子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「イタリアは呼んでいる」:おじさん二人のガールズ・トーク
曜日,時間帯に関係なく,どこのテレビ局でも見かけるグルメ番組。これをおじさん二人組の「外国おしゃべり紀行」に絡めて,1本の映画にしてしまう。考えようによっては,「果敢な実験」と言えなくもない試みなのだが,これがまんまと当たった。108分間の上映時間のほとんどを,腹を抱えて笑いっぱなしだった私は,おそらくは実際に行くことはないであろうイタリアの美しい海岸の夕日に,人生の黄昏時に佇む中年男性の悲哀を重ねて楽しんだ。心から「グラッツィェ」と伝えたい。
スティーヴ・クーガンとロブ・ブライドンという,イギリスでは知らぬ人間はいないという人気中年俳優二人(私は二人とも知らなかった)が,ミニクーパーを駆ってイタリアの西海岸を南下しながら,土地の名産を活かした料理に舌鼓を打ちつつ,ひたすら非生産的な物まねを,たったひとりの観客=向かいに座る相棒相手にやり続ける。餌食になるのは二人の出身国の名優マイケル・ケインからトム・ハーディー,ご当地イタリアに敬意を表した「ゴッドファーザー」ネタでロバート・デ・ニーロにアル・パチーノ等々。
そのどれもがとにかく笑えるのは,物まねそのものが実に達者であるということに加え,映画の台詞をサラリと真似るだけではなく,もしも彼らがこの場にいたらという仮定で,彼らが憑依したかのごとく延々となりきりトークが続く点にある。それはまるでクエンティン・タランティーノの「デス・プルーフinグラインドハウス」で殺人鬼のカート・ラッセルから追いかけられる女の子たちが繰り広げた,まったくくだらないのに耳をそばだてずにはいられないお喋りを思い起こさせる。
そう,二人は旅先で出会ったグラマラスな女性をもものにしてしまう肉食系のおじさまたちでありながら,心はガールズであり,井戸端会議を何時間でも続けられるパワフルなおばさまたちに他ならないのだ。
美味しいものを食べて飲んで,好きなことについて延々と喋り続ける。権力闘争やその究極の劣化型である戦争とはもっとも離れた場所を目指してだらだらと走り続ける二人の姿は,今の日本にこそ相応しいおじさんの姿かもしれない。「イン・ディス・ワールド」や「グアンタナモ 僕たちが見た真実」で社会のダークサイドを見つめ続けてきたマイケル・ウィンターボトムのターゲットも,おそらくは,その辺りにあるはずだ。
無邪気な会話の中に「マイケル・マンの作品に出るだって!」と,ほんのちょっぴりの虚栄心やプライドが差し色として交じるところも実にチャーミング。うー,行きたくなったぜ,イタリア!
★★★★
(★★★★★が最高)
スティーヴ・クーガンとロブ・ブライドンという,イギリスでは知らぬ人間はいないという人気中年俳優二人(私は二人とも知らなかった)が,ミニクーパーを駆ってイタリアの西海岸を南下しながら,土地の名産を活かした料理に舌鼓を打ちつつ,ひたすら非生産的な物まねを,たったひとりの観客=向かいに座る相棒相手にやり続ける。餌食になるのは二人の出身国の名優マイケル・ケインからトム・ハーディー,ご当地イタリアに敬意を表した「ゴッドファーザー」ネタでロバート・デ・ニーロにアル・パチーノ等々。
そのどれもがとにかく笑えるのは,物まねそのものが実に達者であるということに加え,映画の台詞をサラリと真似るだけではなく,もしも彼らがこの場にいたらという仮定で,彼らが憑依したかのごとく延々となりきりトークが続く点にある。それはまるでクエンティン・タランティーノの「デス・プルーフinグラインドハウス」で殺人鬼のカート・ラッセルから追いかけられる女の子たちが繰り広げた,まったくくだらないのに耳をそばだてずにはいられないお喋りを思い起こさせる。
そう,二人は旅先で出会ったグラマラスな女性をもものにしてしまう肉食系のおじさまたちでありながら,心はガールズであり,井戸端会議を何時間でも続けられるパワフルなおばさまたちに他ならないのだ。
美味しいものを食べて飲んで,好きなことについて延々と喋り続ける。権力闘争やその究極の劣化型である戦争とはもっとも離れた場所を目指してだらだらと走り続ける二人の姿は,今の日本にこそ相応しいおじさんの姿かもしれない。「イン・ディス・ワールド」や「グアンタナモ 僕たちが見た真実」で社会のダークサイドを見つめ続けてきたマイケル・ウィンターボトムのターゲットも,おそらくは,その辺りにあるはずだ。
無邪気な会話の中に「マイケル・マンの作品に出るだって!」と,ほんのちょっぴりの虚栄心やプライドが差し色として交じるところも実にチャーミング。うー,行きたくなったぜ,イタリア!
★★★★
(★★★★★が最高)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 映画「きみは... | 2015年J2リー... » |
コメント |
コメントはありません。 |
コメントを投稿する |
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません |