映画の原点のひとつに,バスター・キートンの奇跡のような傑作群に代表される「身体を張って笑いを取る」というコメディがあることに異論を唱える人はそう多くないだろう。エスプリに満ちた知的な笑いを得意とするフランス映画界が,一方で下品な下ネタを交えつつ,そんな先祖返りに挑んだ「世界の果てまでヒャッハー!」のような作品を送り出してきたことに心から拍手を送りたい。
婚約者の父親に会うためブラジルに渡った主人公とその友人達がジャングルで遭遇した馬鹿げた冒険の数々が,行方不明になってしまった彼らが残したヴィデオ・カメラの映像,という形で再現される。
「ブレアウィッチ・プロジェクト」で有名になったPOV方式(Point Of View Shot)の採用により,疑似ドキュメンタリー的な味わいが醸し出されることによって,登場人物の間抜けさがより強調されたのは,主演も兼ねたフィリップ・ラショーとニコラ・ブナムの脚本・監督コンビのアイデアの賜物だ。
老齢のため車椅子を使わないと移動できない婚約者の祖母が,みんなの不注意で川に流されてしまったのに,難なく助かってしまうというご都合主義も,谷底に落ちた仲間を助けるために服を繋ぎ合わせてロープを作って投げ入れるが,どこにも結ばなかったためロープがそのまま谷底に落ちてしまうというベタなギャグも,毒蜘蛛に咬まれた主人公♂の下半身から毒を吸い出してあげた先住民♂が,主人公の手に手を絡ませるという下ネタも,全てが「活劇」を活性化させる重要な要素として生き生きと輝いている。
中でも白眉は,先住民に追われながら飛行機で辛うじて脱出した一行が,シミュレーターでしか飛行機を飛ばしたことがなかったCAのミスで燃料を放出してしまった飛行機からダイビングするシークエンスだ。機内のドタバタから始まって,意を決して空中に飛び出し,パラシュートで地上に降下するまでを,(POV方式なので当たり前といえば当たり前なのだが)ワンショットで撮り上げた勇気と技術には脱帽だ。
「最高の花婿」の父親役だったクリスチャン・クラヴィエをセンターバック的なポジションに据えることで,フィリップ・ラショーを自由に動き回らせたドラマの骨格も磐石。
台風で倒れた家屋の開口部から脱出したり,高層ビルの時計の針にぶら下がって見せた先人達も,「やるな,後輩」と目を細めてくれたのではないだろうか。
★★★☆
(★★★★★が最高)
婚約者の父親に会うためブラジルに渡った主人公とその友人達がジャングルで遭遇した馬鹿げた冒険の数々が,行方不明になってしまった彼らが残したヴィデオ・カメラの映像,という形で再現される。
「ブレアウィッチ・プロジェクト」で有名になったPOV方式(Point Of View Shot)の採用により,疑似ドキュメンタリー的な味わいが醸し出されることによって,登場人物の間抜けさがより強調されたのは,主演も兼ねたフィリップ・ラショーとニコラ・ブナムの脚本・監督コンビのアイデアの賜物だ。
老齢のため車椅子を使わないと移動できない婚約者の祖母が,みんなの不注意で川に流されてしまったのに,難なく助かってしまうというご都合主義も,谷底に落ちた仲間を助けるために服を繋ぎ合わせてロープを作って投げ入れるが,どこにも結ばなかったためロープがそのまま谷底に落ちてしまうというベタなギャグも,毒蜘蛛に咬まれた主人公♂の下半身から毒を吸い出してあげた先住民♂が,主人公の手に手を絡ませるという下ネタも,全てが「活劇」を活性化させる重要な要素として生き生きと輝いている。
中でも白眉は,先住民に追われながら飛行機で辛うじて脱出した一行が,シミュレーターでしか飛行機を飛ばしたことがなかったCAのミスで燃料を放出してしまった飛行機からダイビングするシークエンスだ。機内のドタバタから始まって,意を決して空中に飛び出し,パラシュートで地上に降下するまでを,(POV方式なので当たり前といえば当たり前なのだが)ワンショットで撮り上げた勇気と技術には脱帽だ。
「最高の花婿」の父親役だったクリスチャン・クラヴィエをセンターバック的なポジションに据えることで,フィリップ・ラショーを自由に動き回らせたドラマの骨格も磐石。
台風で倒れた家屋の開口部から脱出したり,高層ビルの時計の針にぶら下がって見せた先人達も,「やるな,後輩」と目を細めてくれたのではないだろうか。
★★★☆
(★★★★★が最高)