子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「永い言い訳」:死が呼び覚ます生の重み
「SCOOP!」に主演していた福山雅治とはカテゴリーが異なるながらも,若い女性への訴求度という点ではひけを取らない人気を誇っていたアイドル出身の本木雅弘は,福山雅治よりも遥かに早くから「演技」というルートにシフトして,着実にキャリアを積み上げてきた。「SCOOP!」と本作を並べてみると,主演男優の経験と覚悟の違いが作品自体の質を左右する,という厳然たる事実が明確に示されている,という思いを抱かずにはいられない。
若くして結婚し,長らく美容師として小説家志望の衣笠幸夫(本木雅弘)を支えてきた妻(深津絵里)が,バスの転落事故で亡くなる。妻のおかげで小説家として名前が売れながら,既に妻への愛情を見失い,妻が死んだその瞬間も,自宅で若い女と愛を交わしていた夫は,その事故で妻と一緒に亡くなった妻の友人の家族を支える役回りを買って出る。その家族の子供たちと触れ合う中で,徐々に生きる活力を見出していく主人公だが,ある日妻の遺品の携帯電話に,送信されなかった自分宛のメッセージを見つけてしまう。
一見登場人物の死の原因を探るミステリー仕立てのように見せかけて,死者の思いの有り様が生き残った者をどんな風に縛り,変えていくかという「死者の存在」がモチーフになっていた監督3作目の「ゆれる」と同様に,西川美和の手腕は「不在」を描いて輝きを放つ。しかしそれも,その底なしの暗闇のような「不在」に翻弄される側の描写にかかっている訳だが,その点で本木雅弘は西川が描いたドラフトを完璧に立体化しているように見える。一人で築いてきたように勘違いしていた人生のベースが,信じられないほど脆かったことに気付いてうろたえる様を,ここまで血が通ったアクションで演じられる俳優の名前を他に挙げることは難しい。彼が支えることになる妻の友人の娘を演じる白鳥玉季の驚嘆すべき可愛らしさと自然な演技,その無骨な父親を演じる竹原ピストルの新鮮な立ち居振る舞い共々,キャスティングのセンスが随所で力を発揮している。
名前が同じ読みの野球選手「衣笠祥雄」の「鉄人」としての歩みと自分の人生は,似ても似つかぬものであったとしても,努力次第で誰かに必要とされる人間になることは出来るはず。
「大切な存在を失うことからの覚醒」というテーマに比べて,殊の外軽妙なタッチで進む筆捌きは,「ゆれる」からの西川の確かな成長を物語っている。
★★★★
(★★★★★が最高)
若くして結婚し,長らく美容師として小説家志望の衣笠幸夫(本木雅弘)を支えてきた妻(深津絵里)が,バスの転落事故で亡くなる。妻のおかげで小説家として名前が売れながら,既に妻への愛情を見失い,妻が死んだその瞬間も,自宅で若い女と愛を交わしていた夫は,その事故で妻と一緒に亡くなった妻の友人の家族を支える役回りを買って出る。その家族の子供たちと触れ合う中で,徐々に生きる活力を見出していく主人公だが,ある日妻の遺品の携帯電話に,送信されなかった自分宛のメッセージを見つけてしまう。
一見登場人物の死の原因を探るミステリー仕立てのように見せかけて,死者の思いの有り様が生き残った者をどんな風に縛り,変えていくかという「死者の存在」がモチーフになっていた監督3作目の「ゆれる」と同様に,西川美和の手腕は「不在」を描いて輝きを放つ。しかしそれも,その底なしの暗闇のような「不在」に翻弄される側の描写にかかっている訳だが,その点で本木雅弘は西川が描いたドラフトを完璧に立体化しているように見える。一人で築いてきたように勘違いしていた人生のベースが,信じられないほど脆かったことに気付いてうろたえる様を,ここまで血が通ったアクションで演じられる俳優の名前を他に挙げることは難しい。彼が支えることになる妻の友人の娘を演じる白鳥玉季の驚嘆すべき可愛らしさと自然な演技,その無骨な父親を演じる竹原ピストルの新鮮な立ち居振る舞い共々,キャスティングのセンスが随所で力を発揮している。
名前が同じ読みの野球選手「衣笠祥雄」の「鉄人」としての歩みと自分の人生は,似ても似つかぬものであったとしても,努力次第で誰かに必要とされる人間になることは出来るはず。
「大切な存在を失うことからの覚醒」というテーマに比べて,殊の外軽妙なタッチで進む筆捌きは,「ゆれる」からの西川の確かな成長を物語っている。
★★★★
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