印象の方が支配的かもしれない。

数字が取れない理由は,幾つも挙げられる。
一つは,前クールで同様に苦戦したTBS「官僚たちの夏」と全く同じ理由,つまり「時宜にそぐわない」原作を選んでしまったということだ。
いみじくも一昨日,管経済財政相が「デフレ状況という認識だ」と発言したばかりだが,経済的に閉塞状況に陥って長い今の日本において,高度成長期におけるポジティブな「経済戦争物語」は,幅広い共感を得られる現実感を持ち得ない,というシンプルな真実が如実に数字となって現れた。
映画「沈まぬ太陽」との合わせ技で,サラリーマンを中心として話題を盛り上げた大規模なメディア戦略も,若い人を引っ張り込むまでの勢いを付けるには至らなかったようだ。

ドラマとしての欠陥も幾つか目に付くが,最大のものはとにかく物語全般に「余裕」がないという点だろう。
具体的には,とにかく何処を探しても「笑い」がない。コメディ・リリーフ(笑いを取る場面や役者)が全く存在しないことによって,メインとなる商社同士のぶつかり合い一本槍の物語の単純さと,数だけは揃っている役者陣の演技の硬直ぶりが,実態以上に際立ってしまっている。阿部サダヲの使い方だけでも,一ひねり欲しかったところだ。

役者の演技ということで言えば,唐沢寿明が常に身体全体に漲らせている堅さは,相手との演技の交感という面で,明らかにマイナスに作用している。小栗旬が「東京DOGS」で描き出そうとしている(今のところ,まだ上手くは行っていないが…)バスター・キートン的な面白さを少しでも塗してやれば,ドラマ全体が躍動感を持つ可能性だってあるはずなのだが。
また,女優も旬なところを揃えていながら,橋部敦子の脚本は今のところ色気に重みを置く雰囲気が全くないのも残念だ。小顔の唐沢を巡って,丸顔の和久井映見と天海祐希・小雪のツインタワーとが,くんずほぐれつの取っ組み合いをするような展開にならないのでは,折角の配役が水の泡ではないか。

番組のクレジット・ロールに被さって流れるエンディング・テーマに,トム・ウェイツの初期作である「トム・トラバーツ・ブルース」を持ってきたことには驚いたが,この歌に制作陣が込めた思いが,ドラマの内容に結実することを願って,もう少し見守っていきたい。


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